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(水)魔法使いなんですけど  作者: ふーさん
5章 願い歩む者たち
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大切に思われるリフィン

「こんな所にいたのかぁ~…大きな音がするからなんだろうなって思ったけど予想が当たるなんてなぁ~っ!」

「あぁ? 誰だてめぇ!」


 盗賊たちから身を守るためリフィンは氷の覆壁(アモンジト・ヘイス)を重ねていっていたのだが、後退出来るスペースが無くなってきて最後の氷の覆壁が破られた時、盗賊とは思えぬ貴族のような美青年が地下水路の奥から歩いてきたのだった。


 くすみのないサラサラの金髪をなびかせ上質な素材を使った服装や装備類を着こなしており、歩く姿だけ見てもその一挙手一投足は完璧なまでに洗練された刀のように美しかった。

 ここが地下通路でなく街中(まちなか)であれば多くの女性を釘付けにしていたであろう事は容易に想像できたリフィンであるが、リフィンにはそういった感情は特に生まれはしなかった。

 むしろこんな所に人が居るなんて余計に怪しく、盗賊の仲間では? と予想した。


「誰だか知らねぇが痛い目見る前にとっとと失せな!」

「へっへっへ、良い身なりしてるじゃねぇか…命が惜しかったら有り金全部置いていきなぁ!」


 どうやらお仲間ではないらしい、今からメインディッシュだというのに第三者が現れたのが気に食わないのか、盗賊たち数人が身なりのいい美青年に突っかかっていくと


「僕は水の聖女様を探しに来ただけなんだけどね? どうやら___」

無慈悲な大洪水(ルースレスフラッド)ぉぉぉおおお!」



 どっぼしゃぁぁぁあああんっ!!



 リフィンはいきなり現れた身なりの良い美青年も怪しいと判断、渾身の魔力を使って無慈悲にも盗賊たちを飲みつくすような大量の水を放出し見事命中させた。


「どわぁぁぁあああっ!?」

「がぼぉっ!? このクソガキ!」

「ごぁぁぁあああ!! くっそ!?」


 どんぶらこ、と盗賊たちは不意に放たれた大量の水に抗うことが出来ずに流されていくが怪我を負ったとも考えにくく、十分な距離を離す事は出来なかったので警戒は必要だろうと身構えたのだが


「…そんなっ!?」


 リフィンは目の前の光景に驚愕した。

 盗賊たちが大量の水によって流されていったというのに、身なりの良い美青年はリフィンの水魔法によって流される事はおろか、先ほど居た場所から動く事もなく、水に濡れることもなく、右手を前に出していただけでリフィンの魔法を打ち消していたのだ。


「へぇ…いきなりとは無慈悲だね! でも大洪水までとはいかないかな?」


 身なりの良い美青年、ノアールが薄く笑ってリフィンに近づいてくる。


「驚かせて済まない、僕はノアール…冒険者だ」

「うじゅるうじゅる…」

「あ、助けて頂きありがとうございます。 私は…避けてっ!」

「「「死ねぇぇぇえええ!!!」」」


 どうやら金髪の美青年は冒険者には見えないが冒険者らしく自己紹介もしてくれた。 一瞬とはいえ盗賊達の気を逸らしてくれた事に感謝しリフィンも自己紹介をしようとした時、ノアールの背後から盗賊達が数人襲い掛かってくるのが見えた。




● ● ● ● ●




 ぼしゃぁぁぁっ...



「うぉーん!」

「リフの水魔法か!? 急ぐぞポコ!」

「わふっ!」

「わたしの事忘れないでよぉ!」

「お前は走らなくても俺に憑いてるだろうが!」


 盗賊達に連れ去らわれたリフィンを救い出すため、グレン、ポコ、ユウはリフィンの微かな匂いを追ってポコが先導しながらしばらく進んでいると、遠くの方で水が噴き出したような音が聞こえてくるのだった。

 もし今のがリフィンの水魔法だとしたら盗賊たちに抵抗しているのかもしれないと淡い期待をするグレン、走っていくうちにバシャバシャと地下水路の中の溝の水位が次第に高くなっていき、不自然なまでに流れが速くなっていた。


「(暗いな…リフ、無事でいてくれ!)」


 地下水路の中は薄暗く所々に明かりとなる松明がある筈なのだが、何故か奥が全然見えないので不安になったグレンは火の玉(ファイアーボール)を前方に放ち照らすと遠目ではあるが人のシルエットが複数見えた。


「ポコ、一気に行くぞ!」

「うぉん!」




● ● ● ● ●




「俺らは毒蠍の刃(スコーピオエッジ)…狙った獲物は…絶対に逃がしはしな……」


 どさっ! と全身入れ墨だらけの大柄の男が意識を失ったのか立った状態から仰向けに倒れた。 後ろには他の盗賊達が倒れていて山積みのように積まれていた。


「…凄い」


 埃を落とすようにぱっぱと手を(はら)うノアールにリフィンは驚愕していた。

 盗賊たちは7人程いた筈なのだが山積みになって伸びているのは全て、ノアールが襲ってきた盗賊達を一瞬のうちに片づけたのだった。

 特に盗賊たちに目を合わすこともせず、殴って倒したのか魔法で倒したのかすら目で追えないほど一瞬だったのだ。


「そうでもないさ…ん、新手かな?」


 ノアールがそう言って振り向きリフィンも釣られて同じ方向を向くと、水路の奥から何者かが走って近づいてくる音が聞こえると自分の名を呼ぶ声が聞こえてきた。


「リフーっ!」

「うぉーん!」

「リフちゃーん!」

「グレン! ポコにユウちゃんまで!?」

「…」


 グレンは全力疾走でリフィンの所を目指しながらチラリと積み上げられた盗賊たちとノアールを見ると状況を察したのか、リフィンの目の前まで来ると両肩をガシッと掴みガクガクと揺らしながらリフィンの身体に異常がないか確認を続けた。


「え、ちょっとグレン!?」

「大丈夫なのか!? 特に怪我をしたとかは!?」

「えっと…首の後ろが少し違和感あるのと、手足を縛られてたから少し痛みがあるくらいで」

「見せろ!」

「っ!?」


 隅々までリフィンの肢体を確認して異常がないかどうかを確かめていくグレンに、リフィンは人前というのもあり恥ずかしくて今すぐグレンを殴りたいという衝動もあったのだが真剣にやっているグレンを見ると、本当に心配して駆けつけてくれたんだ…と感じそんな気なんて一瞬で消えてしまった。


「…手足は大丈夫だ、首に小さな傷があるがクリスの光魔法で治療出来る、他に何かされたことがあるんだったら言え!」

「…ありがとうグレン、襲われる前にライに助けて貰ったから大丈夫」

「うじゅるる!」

「そうか…」

「ぷっ…あっはは! なんだかお父さんと娘みたいじゃないか!」

「「っ!?」」


 一連のやり取りを見ていたノアールは、リフィンとグレンの体格差を比べてしまったようで親子みたいだと思ったのか腹を抱えて笑ってしまった。

 親子ではない、となんだか複雑な気持ちを抱えながらリフィンとグレンはノアールに感謝の言葉を告げる。


「えっと…ノアールさん、助けに来てくれてありがとうございました」

「リフを助けてくれた事…感謝する」

「なぁに大した事してないって、リフさん…水の聖女様と言った方がいいのかな? 僕が来なくても耐え凌いでいたと思うし、盗賊たちは僕がやっつけたけど君がすぐに助けに来たから普通に間に合っていたと思うよ」

「私の事ご存じでしたか…申し遅れました、リフィン・グラシエルです」


 リフィンは右手を差し出して握手を求めるとリフィンの傍に居たライもじゅるじゅると震えだした。


「っ!?」

「…どうかしましたか?」

「…あ、いやぁなんでもないよ! へぇ…水の精、スライムを使役しているのか…珍しいね」


 リフィンはノアールと握手を交わすとグレンも前に出てきた。


「俺はグレンだ、こいつとは…良く組んでる」

「はは、隠さなくていいよ彼氏っぽいの…僕はノアールだ、別のギルドから旅してここに流れ着いた冒険者さ」


 ノアールの爽やかな笑顔が少し苦手なのかグレンは無言で握手を交わすと、近くに落ちていた魔封じの首輪の残骸をノアールが発見した。


「これは…もしかしてロープで縛られていたっていうけど、魔封じの首輪もされていたのかい? 良く自力で解除したね!」

「あ、いえ…スライムのライが拘束具を溶かしてくれたので、私一人ではどうすることも出来ませんでした」

「それは幸運だったね! とりあえずこんな所で立ち話もアレだし、帰りながら話をしようか!」

「「そうですね(だな)」」


 ノアールの提案に対して言葉がハモったリフィンとグレンは少し顔を赤くしながらも伸びている盗賊たちを縛り上げて引きずりながら出口へと向かうのであった。




● ● ● ● ●




「ねぇ優男」

「え…僕の事!?」

「…助かったわ、感謝しておく」

「あ、あはは…」


 リフィン達が地下水路から出るとボロボロのアストレアが黒剣の集いのクリスに回復魔法をかけてくれており、戦闘現場と思しき場所には大量の血痕が付着していることから、リフィンの目でもアストレアがかなりの怪我を負っていたのは容易に想像出来た。


「お姉ちゃん大丈夫!?」

「それはこっちのセリフよリフ…身体は何ともないんでしょうね?」

「うん、なんとかセーフ」

「はぁ…こっちに来なさい」


 なんだろう? とリフィンが治療を受けているアストレアの前までくると、がばっとリフィンに抱き着いてきた。


「えぇお姉ちゃんっ!?」

「馬鹿リフ! 本当に心配したんだからっ! 私がどんな気持ちでいたのかも知らないでしょーがぁぁぁあああ!?」

「…ありがとお姉ちゃん」

「ふわぁぁぁあああっ!! 良かったぁぁぁあああっ!!」


 抱き着いたまま泣き出すアストレア、初めて見る姉が泣いた姿に自分がどれだけ大切に思われているのか身に染みると同時に、

 グレンも泣きはしなかったけど同じくらい大切に思われているのだと思うと嬉しい気持ちが溢れてくるリフィンだった。

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