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(水)魔法使いなんですけど  作者: ふーさん
2章 進化する水魔法
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Fランクへの簡単な昇格試験

いつも見て下さる方、ありがとうございます

「という訳で、とりあえずリフちゃんはこの辺にいる魔物を3匹くらい討伐してきてくれ」


 リフィン達は、試験官であるアンマリードに連れられてエルルの森の入り口に居た。

 Fランクに昇格するためには冒険者としての基礎や知識はもちろんの事、依頼達成の実績や戦闘力等が合格基準値を上回れば無事昇格となる。

 まずギルドで筆記テストをしたのであるが流石にFランク昇格試験の内容で難易度が低く、子供でも分かるくらいの問題だったので全問正解でクリアした。

 実績の方はGランクにしては申し分無い成績だった。

 Gランク冒険者の受けられる依頼は、薬草採取や街の中限定の配達、ドブの溜まった溝掃除や死んでいる魔物の解体作業くらいで基本的には危険度が低く依頼達成した時の功績ポイントが低い。

 しかしリフィンの場合はグレンに連れられて難易度が高めの依頼をこなしてしまった為、功績ポイントが多く得られたので、すぐにFランク昇格テストが受けられるようになったのだ。


「アンマリードさん、討伐する魔物について教えて頂きたいのですが」

「特に決まりは無い、何十匹狩ろうが問題は無いが冒険者としての基本を熟知していれば1匹だけでも合格になる時がある。 制限時間は日没までだ、それを超えてしまってここに戻って来れなければ失格だ。」


 リフィンの目の前に立って腕を組み仁王立ちしているアンマリード試験官はまるで騎士のような雰囲気を醸し出していた。 服のボタンをかけ間違えていなければ恰好良く見えるのに残念とは口が裂けても言えないが…


「さっき昼食を食べてからここに来ただけだから日没まではかなりあるが、あまり奥には足を踏み入れないようにしろ…迷子になって野垂れ死なれても困るからな」

「…わかりました」


『まぁオレが空から道案内すれば迷う事は無いんだがな…』

『こういうときタキルは役に立つよねー』

『オレの専売特許みたいなもんだしな、ていうかこれしか出来ん』

『いざという時は頼りにする』

『だねー』


「あと、この発煙筒を持っておけ…魔物との戦闘で危険だと感じたら空に向けて紐を引っ張って使え、わたしが救援に向かう」

「ありがとうございます」


 リフィンが受け取った発煙筒は、火が不要な打ち上げ花火みたいなもので空に向かって発射すると赤い光が飛んで行き居場所を知らせる為のものだ。 リフィンはそれを腰のポーチに収納した。


「まぁインプやバニーマンを倒している実績があるから大丈夫だとは思うが、くれぐれも油断しないように気をつけろ、その腕の細さや身長の低さでは流石に心配する…魔物使い(テイマー)とはいえ個人で魔法が使えればもう少し安心出来るのだがな」

「(水魔法使いなんですけどね)…わかりました、では行ってきます」

「あぁ」


 一応資料(プロフィール)には「無能力者」と記入してあるので、リフィンをただの魔物使いと思っているのだろう。

 しかし「実は水魔法使いなんです」と、あまり公言したくはないのでスルーして、リフィン達はゆっくりとエルルの森を探索する事にした。




● ● ● ● ●




『じゃあタキルお願いね』

『任せろ!』


 早速タキルに飛んでもらって周辺の調査をお願いするリフィン、モグロ草があった所より奥、知らないところに足を踏み込むので大体の地形や魔物の生息地は掴んでおきたかったのだ。


『リフちゃんはウチが守るからね!』

『ありがとポコ、無理はしないでね』

『はーい』


 とりあえず上空のタキルと連絡を取りながらエルルの森を進んで行く、もう少し歩けば単独で行動しているコボルトが居るというが、リフィンはタキルにそのコボルト周辺をくまなく探して他のコボルトが居ないかどうか少し慎重に見回してもらう事にした。


”コボルト”

 犬の顔を持った人形の魔物で、ゴブリンより少し小さいが走るスピードはゴブリンより速め、たまに冒険者が落として行ったナイフ等を持った個体も存在している。 このコボルトは持っていないようだ。


 数分後、タキルから連絡があったがどうやら周辺に他のコボルトは居ないとのこと。


『よーし、じゃあ奇襲かけるか?』

『上手くいけば被害は最小限だね!』

『ううん、コボルトは耳と鼻が良いからね、既に気づかれるかもしれないから奇襲は無理かも』

『あー、まぁ犬だしな』

『ウチもイヌ科の筈なんだけどなぁ…嗅ぎ慣れない匂いばっかりで嗅ぎ分けがまだ出来てないんだ』

『なるほどな…じゃあ普通に遭遇するように進もう』

『あいよー』

『まさに正々堂々だね』


 リフィン達はそのまままっすぐ進んでいきコボルトの居る方向に近づいて視界に捕らえられる距離まで行くと、やはりこちら側に気づいているのだろうかコボルトが警戒してじっと睨みつけてくる、

 リフィンも足を止めてその場で固まりコボルトがどういう動きをとってくるのか観察する。 逃げるなら無理に追いはしないし、襲ってくるなら返り討ちにするだけだ。


「グルルルルル」

「………」


『警戒してんな…』

『うん…』

『………来る!』


 コボルトは小柄なリフィン目掛けて一直線に襲いかかってきた。 しかしこちらは迎撃する準備が既に出来ている。


石礫の弾丸(ストーンバレット)!』


「グギャァァァア!?」


 リフィンの足元に居たポコが土魔法でたくさんの石をコボルトに発射させる、流石に目の前から飛んで来る石ころに反応出来なかったのか方向転換出来ずに頭や目、前足等に直撃すると体勢を崩したコボルトは地面を滑りながら転ぶ、その隙にリフィンは杖を大きく振りかぶってコボルトの頭目掛けて振り下ろす。


「でぇい!」

「グギュゥン…」


 頭を強打したコボルトは脳震盪を起こしその場でぐったりと倒れるが、息はあるのでまだ死んではいない。

 リフィンはすぐに小さなナイフを取り出して首元の頸動脈をスパっと斬って確実に息の根を止め、ついでに血抜き作業を開始する。


『ありがとうポコ、的確に狙ってくれたから簡単に仕留められた』

『いえいえ、まだまだ魔法撃ちたい気分!』

『…オレは?』

『タキルもありがと』

『お、おう…オレも早く戦闘で役立ちたいぜ』

『斥候としてはかなり優秀だよね』

『まぁ、オレみたいな小鳥に警戒する奴なんて居ないだろうしな…猛禽類は勘弁してほしいが』

『タキルはそれだけでもかなり助かってるよ…とりあえずコボルトは荷物になるし一度アンマリードさんの所にもって行こう』

『そうだな』

『りょうかーい』




◆ ◆ ◆ ◆ ◆




「…わかりました、では行ってきます」

「あぁ」


 新人魔物使い(テイマー)ちゃんがエルルの森へと足を運んだ、あとは救難信号が出ない限り入り口でまったりと暇を潰すだけという簡単な仕事だ。

 森の中で派手に戦闘が起きようモノなら小鳥達が騒いで飛び立つから大体の把握は出来るし、まずエルルの森では危険度が高い魔物はずっと奥のほうに行かないと遭遇しない。

 仮に出たとしてもわたしが救援に向かうだけだし、新人魔物使い(テイマー)ちゃんと魔物が遭遇する前に虫が教えてくれる。


「さて、あの子は最初何と戦うのかな?」


 アンマリードは草むらに座り込んで懐から串団子を、バッグからは水筒を取り出してティータイムを開始した。


「んーっ、美味ーいっ!」


 串団子をペロリと平らげ、別の串団子をヒョイと懐から取り出すとまたそれも平らげる。

決して仕事をサボっている訳ではない、昇格試験においてEランクまでは基本的にエルルの森でやり、試験官は冒険者の実力をこそっと影でバレないように目で見る必要があるのだが、アンマリードはここで待機しておく必要があったのだ。


「いやー彼女が魔物使いでよかったわー、鳥とタヌキにバレないように近づくなんて無理があるからねぇ」


 そう、アンマリードがリフィンの後を追っていかないのはリフィンが魔物使いだったからである。

 もし追跡しているのを使役している動物に感知されれば、試験官がこっそりと追跡しているのだとバレてしまうからである。

 しかしアンマリードには入り口でティータイムをしていてもリフィンの行動が手に取るように分かってしまう力を持っていた。


ブ〜〜ン、ピタッ!


 アンマリードの手に小さな黄金色に輝くカナブンみたいな虫が止まった。


「で、最初の敵はなんなのかな? ・・・ふーん、コボルトねぇ」


 ここの森にいるコボルトは基本的に”はぐれ”ばかりで危険度は低い、新人冒険者なら”はぐれ”程度は容易く倒せるが群れで襲ってきたならば別だ。 新人はそういうところに頭が回らずに群れに突っ込んで死ぬ事もしばしばある。


ヴヴヴヴヴ、ピタッ!


 そしてしばらくして別のカブトムシみたいな虫がアンマリードの指に止まる。


「へぇ〜、鳥に”はぐれ”かどうか調べさせてんのか、すげーな」

「…え!? 速攻で倒して血抜き完了してるって!? 戦闘の詳細プリーズ」

「もうこっちに戻って来てるって!? もうちょっとのんびりしたかったのになぁ〜」


 アンマリードは手に付いて居る虫達をそっと逃がしてやると立ち上がってリフィンの帰還を待った。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆




「戻りました」

「おかえり、かなり早かったね」

「タキルとポコのおかげです、私は仕留めるだけだったので」

「そうか、ちゃんと血抜きもしてあるしこれで試験は合か___」

「まだポコが(あと私も)暴れ足りないようなのでもう少し探索を続けても良いですか?」

「あ、あぁ…いいだろう」

「では行って参りますね」

「…流石高難度の依頼を火災児(グレン)とペアとはいえ達成しただけはある………ティータイム延長戦突入!」

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