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第三話 新たなる珠

第三話 新たなる珠



 空は、どこまでも青かった。




 だが、その静けさとは裏腹に、空気は張り詰めていた。




「……気配があるな」




 犬川荘助が足を止める。




「ああ」




 犬塚信乃も頷く。




 二人は、すでに分かっていた。




 追手ではない。




 それとは違う――




 もっと“近い”何か。




 胸元の珠が、わずかに熱を帯びる。




「……来る」




 その瞬間だった。




 林の奥から、人影が飛び出す。




 速い。




 迷いがない。




 一直線に、信乃へと迫る。




「――っ!」




 信乃は即座に刀を抜く。




 火花が散る。




 激しい衝突。




 相手の力は強い。




 だが――




「……お前もか」




 信乃は、低く呟いた。




 相手の胸元。




 そこに、見えた。




 同じ珠。




 刻まれた文字は――




 「礼」


挿絵(By みてみん)


 男は、一歩引く。




 その目は鋭い。




 だが、敵意だけではない。




「……やはり、同じか」




 静かな声だった。




「何者だ」




 荘助が問う。




 男は、ゆっくりと答える。




「犬山道節」




 短く、名乗った。




「その珠を持つ者を探している」




 信乃は、刀を下ろす。




「俺たちもだ」




 そして、自分の珠を見せる。




「孝」




 荘助も続く。




「義」




 道節の目が、わずかに細まる。




「……三つ」




 風が吹いた。




 三つの珠が、わずかに共鳴するように光る。


挿絵(By みてみん)


 沈黙。




 だが、その沈黙は重くない。




 むしろ――




 何かが繋がった感覚。




「……理由は分からない」




 信乃が言う。




「だが、集めるしかないらしいな」




「ああ」




 荘助が頷く。




「これは“集まる運命”だ」




 道節は、少しだけ空を見上げた。




「運命、か」




 その言葉を、確かめるように繰り返す。




「……嫌いじゃない」




 わずかに口元が緩む。




「だが、甘くはないぞ」




「分かってる」




 信乃は即答した。




「さっきまで、命の取り合いしてたからな」




 その言葉に、道節は小さく笑った。




「それなら問題ない」




 その時だった。




 遠くで、悲鳴が上がる。




「……っ!」




 三人の表情が変わる。




 同時に走り出す。




 林を抜けると、そこには――




 村があった。




 だが、その様子は異様だった。




 家が壊されている。




 人々が逃げ惑っている。




 そして、その中心に――




 一人の男。




 大柄な体。




 巨大な刀を振り回し、周囲を圧倒している。




「……あいつか」




 荘助が呟く。




「ただの賊じゃないな」




 道節の目が鋭くなる。




 信乃は、すでに前へ出ていた。




「止めるぞ」




 その言葉に、二人も続く。




 三人が、同時に踏み込む。




 だが――




 男が、振り返った。




 その目は、異様だった。




 理性がない。




 ただ、暴れるためだけの存在。




「……来たか」




 低い声。




 そして――




 その胸元。




 見えた。




 光る珠。




「……!」




 三人の動きが、一瞬止まる。




 刻まれている文字は――




 「智」




「……四つ目だ」




 信乃が呟く。




 男は、笑った。




 狂気に満ちた笑み。




「これは、俺のものだ……!」




 次の瞬間。




 大地が揺れるような一撃が放たれる。




 三人は散開する。




「……ただの仲間じゃないな」




 荘助が言う。




「ああ」




 道節が頷く。




「“落ちた者”だ」




 信乃は、強く刀を握る。




「取り戻すしかないな」




 その言葉に、二人が応じる。




「いくぞ」




「了解だ」




 三つの影が、再び動く。




 四つ目の珠を巡って。




 ぶつかる運命。




 集まる魂。




 だがそれは――




 決して、穏やかな道ではなかった。

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