パーティ〜宣誓〜
4人で色とりどりの料理に舌鼓を打つこと暫く、エリーは2人の兄の事が気掛かりでいるのが傍目から見ても分かる程には落ち着かない様子だ。
此処は手紙のやり取りで多少なりともジャックとは縁がある俺が、不安を紛らわせる事としよう。
「何を話しているんでしょう、あれからもう大分経ちますが…」
「大丈夫ですよ、エリー様。手紙でのやり取りが殆どでしたがジャック様は理知的で温厚な方ですから、寧ろウィリアム様が短気を起こさないかが気掛かりです」
「ふふ…」
「どうかなさいましたか?」
「いえ、アンナ様はウィリアムお兄様を良く見ていてくれてるな、と思いまして」
「……ご冗談を、私はただ御二人の性格を客観的に見ているだけですよ?」
まさかそんな目で見られているとは思わなかった、俺からしてみればウィリアムは揶揄い甲斐のあるガキ、程度にしか捉えていなかったが。
「ふふ、そうですね?でも、私としては何方のお兄様と結ばれてもこんなに素敵なお姉様がお姉様になって下さるのなら、大歓迎です!」
「待ってください!レオナのお姉様がお姉様になるならエリー様とは義姉妹になるという事では…!?」
「はっ!そ、そうかもしれませんね?レオナお姉様…?」
「…どういう理屈ですか……戻ってきたようですよ、2人とも」
エリーのお姉様呼びに始まりレオナの本気か冗談か…いや、あれは割とマジの目だ。…ともあれ、意外な2人が同時にお姉様呼びしてくる状況に軽く眩暈を覚えながらも、件の2人は何処か覚悟を決めた面持ちをしつつも戻ってきた。
「お兄様達、大丈夫ですか…?」
「ん?おう。大丈夫だぜ?」
「僕も大丈夫だよ、心配掛けてごめんね…?」
「うぅん、2人が元気ならエリーはそれが一番です!」
「「エリー…」」
この3人からは強い繋がり…絆と言い換えても良いが、そういったものを感じる。これまでも3人で支え合ってきたのだろう…前世で救えなかった“彼奴”の姿を重ねて見ながらも微笑ましくみていたが、恐らくチェーロ皇国の執事であろう人物の声がマイク越しに会場全体に響き渡る。
「お集まりの皆様、今宵はお楽しみ頂けていらっしゃるでしょうか。我が盟主にしてチェーロ皇国、皇帝サルヴァトーレ・チェーロ様と、ノワール王国次期国王であらせられるフリードリヒ・ノワール様、御両名様からの御言葉をこの場を借りて下賜なされるようです」
「…?」
「「……」」
スポットライトで照らされる2人の内、1人には見覚え…というか、良く知っている人物であった。
何せ、今世での父親であるフリードリヒ・ノワールそのひとだからである。
「…今宵は我が国主催のパーティに参列してくれた事、またノワール王国の民や王侯貴族に至っては感謝の言葉もない。…皆、知っての通りだとは思うが我が息子、ウィリアムとノワール王国の姫君、アンナ姫との婚約の件は、私が承諾していない為先延ばしにさせて貰っていたが、この度、正式に婚約の儀を結ぶ事となった」
「…なるほど、そういう事ですか」
要はこのパーティを友好を深める場であると同時に、正式に婚約の発表の場として利用しようという考えか。
恐らくではあるが、ジャックの様子がおかしかったのは、その事を知らされたからだろう。
(気に入らねぇな…。)
そんな事を考えていると、さっきまで近くに居た筈のジャックとウィリアムが壇上へと上がっていくのが見えた。
「婚約の儀はまた後日、日程を組み次第報告させて貰うが今日は「「待ってください(くれ)父上!」…御前達、話を遮るとは何を考えている?」
「僕はやっぱりこんな一方的な話は反対です!そもそもアンナ様の意思すら確認してないではないですか!」
「それによ、アンナの親父さんもさっきから黙りこくってるけど言いたい事があるんじゃねーのかよ?」
実の父親相手に食い下がる事が無い所か、他国の王であるフリードリヒにも毅然とした態度で物申す姿に、俺はさっきまで感じていた憤りを忘れて笑っていた。
「…この縁談は元々ノワール国も望んでいた事、だから「…私からも一つ宜しいでしょうか?」…アンナ…御前まで…」
「姫という立場ですから、婚約という話題からは逃げられない…そう思っておりましたが、お父様、私は…いえ、私達は間違っている事には間違っている、と声を大にして抗議させて頂きます」
そう、俺は今は姫だ。何時かは誰かと結婚するのはノワール王国の為だとも思っていたが…俺自身、元男として誰かに嫁ぎたい訳では無い。
それに、此処まで強引な真似をされて、はいそうですか、と納得する事もない。
間違っている事には間違っている、そう口にした2人の皇子に倣うように俺も俺の覚悟を示す。
「………」
「その覚悟を示す為に、私はウルガルド学園の飛び級試験をS級以上での突破を目指す事を此処に宣誓致します!」
「「!!」」
2人の王は疎か、会場全体を絶句させる決意表明をするのであった。




