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(水)魔法使いなんですけど  作者: ふーさん
4章 蒼きツバサ
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ジルット村の酒場にて

4章ラストです。

「おぉ冒険者様方、それに水の聖女様もよくぞご無事で!」


 ジルット村に到着すると早速村の村長であるおじさんに出迎えられた。 

 タイラントワイバーン討伐に向かう前に依頼人との確認と情報収集の為に立ち寄った際、リフィンによる水への信仰心を深める布教活動をしていたので村人達からの信頼が高まっていたのか手厚く歓迎された。


「思わぬトラブルもあったが翼竜はちゃんと討伐してきた」

「猿もあらかた片付けたし安心していいぜ!」

「ありがとうございます、村の脅威だけでなく水魔法使い達の活気を取り戻してくれた事にも感謝しております…水魔法の有り難みを説いてくれなければこの町の水不足は解消されなかったと思うばかりですのじゃ」

「それはリフィンに直接言ってくれ、俺達は何もしていないからな…話は変わるがここで一泊したい、いつもの宿屋は空いてるか?」

「あーはい、それなんですが別の冒険者様方が先程宿をおとりになられたようでして…」

「他には無いのか?」

「…空き家が一軒あるのですが、翼竜を討伐して下さった冒険者様方には少しふさわしくないかと」


 今日はこの村の酒場でお祝いをして一泊する予定だし野宿にも慣れて来たので、酔っている状態であってもなくても寝れる場所があるなら充分かな…寝袋だってあるしお姉ちゃんも居るから安全だよね。


「寝れる場所があるならそれでいい」

「しかし幽霊が出たとかと言って持ち主が手放してしまった物件での、村の住民達もその家の付近で幽霊を見たとか言って取り壊そうにも怖くて近寄れん、近寄った者は夢遊病になるとか言われておるのじゃが確証なんてないしな…」

「…なぜ依頼を出さない?」

「そこに家があるだけで特に害はないから一部を村の物置として使っておる、わしも幽霊なんぞ信じておらんしたちまち困っては居なかったからの」

「なるほど、じゃあそこを借りるとしよう」


 そうして案内された家はごく普通の一般家屋のようで少し埃っぽかったけど一泊する分なら充分すぎる、幽霊が出ると言っても何も悪さなんて出来ないだろうし。

 大きい部屋と小さい部屋が1つずつあったので私とお姉ちゃんは2人で小さい方を借りる事になった。


「よし、あとは夕方になるまで自由行動だ…夕方になったら酒場に集合してくれ」

「おっしゃあ俺は今から飲むぜ!」

「ロディ、夕方までは自腹でお願いしますよ」

「麗しの人妻を見物してくるっすよ」

「武具の手入れ」

「食べ歩きしてくるわい」

「必需品の買い出しは…俺の役割ですよね」


 と言ってシック達は荷物を部屋に仕舞い込むとジルット村の観光に出かけて行った。


「リフ、私達はどうする?」


 お姉ちゃんがどうするのか聞いて来たよ、買い物があるから雑貨屋に行くと告げたら「私も行くわ」と言って着いてくるらしい。 あまり着いてきてほしくなかったんだけど無理に断る理由もないからなぁ

 そうして一人残ったグレンにどうするのか聞くと不機嫌そうな顔して荷物番をするとの事だった。 さっきからなにしょぼくれてるのか知らないけど荷物番してくれるみたいだし、あとで何か食べ物でも買ってあげよう。


「で、雑貨屋で何買うの?」

「…いろいろかな」


 こう答えていれば問題ない筈…実はパンツが本命なんだけどそんなの言えないし、替えのパンツが無いから買うだけなんだよ。

 決して黒き翼竜(バケモノ)に怯えて漏らした訳では無い、ちょっと思わぬアクシデンドで汚れちゃったから替えのパンツを使い果たしただけなの。 汚れたパンツはバッグの中に厳重に仕舞ってあるから大丈夫。 そうしてお姉ちゃんとジルット村の雑貨屋に行ったんだけど…


「いらっしゃい! お、水の聖女様じゃねーか! 当店にご来店下さりありがとうございます! そちらの綺麗なお姉さんは?」

「リフの姉よ」

「そうでございましたか! 姉妹揃って大変麗しゅうございますな!」

「それはどうも」


 ジルット村の雑貨屋に着いたのはいいけど40代くらいのゴツい男性の店員さんでした。 この人にパンツどこですかって言うのも…お店も少し大きいしどこかに奥さんとか女性の店員いないのかな?


「大きいお店ですけど1人でお店を切り盛りしているのですか?」

「まぁな、こんなゴツくて良い男なのにまだ独身だ…水の聖女様はオレとかどう?」

「あ、いえ…各地を回ったり冒険者稼業が忙し___」

「次リフに色目使ったらぶっ潰すから!」

「すみませんでしたーっ!」


 いやお姉ちゃん、穏便に断ろうとしてたのに怯えさせてどうするの…女性の店員さんが居ないのは仕方無いけど、余計パンツが買い辛くなったよ! いつもの優しいお姉ちゃんはどこ行ったの!?


「…お姉ちゃん、今のは言葉がキツすぎるよ」

「私はリフを守る為だけに行動しているに過ぎないわ、リフ以外の者に優しくするなんて事ありえないし」


 なんて事だ、私が想像していたあの儚くて優しいお姉ちゃんのイメージが消え去って行ってしまう。 やめて! 私のお姉ちゃんはそんな残念な人じゃない!

 とりあえずそれはさておいて目的のパンツが見当たらない…あるのは子供用のパンツくらいで大人用のは全然見受けられなかった。

 仕方無いけどさっきの店員さんに聞こう。


「すみません、大人用の下着ってどこに置いてありますか?」

「あー、実は結構品切れ中でな…たしか数年前にヌツロスムントで流行したという下着なら売れ残ってる筈だ、場所はあそこらへんになるな」

「そうでしたか、有難う御座います」


 さてどんな下着が流行していたのかは知らないけどって…えぇっ!?


 いつの日にか見た、見覚えのある優しい三角形、汚れを知らぬ純白が(なめ)らかな肌触りを演出し、そしてそれを引き立てる為おしりの所には可愛らしいラブリーブラッドベアの頭が描かれたイラストが貼付けられていた。

 その持ち主ならば決して間違える事な無いという(まご)うことなきそのパンツは…


「なにリフ、あんたまだクマさんパンツ穿いてんの?」

「…」


 リフィンは白目をむいた。 学生時代の忌まわしき過去の象徴がなぜヌツロスムントで流行していたのか知らないが、コレを買うしか無いのかと葛藤を続けるのであった。




● ● ● ● ●




 陽も沈みかけ夕方になった頃、リフィン達はジルット村の酒場にやってきていた。

 あのあと他の日用品も買う事によってなんとかパンツは購入出来たものの、アルモニカに帰ったら二度と外に持ち出されぬよう封印しておかねばと心に誓ったリフィン。

 途中串焼き屋さんを見つけたので荷物番をしているグレンにお土産として数本持っていき、良い時間帯になっていたので酒場に行こうと誘ったのだがグレンは行かないと言って串焼きだけ受け取って部屋に篭ってしまうのであった。


「ぎゃはははは! そこで俺がバケモノの背中を押さえて翼で飛べないようにしたんだぜ!」

「ちょっ、ロディ重いっすよ!?」

「そこでリフィンがバケモノの口を水魔法で押さえたんだ、火炎ブレスが出せない様にな…おら飲め!」

「んぐっ!? ガボッ、グフォ!?」ゴクゴク!

「で、僕はそれから逃さない為に首を押さえたんだ!」

「んぐぅぅうぅぅうっ!?」バンバン!

「それからワシが頭に攻撃をヒットさせたのじゃわい!」


 パリィィィイイイン!


 (から)のビンがロルタプの頭に直撃しバラバラに砕ける


「痛って!?」

「そしてグレンの大剣がバケモノの首を跳ね飛ばそうとしたのだが…」

「この仕打ちは酷過ぎじゃないっすかおらぁぁぁあああ!?」


 黒剣の集い(ブラックギャザリング)のパーティメンバー達は黒き翼竜(バケモノ)との戦いを他の客達に実演していたのだ。 ロルタプが何故か黒き翼竜(バケモノ)役らしい


「おお!」

「めっちゃ連携とれてるじゃねーか!」

「さすがBランク冒険者パーティだけはあるぜ!」

「でもそれを一気に吹き飛ばすバケモノもやべぇぜ!?」


 酒場でぎゃーぎゃー騒ぎ立てる男共のテンションはヒートアップしていた。

 やはり男共はこういう冒険譚などの実演が好きなのだろうか、それとも酒や場に酔っているだけなのか…リフィンには分からなかったが賑やかでいいなぁとカウンターテーブル席でアストレアとジュースのようなものを満喫していた。


「おいひいですねコレ! なんていう飲み物なんれすか?」

「ウメジルットでございます、ここジルット村で栽培される酸っぱい実を用いて製造されたものです。」

「ふーん…私もこれは好きかも、もう一杯頂戴」

「わらひも!」

「ははは、水の聖女様とそのお姉様に気に入られるとは…あとで生産者の人に伝えておかなければなりませんね!」


 そして酒場のマスターによって追加のウメジルットを渡されると、それを一気に飲んでいくリフィンとゆっくりちびちびと飲んでいくアストレアであった。


「こんなろろんらことないくらいおいひいれすねー」

「み、水の聖女様は本当に成人しているのですかね?」

「こうみえて17よ、成人してるから法律上問題ないし安心して」

「さ、左様でございますか…」


 身体が小さい為かただ単にお酒に弱いだけなのか、リフィンはコップ2杯で顔が火照ったように赤くなり始めて既に呂律が回っていないようであった。

 そんなリフィンに後ろで実演をしていたロディが声をかけたのであった。


「おーい嬢ちゃん! ちょっとこっち来てくれやー!」

「はぁ〜い」

「リフ、大丈夫?」

「たぶんいけう!」

「そう、なら気をつけていってらっしゃい」


 イスから降り、足元がふらつきながらもリフィンはロディのところへ行くと観客が一斉に騒ぎ出した。


「んじゃあ実演の続きからやっていくぜぇ?」

「うぉぉぉおおおおお!」

「おっしゃぁあ!」

「水の聖女様ぁぁあ!!」

「いぇ〜ぃ!」


 そしてまた黒き翼竜(バケモノ)役にさせられたロルタプもまた一段と酔っているようであったが、テンションは最高潮だったのか高らかに声をあげて豪快に登場する。


「ぐぇぇへへへへへ! 人間どもめ! 弱過ぎるっすよぉおおお!」

「いやぁ〜っ!」

「水の聖女が絶体絶命のピンチ! 俺達は吹っ飛ばされて誰も応援にいけねぇと思われたがその時グレンって奴が現れたんだぜ!!」

「なんで俺なんですか!?」

「マシューは早々に吹き飛ばされてから活躍の出番無かったからな、今活躍させてやるんだよ!」

「気を遣わなくていいですからそんなの!?」

「リーダー命令だと思ってやってこいやぁ!」

「分かりましたよもぉ! どらぁぁぁあああ!」

「われにそんな攻撃は効かないっすよぉおおお!!!」

「ぐはぁっ!」


 速攻でロルタプに吹き飛ばされるマシューの演技はまさに神()かっていた。 まるで役者の達人のように、グレンはもう少し粘っていたのだが実演に改編や省略はよくある事だ。


「おいまじかよ…」

「水の聖女様やべぇじゃん」

「そしてバケモノは嬢ちゃんの身体を掴んで軽々と持ち上げたんだぜ!」

「ど、どうやってここから巻き返すんだよ!?」


 そして黒き翼竜(バケモノ)役のロルタプがリフィンの肩を掴みベロベロと汚らしく舌なめずりをする。 リフィンの方は酔っているせいか頭が既にフラフラしていた。

 その様子を見ていたアストレアであるが、実況をしているロディがこちらを見てチラチラと合図をしてくるので、アストレアはタキルと友情の誓盟(アミティエスウェア)をしてスタンバイした。


「ぐへへっへあっはははは! オレサマオマエマルカジリっす!」

「いやー」

「うわぁああまじかよっ!?」

「もう無理だろこれ!?」

「聖女様ぁああああ!?」

「水の聖女である嬢ちゃんが食われるっ! そう誰しもここでおしまいだと思ったぜ! しかーしそれは最強の助っ人であるこの人物が形成逆転させたんだぜーっ!!」

「私のリフに手を出すなぁあああ!!」

「…へっ?」


 ドゴォォォオオオン!!!


 走っていってドロップキックをロルタプにかましたのであるが、勢いが強過ぎたのかテーブルや椅子に突っ込んでいくロルタプ、テーブルの上にあったグラスやボトルが宙を舞い落下とともに破裂し見るも悲惨な光景がアストレアの目の前に広がるのであった。


「ぎゃぁぁぁぁぁあああああ!?」

「ロ、ロルゥウウウ!?」

「おいロル大丈夫かっ!?」

「………」


 流石にやりすぎたかもと反省するアストレア、どうやらロルは今のドロップキックで気絶したようで実演再会は不能であったのだが、最後の締めくくりとして高らかに声をあげるのであった。


「私はリフィンを守りし蒼きツバサ! 水の聖女を狙う不届きな輩はみなこの剣の露と消えるのだーっ!」

「「「「「うぉぉぉおおお!!」」」」」

「なんだこの蒼きツバサは!?」

「さっきまで生えてなんかなかったよなぁ!?」

「かっこいいじゃねーか!」


 こうして楽しい酒場でのイベントは幕を閉じるのであった。

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