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最終話 八犬士、去りゆく時

最終話 八犬士、去りゆく時

 空は、朝もやに包まれていた。


 関東管領軍――関東一帯の守護大名たちが集結し、里見家の支配と領土を奪おうとした強大な軍勢――との激戦は終わった。


 八犬士――信乃、現八、荘助、小文吾、親兵衛、毛野、道節、そしてもう一人の仲間――は、玉梓の怨霊による呪いに立ち向かいながら、この圧倒的な敵に勝利し、里見家に平和をもたらしたのだ。




 戦場に残るのは、風に揺れる旗と、戦の痕跡だけ。


 血の匂いも、悲しみも、光の中に溶けていく。




「これで、終わりか……」




 信乃の声に、八犬士は静かにうなずく。


 疲れた身体、深い傷、そして心の痛み――それでも胸には誇りと安堵が宿る。




 八人は城門の前に立ち、一礼した。


 勝利をもたらしたが、守るべき家に留まる理由はもうない。




「俺たちの道は、ここではない」




 現八が呟き、八犬士は一列になって城を離れる。


 山へ、深い森へ、まだ見ぬ未来へと。




八犬士はやがて、富山の山深く、誰も知らぬ地へと姿を消す。


 里の人々の記憶には、戦を制した英雄としての八犬士の姿だけが残る。




 城の瓦屋根に朝陽が反射する。


 かつて栄えた里見家も、やがて徳を失い滅びる運命にあることを、八犬士は知っていた。




 だが、八犬士自身の歩みはまだ終わらない。


 山奥で修練を重ね、仙人のごとき存在となったことを、風がそっとほのめかす。




 光と影が交わる大地で、八つの魂は静かに、しかし確かに生き続ける。


 歴史の流れの中、里見家の滅亡の後も、八犬士の物語は人々の記憶に響き続けるのだ。

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