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ドラゴンリング  作者: 半纏ボク
第弐章 トゥーロン都市要塞
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トゥーロン都市要塞内サント・ミュス病院

 かつてはアルバート・ワイマン伍長と呼ばれていた男が、ここトゥーロン都市要塞の医療部に収容されていた。デリンジャー分遣隊に所属していた人間が救助されたのは実は二人であったのであるが、彼の場合は身元を判別することなど到底できる状況ではなかった。そもそも、彼が救助されたことも、まったくの偶然のできごとだった。安全保障軍の偵察部隊が一頭のドラゴンを発見し連絡を絶った。その時の生存者と間違われて発見されたのである。

 ワイマン伍長は人間というよりは人形に近く深い昏睡状態だったが、その人形は死んではいなかった。もっと正確に言うのであれば、デリンジャー分遣隊を壊滅させた本当の原因である物体の一部は未だに死んではいなかった。その物体はワイマン伍長の身体の内側に潜み、宿主といっしょにトゥーロン都市要塞の民間病院に収容されたのである。その発達し研ぎ澄まされた感覚は意味のある目的をもってはいなかったが、空腹と種族保存の本能に強く支配されながらも周辺の様子をうかがっていた。それは狼が獲物をねらうときにそっくりで、茂みの中に身体を忍ばせてチャンスを待ち続けているようだった。

 病室の照明が一度点滅すると、ふっと消えた。闇に覆われた病室の中でワイマン伍長を看ていた看護装置の全てのLEDが危篤状態のレッドから健康体のブルーにかわっていった。今までの弱々しい生命活動が突然に異常なほどの強い生命活動に変化し、看護装置のメータの針が振り切れていた。ドラゴンと同様にフェアリーリングからの侵入者であるその物体は、あたりが静かで天敵がいないことを感じとり獲物を求めて動き出した。

 ワイマン伍長の身体が震え、次第に大きく揺れると彼はベッドの上で身体を起こした。闇の中では、そういうふうに見えただろう。だが、手足を使った動作ではない。寄生している身体をつき破って物体は緑色の仮捕捉手を持ち上げたのだ。

 さらに仮捕捉手を伸ばし、他のベッドから感ずる息づかいの方に移動しようとしていた。その息づかいは苦しげであったが、破壊されていない骨格と筋肉があった。それがあれば再構成し、自分の手足として使えるはずである。物体は再び力を蓄えるため、自分の分身を殖やすため、殺戮と残虐の予感に恍惚感で満たされていた。


(第参章へ続く)

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