スライムと銭湯と
女湯覗いたらタイーホです
「取れた魔石は15か…結構多いな」
「それなりに売れそう」
インプの何体かは戦闘中に水路にシュートしてしまったが、通路に残ったインプ達の死体を解体して魔石を取り出した。
魔石は魔法を使う魔物等が体内に保有している事が多く、宝石としても魔道具の燃料としても重宝されるので高値で取引されている。
魔法を使う人間にも魔石は存在しているが、魔石を狙った人間狩りはたとえ奴隷であっても法律で禁止されていて、死んだ人間から魔石を取り出すことも一部例外はあるが禁止されている。
魔石が体内のどこにあるのかといえば、個体差はあるが大抵は心臓付近に存在しており、無駄に四肢や首を解体する事はない。
まだ水路の流れはゴウゴウと荒々しく流れており勢いを失っておらず、通路に転がっているインプ達の死体を水路に放り込むとインプ達の死体はゆっくりと流れて行った。
リフィンはインプ達から取り出した血まみれの魔石と、解体する時に手や腕に付いた血を軽く水魔法で洗ってからバッグに収納すると、同じく解体作業をして血まみれになったグレンの腕を見る、リフィンは洗い流そうかと聞いてみたが。
「…いや、今はいい」
と言われた。
『………』
『まぁ良いんじゃないか? 本人がそう言ってるんだし』
『ウチも洗ってー、体中くっさい!』
『ここで洗ってもどうせ臭いからもうちょっと我慢しようぜ』
『タキルは汚物にまみれてないからそんな事言えるんだよ!』
『悔しいのぅ』
『ムカーっ! いつか焼き鳥にしてあげるから覚えてろよ!』
『手を洗う為だけに水魔法は使ったのは良くなかったかな…まだ進む訳だし』
『じゃあ我慢した方がいい?』
『…ううん、洗ってあげるからこっち来て、病気になっても困るし』
『やった!』
リフィンはこの先にあるインプ達の進めていた計画というものを確認しなければならないので今は少しでも温存するべきだと感じたが、ポコを変な病気に感染させない選択をした。
『ふぅ~さっぱり! リフちゃんありがと!』
『どういたしまして、もう少し頑張ってね』
『らじゃ!』
洗い終わったポコは全身を震わせて水気を飛ばす、探索準備は整ったのでグレンに目配せする。
「リフ…インプが言ってた事、覚えてるか?」
「計画が台無し、とか言ってた」
「少し気になる事がある、気を付けて進むぞ」
「…わかった」
グレンもやはり気が付いていたのであろう、なぜこの地下水路にインプが存在して何の為に水路を塞いでいたのかを…
リフィンはグレンに着いて行き地下水路の奥へ進む、未だ勢い良く流れる水路の音だけが鳴り止まず黙々と歩いて行くうちに、リフィン達は巨大なドーム状の部屋にたどり着く。
そこには泥や汚水が入り乱れ渦巻いており、その中心部の上から数本の巨大な管が何本も顔を覗かせていて汚水を吸い込んでいた。
「うわー…」
「ここが地下水路の終点だ、特に怪しいものはないか」
「グレン、あの大きな管はなんなの?」
「あぁ…あれは汚水を吸い上げる管だ、ここは汚水の中に含まれるゴミや砂を分ける作業を行う部屋になっている」
「…初めて見たから分からなかった、ここが沈砂池なのね」
「勉強は出来ても実際に見る事は無いからな」
「そうね…」
沈砂池、グレンの言う通り汚水の中に含まれるゴミや砂を取り除く場所の事である。 ゴミや砂は汚泥処理施設に流れて行って焼却される。
悪臭に包まれるこんな空間で、インプ達はここで何をやっていたのか分からないが、「そういえば」とリフィンがインプの言葉を思い出す。
「計画が台無しという事は…もう計画が潰えたという事かな?」
「…そうかも知れないな、流石に素人目線からでは理解が追い付かん…帰って報告だな」
「うん」
リフィン達によってインプ達は殲滅され、リフィン達の知らぬ間にインプ達の計画は潰えた。
これ以上何を求めよう、それは即ち地下水路からの脱出である。
『何も無かったな』
『だねー、何も無くて良かったけど』
『…やっと出られる』
リフィン達は帰ろうとして後ろを振り返った時、リフィンはわずかに感じる魔物の気配を感じグレンに静止をかける。
「待ってグレン、何か居る…」
「…」
『まじかよ!?』
『ウチもわかんない…』
グレンが周囲を見渡す、キョロキョロとしてグレンも何の気配を感じていないようであるが_
リフィンには分かる、それは水魔法使いとしての直感なのかは分からないが、近くに蠢く小さな気配を感じ取っていた。
「…何もいないようだが?」
「………居た!」
リフィンは沈砂池の隅にある比較的綺麗な場所に近づいて行く、グレンらは何も気配が感じられずリフィンの背中をただ見守る事しか出来なかったのだった。
『リフちゃんなんで分かったんだろ?』
『さぁ、ポコの鼻では分からなかったのか?』
『今は鼻効かなくて口で息してるん』
『あぁ…鼻が詰まったのか』
「リフ、何か居たのか?」
「居たよ…スライム!」
スライム、アメーバ状の魔物で、ドロドロした液体に近い透明な生物の事だ。
スライムは酸性であり全身が消化粘液に等しく、接触または取り込んだものを溶かして消化する実は危ない生物で、体内に取り込んだものと同様の造形に変化する事も出来る。
そんなスライムをなんとリフィンは両手で掴んでニコニコしながら戻ってくる。 スライムの大きさはサッカーボール程度であり、うじゅるうじゅると震えていた。
触れるだけでも危険なスライムを面白そうに素手で持ち運ぶリフィン、その光景に驚愕し顎が外れそうな勢いで呆然としたグレンだったが、すぐリフィンにスライムを手放すように怒鳴る。
「馬鹿リフ! そいつは危険だ! 今すぐ手を放せ!」
「このスライムは危険じゃないよ」
「手が溶けるぞ!? 骨まで食われるから早く捨てろ!」
「大丈夫、この子は綺麗好きだから」
「…は?」
『『…え?』』
● ● ● ● ●
「水生成!」
「うじゅるうじゅる!」
「おー、より透明になっていく」
「…普通、スライムって言ったら危険な魔物なんだが」
現在、リフィン達は地下水路の出口に向かっているところだ。 水路の水の流れは少し緩やかになっており、地上ではすでに雨が止んでいるのではないかと感じる。
あれからスライムを触り続けても何ら危害をリフィンに与えない為、リフィンはスライムを持って帰る事にした。 魔法で水を与えると吸収し、だんだんと透明になっていきリフィンに懐いたのかご機嫌麗しくプルプルと震えていた。 そんな光景にグレンやタキル、ポコは引いていた。
「本当に大丈夫なのか? 俺が知ってるスライムとは訳が違うんだが?」
「この子は汚いものを取り込むのは嫌なタイプのスライムのようね、私も本でしか読んだことないけど実際に存在するとは思いもしなかったよ」
「そうか…」
『なんかオレが想像してたスライムと違う…』
『どうみてもアメーバだよね…』
『青くないし、顔もないし、頭のとんがりもない…』
『あるのは中にあるコアっぽいのだけだね…』
うじゅるうじゅるどろねばぁ
「…俺が触っても平気なのか?」
「グレンは駄目、手が汚れたままだから嫌がるかも」
「…」
リフィンの拾ったスライムは綺麗好きらしく、なぜ沈砂池に居たのかは不明であるが、リフィンの手が溶けないのは敵意を持っていないという事だ。
本来、スライムは対象物を溶かして体内に取り込み消化して無限に大きくなっていくものであるが、このスライムはまだ小さく、色も透明なので汚いものだらけの地下水路では何も吸収しては居ないようだった。
そしてスライムは厳密には魔物ではなく動物に近い存在であるが、そのほとんどは意志を持たず本能によって行動している。 しかしリフィンが拾ったスライムは襲いかかる事も無くリフィンの手の上で大人しく震えている事から、自ら意志を持って行動しているようにも見える。
地下水路の出口を目指して歩いていたグレンは、先程の戦闘でリフィンが水魔法を使っていた事についてずっと頭から離れておらず、聞こうとしていたのだがスライムの件で聞くタイミングを失っていた。
今はこれといった会話も無くただ歩いているだけで、地下水路の出口まではまだ距離もあるのでリフィンに水魔法について聞いてみる事にした。
「リフ、さっきの水魔法の事で聞きたい事があるのだが」
「…あー、うん」
グレンが声をかけて振り返ると、後ろを歩いていたリフィンはどう説明しようかと困ったような顔をして立ち止まる。
新人冒険者のリフィンが水魔法使いであったと、世間一般に知られるようになったら今後どうなっていくのか語らずとも分かりそうなので、言いにくい話だろうなとグレンは思いつつも、当時学生だったリフィンが無能力者だったにも関わらず魔法の知識だけは豊富だった理由が知りたかったのだ。
「リフは、いつから水魔法が使えるようになったんだ?」
「………」
『どうしよう、本当の事を言うべき?』
『戦闘時に魔法を見られたし、さっきも手を洗う時に魔法を見せちまったしな…』
『…あの時はほら、水魔法無いと私戦えなかったから仕方無いし、手を洗った時も警戒心解いていたし』
『手品だったっていう感じで誤摩化せは…無理だよねー…』
『水使いって事公表されたらやばいと思うぜ?』
『うーん、どうしよう…』
グレンは少し待ってみたものの、リフィンからの返事はなかった。
リフィンの困った顔は次第に難しい顔に変化していき、言いにくい事なのだなとグレンは予想した。
「だんまりか…言いたくないなら無理に言わなくても良い、帰るぞ」
「っ!」
そう言ってグレンはまた地下水路の出口を目指して歩いたのであった。
● ● ● ● ●
『やっと出れたぜ…』
『ウチもう入りたくない…』
『…同感』
リフィン達はようやく地下水路から脱出するとやはり雨は止んでおり、人気のない裏路地とはいえ、夕日によって真っ赤に染まっていた。
地下水路に入ったのは朝だった為、かなり長い時間地下水路の中にいた事となる。
「俺は一度宿に戻って風呂に入る、流石にこのままギルドには顔を出せないからな」
「うん、私も銭湯に入らないと流石に…」
「ギルドに顔出すのは今から3時間後にする、それまではゆっくりしておけ…じゃあな」
「グレン待って!」
グレンもさっさと宿に帰って体を洗いたかったのだろうざっくりと時間を決めてリフィン達と別れようとした。 リフィンもすぐ体を洗いたかったが、二人きりになれる場所はここを逃すとなく、今しかないとグレンに呼びかける。
「どうかしたか?」
「………あの、水魔法の事バラされると困るし、その…本当は、本当の事言うつもりじゃなかったんだけど、グレンになら教えても良いかなって思って…」
「………」
「水魔法の事、全部教える」
リフィンがじっとグレンを見つめる、グレンは聞く気になったのであろうかその場でコクリとわずかに頷きリフィンの話を待つ。
「私は子供の頃から水魔法が使えたの、お姉ちゃんも水魔法使いで一緒に仲良く暮らしていたんだけど…ある日、お姉ちゃんが水魔法使いだって事がバレて国家公務員の人達に連れて行かれたのを見たの…私をかばって、それに恐怖を覚えた私は水魔法を封印した。 お姉ちゃんはその後軟禁生活、しばらく経たないうちにお姉ちゃんが異変を感じて1つのお願いを私に託したの…」
「………」
「そのお願いは、水魔法の効力と出力低下の原因を探して、というもので調べていく内に世界規模で発生していると私は結論づけた」
「…何!?」
グレンはリフィンが何の事を言っているのか未だに掴みきれていない様子だ。 初めて聞くであろう言葉に動揺を隠せなかったようだった。
「…グレンは水魔法使いじゃないから知らないのは当然、これは他の水魔法使い達も知らないと思うし、論文はもみ消されたから全然噂にもならない」
「ちょっと待て…簡単に言うと、世界中の水魔法の力が弱まっている…ということなのか?」
「そういう事、その原因を探す為に私は魔法学校でずっと魔法の勉強をした。 先生や生徒の中に水魔法使いなんて居なかったし、水魔法の力が弱まっているなんて誰も知らないから、私は1人で魔法の勉強をするしかなかったの」
『リフちゃんすごっ…』
『オレは聞いたけどな』
『ずっる!』
「水以外の事も勉強した、魔力の練り方と原理さえ分かればグレンに教えたフレイムバーストのように理論を完成させる事も出来た。 しかし水魔法はいくら魔力を練っても、原理が分かっていても、沸騰させたり凍らせる事は出来なかったの」
「…インプとの戦闘時、水を氷にしていたよな?」
「さっきのは私もびっくりだけど………私は魔法学校を卒業して、水魔法の力が低下する原因を探るために魔法科学研究員になって1年の実験と検証を経て論文をそこで書いた、でも装置開発ばかりで水魔法の研究は話題にあがらず、研究員としていられなくなったから、お姉ちゃんや他の水魔法使い達の為に冒険者になって世界中を回り水魔法の力の低下を探す事にした。」
「また大きく出たな…すげぇ覚悟だ」
「アルモニカに来る途中でタキルを助けて、エルルの森でポコと仲良くなって、実は昨日…水の女神様から私の中に眠る力を目覚めさせて貰ったの」
「………は?」
目を白黒させるグレンの顔は今まで見た事のない程に間抜けな顔をしている。 いきなり話が飛躍しすぎて、しまったと思ったリフィン。 風の神や火の女神と出逢った事も説明が難しいので、分かりやすいように話を少し改竄して説明する事にした。
「えーっと…水魔法の力が低下している原因は、水の女神様の体調が優れないのが原因らしくてね…水への信仰が増えれば治るとは言ってたけど、今のご時世では水魔法信仰なんてあり得ないからね…」
「…話が飛躍しすぎてよく分かっていないが、水魔法使いは奴隷扱いだから信仰される事はない、そうなると水の女神は体調を崩して弱体化、弱体化すると水魔法が弱くなる。 という事か?」
「そういう事になる、私は水の女神様のおかげでさっき初めて水を氷にする事が出来たの」
「なるほどな…どうやって水の女神と出逢ったなんて事はいちいち聞かないから安心しろ、守秘義務ってやつだろ?」
「あ…うん」
案外物分かりの良い人なのか、一番面倒な女神と出逢うまでの経緯を説明せずになんとか済んだリフであった。
しかしグレンは強い眼差しでリフィンを見つめながら問いてきた。
「で、お前はその力でどうするつもりだ?」
リフィンの中に眠っていた力を、水の女神シズルは目覚めさせた。 グレンはその力をどのように使うのかと聞いてきたのだ。
リフィンはこれから何の為に力を振るうのだと、グレンはリフィンの真意を聞く為に…
「…私は、姉や他の水魔法使い達を助けたい、それは前から1つも変わっていない…水魔法への信仰はほとんど無いに等しいけど、今の私に出来る事は…私自身が強くなる事!」
「…」
「だからそれまでは、私が水使いということは内緒にしておいて欲しい…」
リフィンはグレンがお金に五月蝿い事は知っていた。
もしグレンがリフィンを水魔法使いだとバラして捕まえれば、グレンには懸賞金が貰えるのでグレンとしては棚からぼた餅であろう。
一応冒険者という身分があるのでこの国の法律ではそうなる事は低いだろうと思っていたリフィンだが、流石に他人の心までは読めないのでグレンにバラさないようにお願いするのであった。
「俺が何で水魔法使いだとバラす必要がある?」
「…それは、水魔法使いを捕まえたら懸賞金が出たりするから」
「くははっ、もしそうなら今頃リフは檻の中だな…だが、何も言わないから安心しろ」
どうやらグレンはリフィンが水魔法使いという事は内緒にしてくれるようだった。 エルザに守銭奴とか言われてたからてっきりバラされるのでは無いかと思っていたリフィンだったのだが、ただの勘違いだったようだ。
「どうして?って顔してるな、まぁ俺が金に五月蝿い守銭奴というのはもうしばらくは本当だ…だが俺は、俺が認めた奴には敬意を払う事にしている。 もちろん貶めるような事はしないさ…そしてお前は俺が認めた水魔法使いだ、そこらへんの水魔法使い達とは違う生き方を選んだお前は敬意を払うに値する。」
「…っ!?」
リフィンの後ろにある夕日が、壁の隙間からグレンを紅く照らす。
あのグレンに敬意を払うとかなんとか言われて驚き混乱していると、陽に照らされた汚れまみれのグレンはリフィンに指を指してもう一度同じ事を伝えた。
「…もう一度言う、お前は俺が認めた水魔法使いだ! 俺からバラすことはないと約束する」
「あ、ありがと…」
「全く、泥だらけのまんまで長話しやがって! 」
「お風呂に入らないとね…」
「俺はとっとと帰る、じゃあな」
「うん、また後で」
兎にも角にもリフィン達は身体中から臭い臭いを放っていたので一度宿に帰ってから着替えを用意して、公衆浴場…いわゆる銭湯へと向かう事にした。
グレンは自宅に風呂場があると言っていたので、一旦ここで別れて、夜になってから冒険者ギルドで会う事にした。
● ● ● ● ●
~銭湯~
「…あの、タヌキ入れても大丈夫ですか?」
「不味そうなタヌキ連れてるじゃないうんこ臭いの、ペットか何かかい?」
「…はい」
「別料金頂くよ、湯船には入れないように」
湯船には入る事は出来ないが別料金さえ払えば大丈夫だと、番台のおばあさんに言われてほっと安心するリフィンとポコであった。
タキルとスライムはリフィンのバッグの中に封印されており、めそめそと一羽悲しみに涙を流していた。
リフィンは服を脱ぎ、ポコと浴場に向かうと多くの女性が入浴を楽しんでいた。
『おおー』と浴場を眺めるポコだが服を脱いだリフィンはそれでも自分の臭さに気が付き、そそくさと洗い場に向かった。
『あー、リフちゃん様様~』
『…ポコ、今日はありがと、おかげでインプに対処出来た』
『いえいえどういたしまして、ちょっと怖かったけどリフちゃんの為ならウチ頑張れるし!』
『ポコのアドバイスが無ければ水を氷にする事なんて出来なかったよ』
『今までは魔法で氷作れなかったの?』
『…うん、私がいくら頑張っても氷には変化しなかったから諦めてたんだけど、まさか使えるようになっていたとはね』
『水の女神様との一件で使えるようになったのかな?』
『…多分そうだと思う』
ゴシゴシとポコの体中を洗うリフィン、そんな光景を周囲にいた子供達は興味深く眺めていて、ポコが洗い終わるのをまだかまだかとリフィンを見つめていた。
「お姉ちゃん何あらってるのー?」
「動物だ動物!」
「犬!お姉ちゃん犬だよね!?」
「尻尾おっきい…」
「…えっと、洗い流すからね」
『はーい』
「「「「はーい」」」」
リフィンは桶で少しずつお湯を流してポコについた洗剤を洗い流す。 それを数度繰り返してポコに「おわり」と告げるとブルブルと体を震わして水気を切るポコに近くにいた子供達がキャーキャーと喜びだした。
「犬じゃなかった! たぬきだー!」
「いっぱいブルブルした!」
「すっごい可愛い! なんて名前?」
「お姉ちゃんちいさいのに意外とおっきい」
「えぇ!?」
目を輝かせながらリフィンに質問したり、ポコに抱きついたりするパワフルな子供達に驚きながらリフィンはポコの名前を教えてあげた。
「えっと…この子はポコっていうの、可愛がってくれるのはありがたいけどお風呂場だから気をつけてね」
「ポコっていうんだ! 可愛い!」
『リフちゃん、ウチどうすればいい?』
『…とりあえずお人形さんみたいに固まってて』
『らじゃ…』
オモチャの様に遊ばれるポコには悪いが子供達に悪意はないので少しの間だけ我慢してもらう事にした。 しばらくすると、ギャーギャーと賑やかになった洗い場に気が付いたのか、子供達の母親が顔を覗かせにきたようで、母親達の姿が見えると少し声のトーンを抑えてポコで遊ぶ子供達にリフィンは少しだけ笑みがこぼれた。
子供達の母親はリフィンに近づくなり、笑顔で声をかけてくれた。
「あらぁ、うちの娘がごめんなさいねぇ」
「い、いえ、ポコも楽しんでいるようですし、子供たちも喜んで頂けたのでよかったです」
「しかしあれは食用タヌキかい? 珍しいものを飼ってるね」
「食用ではないです、友達みたいな感じですので」
「見かけない顔だけど、冒険者なのかな?」
「はい、つい先日冒険者になったところです」
「かわいい冒険者さんがいたものねぇ、そんな男に愛されるような身体してやっていけるのかしら?」
「…あ、ありがとうございます、頑張ります」
男に愛されるような身体とはどんな身体なのかはリフィン自身はよく分かっていないが、冒険者として心配された事に対しては素直に感謝するリフィンであった。
ポコにじゃれあう子供達と、新顔のリフィンと会話を弾む母親達と、リフィンのお尻をペチペチ叩く子供が1人。
母親達の世間話を聞かされていると「そういえば」と1人の母親がリフィンに言葉をかける。
「女で冒険者っていう事は、虹百合のパーティに加入するつもりなのかしら?」
「あぁ良いわねぇ! あそこは女性冒険者しか居ないからおすすめよー!」
「虹百合…ですか?」
「あなた知らないで冒険者になったの? 女性だけの冒険者パーティなのに強くて凛々しいからこの街では有名なのよ!」
アルモニカの冒険者での知り合いはグレンだけなので、他のパーティの事は全くと言っていい程無知だった。
虹百合というパーティは有名なのか、一般庶民の人でも名を轟かせているようであった。
「その話、少し詳しく聞かせてもらってもいいですか?」
「えぇもちろんよぉ!」
「立って話すのも何だし、湯船に浸かってゆっくり話そうじゃないの!」
● ● ● ● ●
『なんでオレだけ風呂に入れないんだ? オレもちょっと臭うから洗ってくれぇ!!』
決して女湯を覗けなかったのが悔しい訳ではない…タキルはそう心に念じ、バッグの中でリフィン達の帰還を待っていたのであったが…
うじゅるうじゅるどろねばぁぐちゃあ!
「なんでオレがスライムとヌルヌルプレイしなきゃならねーんだよぉおお!!! やめろぉおオレにまとわりつくなぁああああ!!!」
うじゅるうじゅるどろねばぁぐちゃあ!
『あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!』
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『タキルざまぁ!』
『オレが悪かったです、許して下さい』
評価、感想お待ちしております。




