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第七話(1)

「まだ来ないのか……」


 レイの店の二階の大窓、注文してからそこそこの時間が経つ。しかし注文した工房が手間取っているのか、まだ届いていなかった。

 穏やかな天気は一転、ここからしばらく王都の天気は悪天候の予報だ。レイとしては部屋をせっかく綺麗に掃除したのに窓から入ってくる雨で部屋がずぶ濡れになってしまうのはいいただけない。

 工房を急かすのもどうか……。レイは渋い顔をしていた。


「まあ、考えても仕方ない」


 そう呟いて大窓の前の机についた。キシっと椅子はきしむ音を立ててレイの体を受け止める。

 大窓から王都の空を眺めると、朝方は晴れていたのに今は厚く灰色の雲が覆っている。それは午後からの雨を予感させた。


 魔種が芽吹きかけている者の存在は、元勇者の立場であるレイからしても脅威であった。

 かつて、幾度もダンジョンに潜り、魔花となってしまったものを倒してきた。しかし、その戦いはどれも熾烈で、命を削られるようなものばかりだった。

 魔花の攻撃は鎧を貫き、自分たちの攻撃は剣を握る手の皮を剥く堅固であった。

 一瞬で数えきれないほどの攻撃魔法が瞬きもできない刹那の間に自分の命を狙ってくる恐怖を思い出すと、思わず体が震えた。


 きっと元パーティのみんなもそのことを思い出し、安心して眠れない日が続いているかもしれない。

 王都の片隅で静かに暮らしたいと思っていたが、自分に勇者の使命を与えたなにかはそれを許してくれないのか。


 レイがそうを思った瞬間だった。


 まるで爆発だった。


 突然の魔力の暴走。音はなかったのに、まるで鼓膜をつんざくような迫力で王都に響いた。


 魔花になってしまった。それが頭によぎる。


 椅子から飛び上がり。レイは外套を持ち、自らの影に溶けた。


 影が再びレイの形を成すと、そこは闘技場だった。


 魔花の正体は一瞬で分かった。


 闘技場の中心、ヴェルクトと大男が戦ったその場所に、それは立っていた。


 白く金の装飾が施された煌びやかで華やかな甲冑をまとい、身の丈以上もあるツヴァイヘンダーという両手持ちの大剣を持っている。


 その件と鎧は、血で濡れている。


 闘技場を管理していた衛兵たちのものなのか。ただ、衛兵たちの姿はない。


 レイの気配に気付いた『それ』は、ぐるりと首をレイの方向に見やる。


 全身が粟立った。


 それは爆発したように、レイに飛び掛かった。


 大剣をためらいなく『右手』だけで振り下ろし、レイの体を両断せんとする。レイは横に転がり何とか躱す。大剣は地面に叩き付けられ、考えられないほどの音が闘技場内外に響いた。


 その威力は計り知れないほどだった。レイの今までいた場所は地面が大きく裂けている。


 それはレイが裂けている地面を確認する暇も与えず、次は大剣を横なぎをした。

 

 そこからレイは防戦一方。攻撃を受けた瞬間に何が起こるかを考えるだけでおぞましい。


 まるで小さいナイフでも扱っているように片手だけ大剣を振り回している。間合いに入ることができない。


 レイが距離を取る、するとそれは地面を大剣で薙いだ。


 数多の破片が、レイを襲う。


 からがらその破片を避けたところだった。


 それはもう詰めている。次の一撃は躱せない。


 レイは魔法防壁を作り、その攻撃を受ける。


 その攻撃は魔法防壁の上からでもレイの意識を王都の空へ放り投げるほど強烈だった。


 ひたり。とレイの腹にそれの『左手』を感じる。左手にはとんでもない量の魔力が練られている

 ゼロ距離では魔法防壁も作れない。


 その左手はレイに向けて、闘技場を破壊するほどの攻撃魔法を放った。

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