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魔法学院の見習い新入生と奥義秘典  作者: V-CO
第一章 魔法学院で大いに活躍したい

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プロローグ:『魔法学園の学生になりたい』

「じゃあ、これからどうするつもりなの?」


 風格のある女性が椅子に座って尋ねた。


 部屋の中は、燃えるろうそくの炎に照らされていた。その灯りが女性の顔を照らし、黄褐色の瞳が宝石のように炎を映し出している。美しい顔立ちは、赤褐色の長い髪とろうそくの明かりによって一層引き立てられていた。


「どうするもこうするも、あの場所に行くのが俺のつもりだよ」


 その女性の前に、もう一人が座っていた。


 均整のとれた体つきだが、どこかだらしなく見える。白と黒が混ざった髪は乱れ、服装も整っていない。若くてハンサムな顔立ちとはどこかミスマッチだ。両手を頭の後ろに組み、足を組んで、どうでもいいという表情を浮かべている。


「お願いだから、ティス。よく考えてよ。本当に魔法学院に行けると思ってるの?」


 女性が詰め寄り、信じられないという表情を浮かべた。


「なんで無理なんだよ。前に学院に入って任務を遂行したこともあるだろ?」


「それは前の話でしょ。それに、あんたはあの時まだ王族軍のために動いてた。今は何? 今は私の監視下にある犯罪者よ。私が必死に嘆願しなかったら、今頃処刑されてたんだからね」


 女性が机を叩いて立ち上がる。しかしティスは相変わらず無関心だった。


「最初に言っておくけど、あんたが魔法学院に行くのを許可するつもりはないわ。あと数ヶ月で監視期間が終わって、元の任務に戻れるのに、どうしてそれが分からないの?」


「王族のために汚い仕事をするのがいいって言うのか? 俺くらいの年齢なら、学院で大いに輝いて、たくさんの女の子に憧れられるべきなんだろ? 考え直すべきなのはお前の方じゃないか、セリア」


 表情一つ変えないティスを見て、セリアはそれ以上何も言えず、ただため息をついた。


 ——


 だらしない格好のティスとは対照的に、セリアはまさに女神のような容姿をしていた。


 二十代の若々しい顔立ち、赤褐色の髪、黄褐色の宝石のような瞳。彼女を見つめると、魂まで吸い込まれてしまいそうな、妖艶で美しい魅力がある。しなやかな肢体は多くの人の目を引き、帝国魔導士の制服を着た豊満な身体からは、貴族のような女性らしさがあふれ出ている。このような風格を身にまとえるのは、大陸中を見渡してもセリアのように魅力的な者はそう多くないだろう。


 一方のティスは、顔立ちはハンサムだが、服装はやや乱れ、髪も簡単に整えただけだった。一目見て、セリアとは明確な対照をなしていた。


「自分の立場くらい分かってるんでしょ? それに、あと数ヶ月だけなんだから、もう少し待てないの?」


 セリアが鋭い目つきでティスを睨みつける。ティスのやり方がどうしても理解できなかった。


「明後日が新入生の入学日だ。今回は逃したら一年待たなきゃならねえ。そんなに長く待つ気はないし、そもそも部隊にはもういられない。仮に戻ったとしても、陰で色々言われるに決まってる」


 ティスは顔をそらし、手を広げて言った。


 セリアはいくら不満を抱えていても、ティスに対して良い手立てはなかった。


「もし戻ってくるなら、前と同じようにするわ。誰も変なことは言わない。部隊の仕事も、興味がなければやらなくていい。でも、だからって諦めていいわけないでしょ」


「いくら言っても無駄だ。奴らが怖がってるのはお前であって、俺じゃない。お前が部隊で高い地位にいるのは分かってる。でも俺をかばうなんてしたら、お前にとっても俺にとってもいいことなんてない。その考えはやめておけ」


「あんた——」


 セリアは拳を握りしめ、表情は怒りに満ちていた。しかしすぐに落ち着きを取り戻し、その表情は怒りから憂鬱へと変わった。


「あんたの立場で入学手続きがどれだけ難しいか分かってるの? 最低でも、あんたの経歴がもう在籍を認められないのよ。それにあんたの立場や罪は、なかなか消せるものじゃない」


 額に手を当てたセリアがティスを見て説明する。


 それに対してティスは、指で顎を支え、何かを考え込んでいた。


「でもお前の立場なら、俺のために証明書を作るくらい簡単だろ。専門がそれなんだから」


 セリアの部隊での主な仕事は、情報の収集と整理だった。高度な魔法技術と魔法の才能を併せ持つため、部隊の主力としても活躍しており、部隊でも数少ない天才魔導士である。彼女にとって、入学証明書を手に入れることは難しくなかった。


「それは職権乱用よ! 自分が罪人だって分かってるの? 自分で問題を起こしただけじゃ足りなくて、私まで巻き込もうって言うの!?」


「そんなに大声出すなよ。ただの提案だ。ダメなら自分で何とかする」


 ティスは両手で耳をふさぎ、セリアの突っ込みを拒否した。


「あんたって本当に——どうしてそうなのよ!」


 そう言うと、セリアは机を強く叩き、扉の方へ向かって歩き出した。


 ティスはといえば、天井を見上げ、ぼんやりとした表情を浮かべている。何の起伏もなく、すべての出来事が自分とは無関係であるかのようだった。


 セリアが部屋を出ようとしたとき、ドアノブにかけた手が突然止まった。


「……明日、何とか部隊に掛け合ってみる。保護者として、あんたと一緒に学院に行くことにするわ。あんたもちゃんと身なりを整えなさいよ、そんな格好で学院に行くんじゃないわよ」


「おう、ありがとう。やっぱりお前って優しいんだな」


「ふん、一つ言っておくわ。何かあったら自己責任よ。私にあんたの面倒を見る暇はないんだから」


 そう言って、セリアは部屋を出ていった。ティスは彼女の足音が遠ざかるのを聞くと、椅子から飛び上がった。


「いやー、魔法学院か。悪くないな。いや、最高だろ!」


 学院に着いた自分の姿を想像すると、ティスの口元は自然とほころんだ。魔法服を着た女の子たち、太ももを露出し、短いスカートをひらり。自分が超強力な魔法の才能を見せつければ、彼女たちは心から敬意を抱き、そして自分に惚れるに違いない。


 ティスの邪な考えは天井知らずに膨らみ、学院での生活に思いを馳せていた。


「んふふ……どんな性格にしようかな、やっぱクールな感じがいいよな。もし女の子が話しかけてきたら、『悪いけど、子供には興味ないんで』とか言うんだ。そう考えるとカッコよすぎるだろ。絶対に俺に夢中になるよな」


 ティスの年齢は学院の新入生と二歳程度しか違わず、彼は他人に対してとても冷たい態度を取るため、やや成熟して見える。自分の本当の性格を知る者は少数で——そのうちの一人は……


 バンッ——という大きな音とともに、部屋のドアが蹴り開けられた。


「悪いけどね、ティス。女の子に好かれたいだけなら、学院に行かせるわけにはいかないわ」


 セリアがドアの外から突然ドアを蹴り開け、その顔は笑っているのか笑っていないのか微妙な表情を浮かべていた。


「ち、違うんだセリア、そうじゃなくて、ただ俺は——」


「わけのわからないことを言わないの!」


 セリアは拳骨サイズの拳をティスの頭に激しく叩き込んだ。ティスの頭には目に見えて大きなこぶができていた。


「おいおい、あんたは俺を監視するためだけに来てるんじゃないのか、よくもそんな乱暴を——」


「余計なことを言うんじゃない! 監視は私の職務よ。あんたを叩くのは単に気にくわないからよ」


 セリアの手には青筋が浮かび、ティスは殴られた頭を両手で押さえ、歯を食いしばっている。


「なんだその変な理由は——!? あんたは俺の同僚だろ——」


 ティスは涙を流しながらセリアに不満を訴えた。


「今になって同僚だって言うのね!? そんな関係で話さないで。言っておくわ、ティス。私は帝国王族直轄軍事魔導士部隊機関、上級魔士長の権限であんたの魔法学院への行くことを却下するわ」


「やめてくれよーー、セリア様、お願いだ、チャンスをくれ。もうそんなこと考えないからさ。監視されて自由のない毎日はもう耐えられないんだ——」


 ティスはセリアの太ももに抱きついて懇願した。クールなキャラを保つ余裕などなかった。


「あんたねえ、さっさと手を離しなさいよ。離さないなら殴り続けるからね!」


「お願いだよセリア様、あんたが一番だって。俺が最近どれだけツラいか分かってるだろ」


「そんなの知らないわよ。軍律に違反しなかったら、罪に問われることもなかったんでしょ?」


 セリアは自分の脚を激しく振り、抱きつくティスを振りほどこうとした。


「でもあまりにも汚い王族がいるんだよ。俺はあいつらのやり方が我慢できなかっただけだ。なんで部隊には専任の命令を下す人間がいなくて、あんなクソみたいな王族どもの言いなりにならなきゃいけないんだ」


 ティスは必死にセリアの脚にしがみつき、振り落とされまいとしながら、反論した。


「そんなの知らないわよ。離しなさい。離さないなら魔法で焼き殺すからね」


「できるもんならやってみろよ。お前は俺を監視してるんだ。もし俺に何かあったら、部隊がお前を許さないぞ」


 ティスはそう言ったものの、内心は不安だった。顔を上げてセリアを見ると、全身から思わず冷や汗が出た。


 ——


 そのとき、セリアはすでに第三級火魔法【赤紅の烈蓮】を練り上げていた。これは人体を内側から幾つかに分けて燃やす魔法で、長い焼けつく苦しみの末に死に至らしめる恐ろしいものだった。


「お、おいセリア、本気かよ?」


「紅蓮よ——」


「セリア様——!?」


「熱き火の中より——」


「おい、流石にやりすぎだろ——」


 ティスはセリアの太ももから手を離し、慌てて立ち上がった。


「——その全てを灼き尽くせ!」


 その言葉とともに、強力な炎が放たれ、ティスに向かって襲いかかった。


「うわあああああ——」


 ティスは踏ん張りが利かず、その場に座り込んだ。辛うじて魔法をかわすことができたが、彼の後ろの壁は炎に焼き尽くされた。


「あらあら、かわしちゃったのね。じゃあ——」


 セリアの手にはさらに強力な魔法が練られている。先ほどよりもはるかに強力なものにしか見えなかった。


「やめてくれよ——! 俺の部屋をここごと消し去る気か!?」


「あんたの部屋ですって? ここは私の家よ。それに私はあんたの命の恩人でもあるの。その命で恩返しするのは当然でしょ。今さら謝る時間もないわね。おとなしく死になさい——」


「やめてえええええええ——」


 ティスの絶叫が空を切り裂いた。その叫びとともに、魔法学院への素敵な妄想も打ち砕かれたのだった。

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