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(水)魔法使いなんですけど  作者: ふーさん
2章 進化する水魔法
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微かな独占欲

 銭湯にてアルモニカに関する情報を得たリフィン達は<あけぼの亭>に戻りゆっくりしていた。

黒の帽子とローブ、洋服や下着一式は洗濯して今は干してある為、リフィンは予備の服を着用する。


『リフちゃん可愛い服もってるねぇー』

『いつも帽子被ってるから新鮮だな…』

『うん…ありがと、冒険に出る格好じゃないけど、報告に行くだけだから問題はないよね?』

『ちょっとウチじゃ分からないかも、この世界の常識を知らないから何とも』

『オレもだ、流石にわかんねぇけど、似合ってると思うぜ?』

『うん!めっちゃ可愛い!』


 今リフィンが着ている服は上はシャツのように襟首があり袖がないタイプで、腰にはくびれが見えるように腰紐が締められていて、膝下まで丈のある紺色無地のワンピースだ。

 後ろ髪はいつもローポニーだが、今回は腰までストレートにのびている。

 リフィンがおかしくないかとタキル達に聞いたが、流石にこの世界の常識を知らないのでアドバイスは頂けなかったが、似合っていると言われて少し嬉しくなるリフィンであった。


『そろそろギルドに向かわないとね…あ、インプの魔石忘れないように入れておかないと』


 リフィンが持っていたバッグも地下水路の臭いが少しついていたので洗って干している為、お出かけ用の白いポーチに必要な荷物を詰め込む。

 用意が出来たので部屋を出ようとすると、タキルが『このスライムはどうするんだ?』と聞いてきた。


「うじゅるうじゅる…」


『…悪さされても、見つかっても困るし一緒に連れて行こうか』

『お、おう…』


「うじゅるる!」


 リフィンは肩にスライムを乗せると、スライムは落ちないように大人しくなる。 タキルが『オレの特等席を!?』と嫉妬したが、リフィンの柔肌を足で傷つける事を良しとしなかった為か、リフィンの反対側の肩には乗らず、ポコの背中に乗り移った。


『いや飛んでよタキル…』

『ずっと飛んでたら疲れるから乗せてくれポコ』

『贅沢な鳥め!』

『ポコめっちゃモフモフやなぁ!』

『…まぁいいかー』


 そうしてリフィン達は冒険者ギルドに向かうのであった。




● ● ● ● ●




 冒険者ギルド、アルモニカ支部に到着したリフィン達は、扉を開けてカランカランと乾いたベルの音を鳴らした。

 少し早かったのか辺りを見回してもグレンはまだ居ないようだった。 受付の窓口にはまだエルザが居て、珍しく男性冒険者達と何かやり取りをしていた。 仕方無いので他の受付に回ろうとしたリフィンであったが、残り2つの窓口には受付の人間が居ないのか閉鎖されていた。

 たとえ受付が空いていたとしてもまだグレンと合流していないので報告するのはもう少し待つ必要があったし、どうせならエルザに報告したいのでエルザが対応している7人の男性冒険者達のやり取りが終わるまで待っていると、1人の男性冒険者がリフィンに気が付いて近寄ってきた。


「お? 見ない顔だな嬢ちゃん、こんな時間に何か用事か?」


 大きな体をした40代くらいの怖い顔をしたヒゲもじゃの男性が軽い口調でリフィンを気にかけてくれた。 先ほどまでエルザと話していた冒険者達の一人だ。


「…今は人待ちしてるとこです」

「そうか、なんて奴だ? ここに居るなら呼んでっ!? おぅら危ねぇえええ!!!」

「っ!?」


 ヒゲもじゃ男は、リフィンが振り向くと肩に乗っているスライムを発見、即座にスライムを払おうとするが、リフィンはスライムを守るように肩を引き、大男から距離を取る。


「あ、危ないじゃないですか!?」

「肩のスライムの方が危ねぇぞ嬢ちゃん!?」

「…あ、このスライムは危険ではないので大丈夫です」


 目の前にいるヒゲもじゃ男はリフィンの身の安全を考えてくれたのだろう、しかしリフィンの肩に乗るスライムは危害を加えないので要らぬ心配だと語ったのだが、それを信じられないヒゲもじゃ男は構えた状態で「え?」と驚いた。

 そんな光景を目にしたのか、ヒゲもじゃ男の後方に居る受付から野太い声や明るい声などが聞こえてきた。


「ちょっとロディ、アタシを差し置いてリフちゃんに迫るなんて酷い男ねぇん!」

「ばっか! そんなんじゃねーよボケェ!」

「なんすかロディさん、また女の子いじめてるんすか?」

「いじめてねぇよ! どうしたらそう見えるんだよ!」

「ふっ、荒くれロディの異名は老いても健在じゃないか」

「誤解だ! スライムが乗っかってるから払おうとしただけだ!」

「こんなとこにスライムが居たら大騒ぎっすよ? 何言ってんすか?」

「言い訳が見苦しいぞロディ、ちゃんと謝っておけよ」

「だから誤解なんだよオメェら! マジで1発ずつぶん殴るぞ!?」


 ロディと呼ばれた大男はただリフィンを守ろうとスライムを払おうとしただけの様であるが、端から見ればリフィンを襲っているように見えた為、そう言われても仕方が無い事であった。


『なんか可哀想に見えてきたな、このデカブツ野郎』

『そうだねー、リフちゃん助けてあげて、このヒゲもじゃ荒くれおじさん』

『…タキルとポコも大概よね』


 ヒゲもじゃ男、ロディが可哀想になってきてリフィンは誤解を解く為に、エルザの前に歩いて行ってスライムを紹介する事にした。

 リフィンが前に出ると、スライムを目撃したエルザや他の男性冒険者達も驚いてはいたが、ロディのようには襲って来なかった。


「リフちゃん、そ、それって…」

「はい、スライムです…他のスライムと違って綺麗好きなスライムなので襲ってきたりはしません」

「リフちゃんには脱帽だわぁん…」

「あの危険なスライムを手懐(てなづ)けるとは、すごい魔物使い(テイマー)だな…」

「…かわいぃ」

「鳥とタヌキも居るぞ!?」


 凄そうに見られても困るだけである。 リフィンが困惑していると30代くらいの冒険者がリフィンの目の前に立って自己紹介を始める。


「俺は黒剣(ブラック・)の集い(ギャザリング)のリーダー、シックだ…ランクはB、アルモニカ支部の教育係をやっている者でもある。」

「…私はリフィンと言います、先日冒険者になったばかりでGランクですがよろしくお願いしますシックさん」

「…え?」

「冒険者だと!?」

「まじかよ!?」

「冒険者の格好には見えないな…」

「そ、そうか…ちょっと俺達は数日間遠征に行っててな、今帰ってきたところなんだ。 明日でも良かったら俺達が冒険者の心得を教えて___」

「その必要はない!」


 シックの言葉を遮って数時間前まで一緒に居た声の主が、ギルドの入り口からズカズカと歩いてきた。


「グレン…」

「こいつの教育は俺が見る、お前達は心置きなく次の遠征に向かってろ」

「誰かと思えば例の問題児か、貴様にこの子の教育が出来るとは思えんがな?」


 リフィンの目の前でグレンとシックが睨み合う。

 なんでこんなに仲悪いのかと思ってしまうが、グレンは元々口が悪く上の者に噛み付いて行く性格で、それは学生時代からそうだったのだ。

 ここのギルドでも性格は変わっていないのであろう、上の者に噛み付いていった為にシックに問題児と呼ばれていた。 そういえばエルザもグレンの事を「性格に難がある」と言っていた事も思い出すリフィンだった。



「はーい、ここでは私闘禁止よぉん! 暴れたいならアタシと踊ってくれないかしら?」

「…ちっ」

「やめてくれエルザ、妻に怒られる…」

「あらぁん、情けない男達ね…グレンとリフちゃんは依頼の報告よね?」


 エルザに言われ、ちょうどグレンも来た事なので依頼の報告をする為に受付に向かうリフィン。

 シック達、黒剣の集いはリフィンに「こいつに酷い事されたらすぐ呼ぶように」と告げるとゾロゾロと帰って行った。


「大きなお世話だってんだ…」

「…昔から変わってないのね」

「お前もな…見知らぬ相手とかには愛想良くするのに」

「…ただの処世術だし」

「っていうか何だよその格好は、冒険者ナメてんのか?」

「…少しくらいお洒落だってする」

「うふふ、2人は仲が良さそうでアタシ安心したわぁん…依頼人から報告が届いてるけど、地下水路のゴミ詰まりは解決したのよね?」


 エルザが聞いてきたので、どちらが話す? とリフィンはグレンをチラ見すると、はぁぁっ…とため息をついたグレンがエルザに話しだした。


「まぁな、インプが数体居たけどな」

「そういえば! 依頼人からの報告では、汚泥処理施設に数十体のインプの死体と大量の巨大スライムが流れてきたって事よぉん? 中で何があったの?」


 リフィンとグレンは大量の巨大スライムなんて見た覚えがなく、目を合わせるリフィンとグレンだったが、やはり記憶の片隅にも巨大なスライムなんてものは無かったので正確にエルザに伝える。


「水路を止めてたのはインプの仕業だろうな…何か計画を企んでいたようだが、ゴミ詰まりを処理したら計画が台無しだとか言ってきて襲ってきたぞ」

「うそぉん、リフちゃん怪我はしてない大丈夫?」

「だ、大丈夫です…はい」


 エルザが窓口から身を乗り出してリフィンに聞いてきたので、少し仰け反りながらも怪我は無いと伝える。


「大量の巨大スライムというのは見ていないな…沈砂池(ちんさち)でリフがこのスライムを拾ったくらいだ」

「ふーん、沈砂池でねぇん…」


 エルザはリフィンの肩にいるスライムを見て言う、グレンはもう1つ重要な案件をエルザに言い放った。 これに関してはリフィンはすっかり存在を忘れていた案件でもあった。


「ついでにこれも報告だ、インプが水路を塞いでいた石材なんだが、地下水路の天井の石材だろうな…天井に蜘蛛が無数に張り付いていて、石を落として穴に巣を作っていた」

「あら本当? それは役所に言わないとヤバいわね…」

「あぁ、蜘蛛の駆除と補強工事をしないと街が危険だ」


『…すっかりその事忘れてた』

『おいリフ、忘れんなよ』

『リフちゃん1人だったら報告し忘れるところだったね』

『ん、気をつける…』


 エルザはふむふむと報告を頭の中で整理していく、腕を組むエルザはそれだけでボディービルダーのように美しい筋肉が盛り盛りと起伏していて、リフィンの隣に立つグレンの腕と見比べてみる…


「見比べんな」

「あ痛てっ」


 どうやらエルザの腕とグレンの腕を見比べていたのがグレンにバレてしまったのか、軽く頭を叩かれると「インプの魔石はどうした?」とリフィンに訊ねる。

 忘れるところだったと、リフィンは白いポーチから魔石を取り出してカウンターにゴロゴロと置く。


「エルザさん、インプの魔石を持ってきたのですが換金お願い出来ますか?」

「あら本当? ひぃふぅみぃ………15個もあるわねぇ、実際はもっと居たんじゃないかしら?」

「結構いたぜ? 狭い通路で挟み撃ちされたしな」

「そう、リフちゃんはよく頑張ったわね」

「はい、ベスト8ですからね」

「くはは、そういえばベスト8だったな、あの悲惨な、今思い出したら…くははっ!」

「………」

「そういえば2人は知り合いらしいけど、どういう関係なのかしら?」

「…そ、それは」

「俺から言ったら怒るだろうからな…オカマ、聞きたいならこいつから聞け…くははっ!」


 リフィンの清算したい過去の物語は、まだグレンに覚えられていて顔を赤くしてうつむくリフィンだった。 そんなリフィンに気を使ってか「リフちゃんが話したくないのであれば無理には聞かないわぁん」と言って、魔石を持ってバックルームにお金を換金しに行ったエルザであった。


「…なんでまだ覚えてるのよ」

「あれは今でも伝説になってるからな…俺の中では」

「………」


『リフ、なんの話だ?』

『知ってて聞いてるでしょ?』

『まぁな、人には黒歴史の1つや2つは…』

『ご飯抜きね』

『ただ興味が湧いたから聞いただけなんだぁ! 勘弁して下さい!』

『ウチね、タキルがわざとやってる気がしてならない時があるんだよねー…』

『そこはざまぁ!って言うところだろ…』

『…そだねー』


 その後エルザから今回の依頼の報酬金と魔石換金分のお金を受け取ったグレンはリフィンにその半分のお金を手渡した。

 半分とはいえ、もともとの金額が薬草採取の何倍もあったのでかなりの金額を渡された事になるが、リフィンが驚いていたのはグレンが報酬の半分を渡してくれた事についてだった。


「それはお前は俺が認めたみっ…冒険者だから当然の事だ」

「…ありがと」


 まだここはギルド内で他の人に聞かれたらまずい為、水魔法使いという言葉は使わずに冒険者という言葉を選んでくれたグレン。 彼は彼なりの流儀を持っているようでこういうところには気を使うのだなと思ったリフィンであった。


「明日の朝、また来い…」


 ぼそりとリフィンに呟いたグレンはそう言ってギルドの外に出ていき、暗い夜道へと消えて行った。

黒剣の集い(ブラックギャザリング)

アルモニカ随一の冒険者パーティ

シック(リーダー、闇魔法使い)

ロディ(荒くれヒゲもじゃおじさん)

クリス(光魔法使い、イケメン司祭)

ロルタプ(風魔法使い、元気な斥候少年)

エドモンド(寡黙な土魔法を使う剣士)

ジェームス(高齢の鍛冶師)

マシュー(火魔法使い、ジェームスの弟子)


今後出てきます。

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