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番外編:ラナの想い

番外編です。

ラナ視点でリシュベリーとギルハルトの結婚式当日のお話ですが、結婚式自体の内容は全く描写ありません。


ほぼラナの独白です。



 私の名は、ラナ・シーラと申します。


 デルタ王国王妹殿下でいらっしゃる、リシュベリー姫さまの乳姉妹として幼い頃より姫さまのお傍近くで育ち、今現在は姫さま付きの侍女頭を任されております。



 早いもので、私と姫さまがこのリンガ国王宮に来て四ヶ月が経とうとしております。


 私の敬愛して止まぬ姫さまとギルハルトさまとの婚約が正式に整い、一時はひどく憔悴しきっていた姫さまも、不安が取り除かれたようで本来の姫さまに漸く戻られました。



 正式に婚約が決まりますと、次はこの国の王妃教育を受けねばなりません。


 とはいえ、姫さまはデルタ王国では君主並みの教育を受けてこられた方ですので、必要な知識といえば国の違いによるもののみ。


 姫さまは物覚えもよい方ですので、すんなりと講義のほうは進んでいるようでございます。


 さらには婚儀のための仕来りを覚えてしまわねばなりませんが、こちらも姫さまはすんなりと覚えてしまったようでございます。




 むしろ慌しく婚儀の準備に追われていたのは、城中の小間使いたちでしょうか・・・。


 ギルハルトさまはジオラル陛下に許可を頂いた上は、姫さまを出来るだけ早く王太子妃にしてしまいたいお考えでいらっしゃいました。


 それは姫さまの不安を少しでも早く払拭するためであり、もちろんギルハルトさま自身の我欲も多分に含まれていらっしゃったと思われますが・・・何はともあれ、姫さまがこれでご自分を偽ることなく幸せになられるということが私にはわかっております。



 幼き頃よりご自分を抑え込む事を覚え、全ては母国のため、家族のため、国民のため・・・そんな姫さまの努力するお姿を見ていた周りの者たち全てが姫さま自身の幸せを望んでおりました。



 それがやっと今日、目に見える形で叶うのです。



 あぁ・・・デルタ王宮に留まっている人たちにも、今日の姫さまのお姿を一目でも見せて差し上げたい。



 それが偽りなき、今現在この瞬間の私の気持ちでございます。






「ラナ・・・何もそんなに泣かなくてもいいではないの。」



 感極まって涙ぐむ私に、姫さまが困ったような顔をなされておりますが、これはうれし涙でございます。



「姫さま・・・姫さま・・・とてもおきれいでございます。

 私・・・もう嬉しくて嬉しくて・・・・」



「もう・・・まるで娘を嫁がせるご両親のようよ?

 ギルハルトさまと結婚しても、ラナがお嫁に行くまではずっと一緒にいるでしょ?


 それに、ラナはデイルと結婚しそうだから、そうなったらずーっと一緒ね。」


「ひ・・・姫さま!?・・・何をおっしゃって・・・」



 この王宮に来てから何かと世話を焼いていただき、よくお話しているうちに私がデイルさまを慕っていらっしゃることを、姫さまはどうやらしっかりお見通しだったようでございます。



「ふふふ・・・私に隠し事はダメよ。

 ラナがデイルを目で追っているのは、ちゃーんと知っているんですからね。」



 素晴らしい純白の衣装に身を包みながらも、まるでいたずらっ子のように胸を反らして得意げな顔をして姫さまはおっしゃいました。



「デイルもまんざらではなさそうだもの、きっとラナの恋は叶うわ。

 そうしたら、今度は一緒に子育てしましょうね。


 ラナ、子どもの頃からずっと一緒にいてくれてありがとう。


 ラナがいつも傍にいて励ましてくれたから、私は挫けずにがんばってこれたのよ。


 ラナにはとても感謝しているわ。


 だから今度は、ラナが幸せになってね。大好きよ。」



 そう言って姫さまは私を抱きしめた後、控え室から出て行かれます。


 控え室の外には、姫さまと同じく豪奢な白い正装を纏ったギルハルトさまが姫さまを待っておられました。




 姫さまにはお礼を言われてしまいましたが、感謝するのはむしろ私の方でございます。


 姫さまががんばっておられる姿を見て、私も負けないようにしなくてはと思って自分を高めて参りました。



 姫さま付きの侍女として恥ずかしくないようにと、努力して参りました。


 姫さまを励ましているつもりで、自分を叱咤しておりました。



 今日から姫さまは、デイル王国王妹殿下からリンガ国王太子妃になられます。


 それを機に私も、姫さま付き侍女頭から王太子妃付き侍女頭となります。



 女官になることもギルハルトさまには勧められましたが、私は姫さまのお傍近くにお仕えしてお世話がしたいからとお断りさせていただきました。




 これからも私は、終生変わらぬ忠誠を我が主に本日改めてお誓い申し上げます。



 それは私の新たな旅路の決意とも言えましょうか・・・



 私が姫さまに対するこの気持ちは、何者にも覆すことの出来ぬ思いです。




「姫さまがお幸せなお姿を、私はこの命ある限りお傍近くで見て行きたいと思います・・・」



 控え室を出て行かれた姫さまのお背中に、私はそう呟いてお辞儀をして見送らせていただきました。



 どうか、末永くお幸せに・・・

一応完結扱いですが、気が向いたらまた何か書きます。

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