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第11話 絶対に阻止したい同棲生活

 家に戻って一日の反省。

 

 結局しっかり3人のヒロインと関わってしまった。もう無視して過ごす事は出来ない。

 目指すはボッチエンド、それでこの世界から抜け出せるかはわからないが、自分の意思で生死を決めるにはそれしかない。


 ひとまずこれからはそれぞれの女の子とのイベントを無難にこなしながら、好感度を上げ過ぎず、不満度をおさえるという絶妙のバランスが求められる。

 しかも、状況判断のパラメーターが存在しないため、ヨシオと密に連絡を取って女の子たちの状況をチェックしていかねばならない。


「は~」

 ぼくは大きなため息をついてベッドに倒れこんだ。


 なんでぼくなんだ?隼人だったらもっとゲームのイベント内容や攻略情報についても詳しかっただろうに……


 あの時、ぼくがコントローラーに手を伸ばさなければこんなことにはならなかったのかな……。

 

 ぼくは現実世界のことを思い出す。まだ一日しかたっていないなんて信じられなかった。現実がはるか遠くに感じる。

「隼人の奴はどうしているんだろうな」


 ぼくがゲームの中にとらわれたあと、現実の世界はどうなっているのだろう?配信は?

 今の状況で現実世界のことを知るすべはない。真横でぼくが取り込まれる瞬間を見ていた隼人なら、現実世界で何とか助ける方法を探してくれているかもしれない。それを期待してひとまずはデッドエンドにならないように日々を過ごしていくしかない。


 しかし、もしも隼人も一緒にこの世界にとらわれていたら……

 

「そういえば、ヨシオの奴、なんだか言動がおかしかったな」

 ヨシオとの会話を思い出す。現在の状況を教えてくれるのはゲーム通りだが、舞美のイベント攻略ポイントともいえるクレープの種類を教えてくれたりなんだかおかしい。

 ゲームの中に取り込まれたのがぼくだけじゃなかったと考えると、隼人の意識がヨシオに入っていると考えても不思議ではない。

 

 ヨシオの中に隼人の意識が入っているなら、ゲームの攻略について何か教えてもらえるかもしれない。明日はそれを確かめよう。

 

 

 「こんにちは~」

 考え事をしながらベットで横になっていたところに、チャイムも鳴らさず、小鞠はまるで自分の家のようにあがってきた。


 「小鞠さまが夕食つくりに来てあげたわよ」


 そうだ、問題はこいつだ。今は海外出張中の両親公認ということで、この家の合いかぎを持っているため自宅にいても安心することができない。


 「食事ぐらい自分で作れるって言ってるだろ」


 「私はおばさまたちから創太の健康を任されているのよ。インスタント商品ばかりで体壊したら、私がおばさまたちに申し訳が立たないわ」

 そういって自分の家から持ち込んだ食材の入ったビニール袋を持って台所に立つ。

 ピンクのエプロンを身に着けて作業を始めるその姿はまるで若奥様だ。


 小鞠は勝手知ったる様子で調理器具を用意していく。もちろんぼくは、この家のどこになんの食器や鍋がしまってあるのかも知らない。


 「しょうがないから下ごしらえは私の家でやってきたから、すぐにできるわよ」


 「小鞠だって新生活始まって忙しいだろ、ぼくだっていつまでも小鞠に頼りっぱなしというわけにいかないからさ」


 「大丈夫よ、うちの両親も夜勤が多くてどっちにしろ自分の分の料理はするんだもの。一人分も二人分も手間はそんなに変わらないわ」


 いうだけあって、雑談を交わしながらも手際よく料理を進めていく。

 考えてみれば、今日は舞美とクレープを食べて以来まともな食事をしていない。グーとおなかのなる音が響いた。その音は小鞠にも聞こえるほどだった。


 「ははは、なんだ、おなか空いてるんじゃない。待っていてねすぐ作っちゃうから、これでも飲んで待っていてね」

 そう言ってリビングのテーブルにいれたてのコーヒーを置いてキッチンに戻っていく。

 インスタントではない、きちんとドリップしたコーヒーだ。しかもうまい。


 「うまいな、喫茶店始められるんじゃないか」


 「へへへ、創太がコーヒー好きって聞いたから、とっくんしたんだ」


 小鞠はおたまを片手に満面の笑みを浮かべる。不覚にも『かわいい』と思ってしまった。

 さすがに何もしないで座っているのも申し訳ないと思うのだが、ぼくが手伝いを申し出ても「邪魔になるから座っていて」と言われ追い返されてしまった。

 仕方なくソファーで雑誌を読むふりをしながら小鞠の様子をうかがっていた。

 かわいくて、一途で、料理もできる。何も知らなければ迷わず付き合ってしまう所だ。


 しかし、小鞠はその外見からは思いもよらないほどのSだ。


 基本的にぼくが苦しむ姿に興奮を覚える性癖がある。これはまだゲームの世界に入って間がないぼくでも感じていることだ。

 ぼくをいじめることに大きな喜びを感じている。今はまだちょっと激しいスキンシップ程度だが、本格的に付き合いだしたら、どこまでエスカレートするかわかったものじゃない。

 コーヒーを片手に、頭は小鞠をどうやって攻略しないように持っていくかを思案していた。


 「ねえ、創太」

 ふいに小鞠が声をかける。


 「なんだ」


 「私もここに住んじゃおうかな」


 「うん……、え?」

 思わずコーヒーを吹き出しそうになる。

 「だ、ダメに決まってるだろ、何言ってるんだよ」


 「え~、どうせ毎日来るんだし、その方が楽じゃん」


 「そんなの小鞠のおじさんやおばさんが許すわけないだろ」

 これを認めたら小鞠ルート一直線。それどころか、他の2人の不満度が爆発して早々デットエンドという可能性だってある。


 「大丈夫だよ、ほとんど親公認みたいなものだし、でも、もしかして創太、誰か好きな子でもいるの?」

 

 いきなり頭の中に選択肢が浮かぶ。



【霧島詩織さんが気になっているんだ】

【星野舞美さんが気になってるんだ】

【実は昔からぼくも小鞠のこと……】



 ダメだ、どの選択肢も選べない。

「な、何言ってるんだよ、そんな子いないよ」

 システムに反抗して選択肢以外の答えをひねり出す。これはかなり精神力を削られる。


 「ふーん」

 と、ぼくの答えに納得がいかないようだ。


 「そんなこと言って、ホントは誰か好きな子いるんでしょ」

 再び選択肢が表示された。


【霧島詩織さんが気になっているんだ】

【星野舞美さんが気になってるんだ】

【実は昔からぼくも小鞠のこと……】



 詩織の時と同じだ。だれかを必ず選択しなくてはいけない。強制イベントなのか。

 この様子では何度「いない」と答えても同じ質問が繰り返されるだけだろう。

 だが、誰を選んでも危険だ。きっとここでの選択が攻略ルートの大きな分岐点になるのだろう。


「実はちょっと気になってる子はいる」

 意識を集中してシステムにあらがう。何とか選択肢以外の答えでこの危機を乗り越えなくては、

 

「だれだれ?」

 楽しそうに答えをせかす。


「そ、それは……、ほら、あれだ、前の席の佐伯さんだよ」

 自己紹介で覚えていたクラスメイトの名前を出した。ヒロイン以外の名前を出したことで、体に大きな疲労感がかかる。でも今ヒロインたちとのフラグを立てるわけにはいかない。


 「…………」

 小鞠の反応が止まる。


 「そう、なんだ、私、今日は帰るね。料理すぐ食べられるから、お皿には自分でよそってね」


 「おい、お前は食べていかないのかよ」

 荷物をまとめてそそくさと家を出ていく小鞠。


 「うん、今日はちょっと予定があったの思い出しちゃった。じゃあね」

 

 バタン、と玄関の扉が絞められた。

 ぼくは大きく息を吐いた。なんだか様子がおかしかった。あの三人との関係を深めることはなかったが、このイレギュラーで話がどう進むか注意していかなくてはならない。

 

 

 


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