↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ONE WEEK  作者: K
PR
12/31

金曜日 3

美織は、待ち遠しい気持ちを自覚しながら、マンションに戻った。

はたして、食卓には、美織が、昨日、大量に購入した、もも肉のから揚げが、大量に鎮座していた。

違うのは、

「おかえりなさい。」

成哉が、起きていたことだった。

この、数日、毎日、寝るだけの生活をしていた成哉は、すっかり元気になっていた。

「怪我の様子は?」

「まだ、痛いけど、だいぶ楽になってきたよ。」

「記憶は?」

「全然。」

成哉は、相変わらず呑気だった。

「病院、行ってみる?」

成哉を病院に行かせていないことは、気にはなっていた。

自費だったら、どれくらいかかるのかわからない恐れと、赤の他人に、それだけのことをしてやらなければならないのかという、常識的な葛藤があって、無理矢理行かせようとはしていない。

成哉も、無理して行こうという気配はなかったが、それは、単に、今までは、頭の怪我がきつくて、動くのが億劫だっただけかもしれない。

本来ならば、CTとったり、精神科に行ったりしないといけないのかもしれない。

身内だったら、絶対、そうする。

そうしなかったのは、成哉の得体が知れなかったからにつきる。

お金のことは、おいといて、倫理的に、病院に行かせるべきなんじゃあないだろうか?

けれども…。

それで、記憶を取り戻した時、成哉が、どう変貌するのか、それも怖い。

そう思っていると、

「ああ、別にいいよ。」

と、あっさり、成哉が言う。

美織が100考えている間に、成哉は1しか考えない。

今しか見ない成哉の判断は、直感のようなものでしかない。

行かないという判断も、次の瞬間には、あっさり行くことにもなる。

今の判断は、今のもの。

次の判断は、次の今のものなのだ。


「美味しい?」

美織が、用意していたから揚げにぱくつくのを、楽しそうに見ながら、嫁のような言い方をする。

塩と胡椒のほかに、しょうゆの味もする。

他にも調味料が入っているのかもしれないが、料理の苦手な美織には、あまりよくわからない。

けれども、人の作ってくれるご飯は、やはり美味しかった。

「成哉くんは、食べたの?」

「俺、1キロ以上食ったよ。」

身体が、本調子になり、昼ごはんも兼用だから、当然だろう。

「明日は、何がいい?俺、中華も作れるよ。」

「中華も?」

「今日、たまたまテレビつけたら、料理番組やってて、麻婆豆腐作ってたんだけど、

俺の作り方と違うなって思ったから、多分、大丈夫。」

「中華作れるんだ。」

美織は、素直に感心した。

「えびチリとかも作れる?」

成哉は、首を軽く傾げて、大丈夫だと、自信満々で言った。

「ただ、今日、酒と片栗粉、使い切っちゃったから。それと、ネギとしょうがとにんにくと、豆板醤と…。」

と、当たり前のように、材料を告げ始める。

「素は?」

「何の?」

愚問だった。

エビチリの素というか、レトルトのものや、瓶に入ったものを、材料に混ぜるんだと思っていたのだけど、成哉の頭には、その手のものは、ないらしい。

あわせ調味料も、全部、自分で作る気なのだ。

自分の食生活が、いかに貧困であったのか、今更ながら、気が付いた。

「材料、俺が、買いに行こうか?」

成哉が、美織の顔を覗き込む。

もちろん、それは助かるが…。

「…。」

美織が、黙っていると、成哉が笑って言った。

「明日、一緒に買い出しに行こうよ。」

「そうね。」

美織は、うなづいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。