パーティ〜開幕〜
あの夜から一週間後、俺はチェーロ皇国の招待に応じる形でレオナやリン、そして今世の父親であるフリードリヒと転移魔法陣による転移でチェーロ皇国のポータル迄やって来た。
「ごきげんよう、アンナさま」
「御機嫌よう、エリー様、ジャック様にウィリアム様も」
あの日以来、音沙汰は無かったがエリーも元気なようだ、スカートの裾を摘み恭しく一礼するエリーに習い俺も目の前の3人に挨拶をするが…。
「よぉ、馬子にも衣装って感じだな?」
「こら、ウィリアム、失礼じゃないか!…申し訳ありません、アンナ様。今日は来て頂きありがとうございます」
やはりと言うべきか、クソ生意気な態度でいるウィリアムを咎めるジャックという構図に俺は淑女らしく笑みを浮かべ、軽い言葉のジャブを入れてやる事にした。
「いえ、ウィリアム様が礼儀作法のれの字も理解していないお猿さんなのは前々から分かっていましたので。お招き頂きありがとうございます、ジャック様」
「んだと、アンナ!やんのかこらぁ!?」
「ウィリアム!!」
効果は覿面。顔を真っ赤にしながら今にも掴み掛からんばかりのウィリアムを避けていると、レオナが苦笑する。
「あ、あはは~…お姉様が喧嘩腰になるのって基本的にウィリアム様ですけど、気に入ってたりするんですか?ウィリアム様の事?」
「いやですね、レオナ。ウィリアム様は弄ると楽しい玩具というだけですよ?」
「お、王族を玩具呼ばわり出来るのもお姉様なだけな気がしますよ~!?」
いや、実際クソ生意気な所に目を瞑れば楽しくて愉しい玩具みたいなもんだしなぁ…。
そんな事を考えていると此方へ小走りで走ってくる、前世ではスチル等で見慣れた髪色をした淡い桃色のドレスを着たエステルが近付いてきた。
「───遅れてしまい申し訳ありません」
「あ、エステルお姉ちゃん!わぁ…すっごい綺麗…」
「御機嫌よう、エステル。綺麗なドレスですね」
レオナにとっては直接現実世界で逢うのは久しぶりな為か、少しテンションが高い様に感じる。まぁ、俺も2週間以上振りに逢えて嬉しくない訳ではないが…取り敢えず、服を褒めとくか。
「ありがとうございます、アンナ様…アンナ様も今日も素敵です」
「おう、エステル。今日も先生の扱きを受けてたのか?」
「ウィリアム様、その話は…」
「ぁ、…悪い」
良く分からないが、ウィリアムが地雷を踏んだのは分かった。
ていうか、現実世界でも面識があったのかこいつら。
「どうかしたのですか?エステル、ウィリアム様も」
「…実は、あの後ウィリアム様とノアでコンタクトを取れる機会があって、現在は優秀な星騎士様に指導を受けているんです」
「なるほど、そうなのですね?」
「先生の指導は大人でもきつくて辞めちまう奴も居るのに、エステルはすげーよ。15になったらウルガルド学園にも通うんだろ?」
「えぇ、そのつもりです」
なるほど、あれからエステルも星騎士としての腕を磨いていたのか…少しだけゲームと違う展開になっているのは気になるが、それもそれで良いだろう。
「…エステルにも指導者が、私もうかうかはしていられませんね」
「わはぁ…エステルちゃんもお姉様も凄いなぁ…私はですねぇ、お姉様達のような凄い人を支えられる凄い料理人になりたいです!」
「料理人…ですか?」
「はい、…この間お姉様があの子達を護ったのを見て、私もお姉様のような優しくて強い人になりたいな、って」
笑顔で夢を語るレオナに俺は少しだけ目を見開いていたと思う、俺としては俺の事情で遊ぶ約束を破っちまったと思っていた事が、レオナには人助けに見えていた事が、だ。
「なんだなんだ?御前、またなんかやらかしたのか?」
「ジャックお兄さま、そんな言い方はないと思います……」
「…私も、そう思います」
「エリー?!それにエステルまで!?」
御前は少し絞られろ、と思いながらも、まさか気の弱そうなエステルまでエリーに便乗する様は意外ではあった。
「…でも、興味はあります。アンナ様が護ったあの子達、という子達に…」
「ぁ、あはは…私ちょっと御手洗に行ってきますね?」
「……大した事はしていませんよ?」
あ、これは俺が説明しなきゃならん流れだな…便所に逃げたレオナをジト目で見ながら、俺はあの日の事を語る事にした。
◆❖◇◇❖◆
広い城内を迷いながらも手洗い場から出てくるレオナ。
「つい口を滑らせちゃったなぁ…お姉様怒ってないかな……ん…?」
「ゃ、やめてください…」
「貴女みたいな下級貴族がこのパーティに参加してるなんて有り得ないわ!」
「そうよ、それに何?そのドレス…古臭いデザインね」
「こ、これはお母様の…」
「貴女の家ではそんなドレスしか用意出来ないのね、お笑いだわ!」
誰が聞いても言い掛かりも甚だしいはなしではあるが、レオナ以外は誰もその貴族達を咎めようとしない。
然し、アンナに救われ、アンナが救ってきたものを間近で見続けてきたレオナは違った、眼鏡を掛けた少女を護るように、レオナは割って入る。
「ちょ、ちょっと!何してるんですか!!」




