シュリの指摘
パーティでの騒動から翌日、別れを惜しむエリーやレオナ、エステル達と再会の約束をした後、ノワール城の自室に戻るとそこにはパーティ会場では終ぞ、その姿を現す事が無かったリンが片膝を付き頭を下げていた。
「アンナ様、パーティの際はお傍に居られず申し訳ありません。ユイ様の指示を「いえ、構いません。それよりもリン、早速鍛錬を始めましょう」…はっ、では準備をしますので鍛錬所にて少々お待ちを」
「あれれ~、アンナ様とリンちゃんおはようございます、それからおかえりなさ~い。帰ってきて直ぐに授業ですか~?」
話し声に気付いたのであろう、メイド服を着たシュリが声を掛けてきたので挨拶を返す。
「おはようございます、シュリ。えぇ、少し状況が変わったものですから」
「事情、ですか~?良かったらシュリちゃんにも聞かせてください~。この時間なら空いてますので鍛錬所に向かいながらでも~」
「…実は───」
小首を傾げながらチェーロ皇国で何が起きたのかを訊ねてくる、シュリに、俺は何が起きたのかを事細かに語り始める。
◆❖◇◇❖◆
最初は歩きながら、途中で鍛錬所に設置してあるベンチに腰掛け説明を終えるとシュリは考え込みながら、何時もの様子でふむふむと頷いている。
「ふむふむ~、だからS級以上を目指す、と~…なるほどなるほど~」
「…どうでしょう、私はS級以上になれますか?」
「そうですね~…先ずお勉強の方は問題ないかと~、シュリちゃんがルドルフくんに引き合わせたのもアンナ様には飛び級が出来るくらいの学力はあるから、というのもありますから~」
まぁ、中身は三十路のおっさんだからな。という内心でのツッコミは一先ず置いておいて、少なくとも8歳児以上の知能は有していると証明されて何よりだ。
だが、問題は星騎士としての実力がS級以上、最低でもS級クラスの実力を有していると試験管に認められるかどうかという事だ。
「学力は、ですか。肝心の星騎士としての実力はどうでしょうか?」
「そうですねぇ~…絶掌を習得している時点でA級以上の実力はあると思いますし、リンちゃんとも私が教える筈だった、神克を練習中だって聞いたんですけど進捗はどうですか~?」
「星技としての術理は何となくではありますが把握はしていますが、まだ習得には至っていません」
そう、理屈としては何となくではあるが理解はしている。神克とは体内で魔力と氣を練り上げ、圧縮させる事により一時的に身体能力のリミッターを外す、麒麟と似た様な星技だというのはリンから説明を受けたから。
だが、もう一歩という所で習得が出来ない。悔しくもあるがこの星技を習得した時、俺の中で何かが変わる予感めいたものを感じているのも事実だ。
「ふむふむ、なるほど~…ちょっと見せて貰っても構いませんか~?」
「分かりました、では「お待たせしました、アンナ様」…丁度リンも戻ってきましたし、彼女が居る状態で見せても?」
俺の意図を瞬時に理解したのだろう、シュリは笑みを浮かべて頷く。
「構いませんよ~、寧ろ指導役のリンちゃんも居た方が良いかなぁ、と」
「シュリ?…おはようございます、その話しぶりからして例の星技についてですね」
「そそ、リンちゃんの指導の仕方もしっかり見させて貰うね~?」
─────
───
─
リンとシュリが見ている状態で、全身に魔力と氣を練り合わせ、それを圧縮した状態で身体能力を高めながら、シュリに今の状態を問う。
「…どうでしょうか?」
「んー…魔力と氣の練り合わせは充分だと思います~…強いて言うなら…」
「強いて言うなら…?」
「圧縮と瞬間的な爆発力、ですかね~…?」
「圧縮と」
「瞬間的な爆発力…」
圧縮迄は良いとして、爆発力?
シュリの言わんとする事を理解しようとして思考を巡らせていると、当の本人であるシュリがリンに問い掛ける。
「リンちゃんは多分だけど麒麟を使っている時の感覚でこの技の説明をしていない?」
「え、えぇ…爆発力がコツだと以前聞いた事がありましたから。だったら麒麟を使用している時の感覚が一番近いかと思っておりました」
「あは♡あんな前に言ってたのを覚えてくれてたんだね。シュリちゃん嬉しい~、でも、そもそも麒麟は外の魔素を雷という形で身体に取り込む技、神克は自前の魔力と氣を練り合わせて圧縮、瞬間的に体内で爆発させるように解放する事で一時的に身体能力を極限迄高め、更に魔力の“質”を変化させる…似てるようでアプローチの仕方が違うんだよ~」
「「な、なるほど…」」
「さ、忘れない内にやってみましょ~。圧縮を極めると自然と爆発させるタイミングも掴めますよ~」
余りに理路整然とした説明にシュリの本質はメイドよりも教師等の方が合っているのではないか?と思いながら、再び俺は魔力と氣を練り合わせ、圧縮し、そして言われたように圧縮を極めようと力を込める。
その過程で、俺はこの技の“先”を感覚的に掴むが、結果としては新しい技は体現出来た。




