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魔法学院の転入生と禁書秘録  作者: V-CO
第一章 魔法学院で大いに活躍したい

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第一章 28 『制勝点』

 ほぼ勝ち目がないこの状況で、ティスは目を閉じた。


「ついに抵抗を諦めたか……言いたくはないが、実に惜しい。」


 アンダーソンの感慨に対して、ティスは聞こえないふりをして、依然として沈黙を守っていた。


 その一瞬――――


「《刺》――――!」


 ティスは固有魔法の効果が切れた瞬間を狙い、続けて極めて短い一節詠唱を放った。


 瞬時に、ティスの肩のあたりに長さ約半メートルの氷の棘が凝縮され、そして――――


「行け――――!」


 ティスは勢いよく手を振り、氷の棘を操ってアンダーソンに向けて突き刺した。


 予想通りなら、次の瞬間にはアンダーソンの頭を氷の棘が貫き、転送が即座に始まり、カルアが消え去り、続いてここで最初の爆発が起こるはずだった。


「どうやら……ここまでか。」


 自分に向かって飛んでくる氷の棘を見て、アンダーソンは解放されたかのように、やや悲しげな口調で言った。


 しかし……


 氷の棘がアンダーソンに命中する瞬間、氷の棘は一瞬で二つに分裂し、アンダーソンの両頬をかすめて通り過ぎた。


 そして二つに分かれた氷の棘はさらに四つに分裂し、分裂の際に生じた反発力と、最も外側の二本の氷の棘の跳ね返りにより、中央の二本の氷の棘はアンダーソンの背後へと突き刺さった。


 続いて、肉を貫く音が響いた。


「――――――!」


 そして、ごくりという音が聞こえた。


 アンダーソンの背後から、黒みがかった赤い血がゆっくりと流れ落ちた。二本の氷の棘は空中に浮かび、血が氷の棘の先端から床に滴り落ち、床の隙間に染み込んでいった。


 その後、アンダーソンの背後にあった空間が歪み始め、次第に黒い人影が浮かび上がった。


 そしてティスは手を緩めず、再び固有魔法を発動した。周囲に氷が凍る音が響き渡り、ティスが固有魔法を成功させたことを示していた。


 だが、二度続けて固有魔法を使用したことで、ティスの身体は瞬時に崩壊し、大量の血がティスの左肩、胸、そして口から溢れ出した。


「ぷごっ――――」

「ティス――――!」

「あ、あなた――――正気か!」


 カルアが転送陣の中央で、悲痛な声でティスの名前を叫んだ。アンダーソンは横に立ち、ティスを見て、その顔には信じられないという表情が浮かんでいた。


 対照的に、ティスはゆっくりと左手を握り拳を掲げ、そして勝ちを確信したような笑みを浮かべた。


「げほ……げほ……分かるか……俺がなぜこんなことをしたのか?」

「……?」


「お前は最初から自分の弱点を晒していた。俺の固有魔法はお前の命を一時的に延ばすだけだと言ったな?」


 それを聞いて、アンダーソンは目を見開き、驚きで言葉を失った。


「お前は自分の魂を媒体として、地上の魔力の紋様を通して転送陣と接続し、正常に作動するようにしている。だがお前は一つの問題を見逃している。お前自身がここに立っている以上、たとえ転送陣の変更作業をお前が一人で完了させたわけではなくても、お前の身体もその工程の一部として機能している。そうなれば、魔力の流れは俺の固有魔法によって静止し、転送の時間も停止するはずだ。なぜ転送陣の稼働が止まらなかったのかというと、俺の推測では待機状態だったからに過ぎない。」

「……」

「そしてさっきのあの人物、あれが最後の敵だったんだろう?明らかに彼は影に身を潜め、お前の背後に隠れ、死角を利用して俺に気づかれないようにしていた。だが残念ながら、そんな小細工はとっくに見抜いている。」


 ティスの説明に対して、アンダーソンは言葉を失った。そして沈黙そのものが、最高の肯定だった。


 ティスが転送陣の前に歩み寄り、何かを言おうとしたその時、突然両足が崩れ落ち、その場に跪いた。


 瞬時に、骨の髄までえぐられるような激痛がティスの全身を貫いた。


「くそっ……やっぱり限界か……」


 ティスは両手で身体を支え、辛うじて倒れないように体を制御していた。


「それでも、お前が持てるのはせいぜい二分もない。転送はすでに完了に近づいている。その時になれば、魔力の流れが回復し、大量の魔力が一気にプログラムに流れ込む。お前に残された時間は、お前の固有魔法の効果時間だけだ。」


「ああ、それで十分だ。」

「何――?」


 その言葉と共に、扉の外から慌ただしい足音が聞こえてきた。


「くそおおおおお――――――!まさか敵が奇襲を仕掛けてくるとは!どういうわけかは知らねえが、今こそ俺の出番だな!」


 来たのはジェイロスだった。だが顔のあざや口元の血痕は、彼の状況が決して楽ではなかったことを物語っていた。


「ジェイロス!一分三十秒!頼んだ!」

「よし!後は俺の独壇場だ!」


 ティスがジェイロスに向かって大声で叫び、その声を受けたジェイロスは即座に転送陣の前に駆け寄り、解除作業に取り掛かった。


 ジェイロスが転送陣に到着し、目の前の光景を見た瞬間、彼の瞳孔は急激に縮んだ。


「十五の鍵路――――!?」


 そうだ、転送陣の解除プログラムには実に十五もの鍵が施されており、この鍵は単純なものから複雑なものへと段階的に難易度が上がっていく。


 そしてジェイロスに残された時間は一分を少し超える程度だった。つまり、彼は平均四秒に一つの鍵を解除する速度で作業を進めなければならない。


 一つの鍵を解除するのには、最速でも五秒かかる。


「くそっ、一気に行くぞ!」


 瞬時に判断したジェイロスはすぐに解除作業を始めた。迷っている余裕はなかった。


 自分の手首を粗い石板に擦りつけて一気に切り裂き、瞬時に溢れ出る多量の血を指先に塗り込めると、ジェイロスは転送陣上の鍵の紋様を解除し始めた。


 ティスはその横に跪き、静かにジェイロスの解除作業を見守っていた。


「頼むぞ……」


 ティスにはもう大声を出す力も残っていなかった。というより、彼の全ての力は固有魔法を維持することに注ぎ込まれていた。


 ジェイロスは紋様の上に塗り込め、一秒未満で最初の鍵を解除したことで、ティスの激励に応えた。


「アンダーソン……後でたっぷりと叱ってやるからな。」

「いいだろう。心の準備はしておく。」


 先の鍵がまだ簡単なうちに、ジェイロスは隣のアンダーソンに向かって捨て台詞を吐いた。


 彼は解除の紋様を描き続けながら、同時に自身の魔力を調整し、最短時間で解除できるように尽力していた。


「ダメです、ジェイロス先生!そんなことをしたら……あなたは死んでしまいます!」


 自身の血液と魔力を絞り出すジェイロスを見て、カルアは悲鳴にも似た声で叫んだ。


「もし俺が死んで学院が無事になるなら、それで十分だ……だが、俺よりそっちのティスを心配してやれ。」


 その時、カルアが振り返ると、ティスは眉をひそめ、苦痛に歪んだ表情を浮かべていた。左手だけが微かに掲げられ、固有魔法を必死に維持していた。


 そしてカルアは知っていた。セリア先生が授業でこのような内容を話していたことを。


 効果系の固有魔法には重大な欠点がある、それは一定のクールタイムが必要だということだ。


 もし無理に使い続ければ、施術者の魔力は秒単位で瞬時に消失していく。


 そして使い続けられる時間は、施術者の魔力貯蔵量に依存する。明らかに、ティスはすでに魔力病の症状に直面しており、このまま続ければ本当に命を落とす可能性もあった。


「よし、このまま行くぞ!」


 今やジェイロスは五つの鍵を解除していた。それにかかった時間はわずか十秒だった。


 しかし、ジェイロスの状況も楽ではなかった。失血と魔力病の症状が彼にも現れ始めており、今や彼の顔色はティスと変わらなかった。


「ジェイロス先生、このままでは本当に死んでしまいます!」

「分かってる。もし俺のクラスの生徒たちがこの知らせを聞いたら、シャンパンを開けて喜ぶだろうな。」

「そんな……あなたは立派な講師なのに……彼らがそんなことを言うはずがありません……」

「何せ俺のあだ名は‘狂人講師’だからな。全校で有名な問題児だ。もしある日俺の死報が流れたら、彼らにとってはむしろ朗報だろうさ。」


 自嘲気味にそう言うジェイロスを聞いて、カルアの顔には複雑な表情が浮かび、唇を噛んで何も言えなかった。


 しかしすぐに、ジェイロスは一瞬沈黙し、そして静かに口を開いた。


「……だが俺は講師だからな。」

「え……?」

「お前も、ティスも、エリーナも、クラスの連中も、全校の学生もだ。何と言っても俺は講師だ。魔法学院の講師だ。お前たちを守る義務があるし、必ず守ってみせる。」


 ジェイロスの固い決意の表情を見て、ティスは微かに目を見開いた。


「ジェイロス……」

「おや~お前の立場なら敬語を使うべきだろ。」


 ジェイロスはティスが自分の名前を呼んだのを聞いて、冗談めかして言った。


「何せお前は魔法学院の学生だからな、ティス。」

「――――」


 それを聞いて、ティスはなぜか胸の奥に込み上げてくるものを感じた。


 セリア以外で、ジェイロスは初めてティスを魔法学院の学生だと認めた人物だった。


 話しているうちに、十番目の鍵が解除された。


「正直なところ、俺はお前が講師として一緒に働く日を楽しみにしていた。だが今の様子を見ると、お前が学院で学ぶべきことはまだまだたくさんあるようだ。少なくとも今のお前は、まだ迷える学生に過ぎない。」

「……」


 いつも大げさなジェイロスが、なぜか口元をわずかに緩め、優しい笑みを浮かべた。


「カルアの身分も知らなければ、ティスの正体も知らない。知りたくもない。お前たちは隠し続ければいい――この学院の中では、お前たちはただの学生だ。過去に何があろうと、ここに来たなら、すべては新たな始まりだ。」

「……先生。」


 優しい口調でそう語るジェイロスを見て、カルアの目は赤くなり、涙で潤んだ。普段はふざけた態度のティスでさえ、喉が詰まるような思いを抱いた。


「ああ、そうだ。お前たちに伝えておく。次にセリアに会ったら、必ず――――」


 言い終わる前に、ジェイロスの口から大量の血が溢れ出した。


「――――せ、先生!」

「ジェイロス先生!」


 カルアとティスが同時に叫んだ。


 しかしジェイロスは二人の悲痛な声を無視し、手元の作業に集中を続けながら、必死に言葉を絞り出した。


「げほ……げほ……まったく予想外だな。まさか俺の身体がここまで衰えていたとはな。やっぱり歳には勝てないか……まあ俺も二十代半ばだが。」


 おそらく二人にあまり心配をかけまいとして、ジェイロスは口の中で冗談を言い続けた。


 しかしこの様子では、到底冗談を言っている場合ではなかった。


「だがそれでも、俺はお前たちを救う。だからしばらくは口を閉じてくれ。簡単に気が散るんでな。」


 今やジェイロスは十四番目の鍵を解除していた。完全な解除まで残りは一つだけだった。


 残り時間はまだ三十秒ほどあり、残りの鍵は一つだけだった。


 しかしその時、予想外の出来事が起きた。


「――――――」


 ジェイロスは突然全身の力が抜けるのを感じ、さらに大量の血を吐き出した。まるで内部から誰かに強く殴られたかのようだった。


 力が抜けた彼はその場にうつ伏せに倒れ込み、眉をひそめた。


「――――先生!」

「くそっ……くそっ……あと一歩だというのに……」


 残り一つの鍵だけになった転送陣を見て、ジェイロスは手を伸ばして解除しようとしたが、震える両手では正確に解除の紋様を描くことはできなかった。


 時間は刻一刻と過ぎていった。

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