地底人現る
ある日突然、奴らは地底から大量に地上へと現れた。地底人である。彼らは、全身を茶色い剛毛に覆われ、爛々と光る丸い眼と、大きく裂かれた口には肉を引き裂く鋭い牙、そして鋭い爪を生やしていた。
彼らの本拠地は、地底の奥であったが、今や地球上の人類は、食人鬼としての地底人の食糧であり、ことごとく喰いまくられ、殺戮されていた。最初、人類の軍隊との地上攻防戦が続いたが、彼らは、あとからあとからと、地底から増え続けて、世界各国で、人類の軍隊は、撤退を余儀なくされ、世界の都会や田舎、山岳部で、人類は次々と地底人の餌食と化した。彼ら食人鬼に喰われ、人類は人口減少の一途をたどった。
最後の砦となった国連本部の科学研究所で、生き残った科学者たちは、地底人の遺体を解剖調査した結果、彼らが、生来、ヘリウム3をエネルギー源として、体内常温核融合炉の安定剤として用いているらしい事を発見した。だからヘリウム3が大気中にないと、内部燃焼を引き起こし、結果として燃え尽きてしまうのだ。このポイントに科学者たちは目をつけた。
それならば、地球の大気中からヘリウム3をなくしてしまえばどうか?しかしどうやって?
そして彼らは苦悩し、その結果として、世界中の電波塔から、特定の周波数の電磁場を発生させて、磁気共鳴パルスを引き起こし、それによりイオン化されたヘリウム3を電磁場によって地球外へ弾き飛ばしてしまう。このアイデアに科学者たちは興奮し、急いで全世界の放送局を通じて連絡され、それを受けた担当者たちは、こぞって周波数を合わせて、電磁場を飛ばした。
見事な光景であった。
電波により励起された大気は、世にも美しい虹色のオーロラを世界中の空に描いた。綺麗である。まるで夢のような世界であった。
そして予想されたように、地球上のあちこちで、地底人たちがバタバタと倒れていき、皆、体内から高熱を放射して、やがて灰と散っていった。
今や、地底人は死滅した。
科学の勝利、いや、人類の勝利であった。今や危機は去ったのだ。
人々は、この結果に喝采した。皆がこぞって屋外に出て来た。
そして、空一面に広がる美しい虹色のオーロラを眺めて、あらためて人類の幸福と平和を噛みしめるのであった....................。




