7話
綿の服上下を買い、合わせて下着も1枚買っておく。
これで着替えは大丈夫。
次は宿だ。
「確か黄金の麦束だっけ?豊作祈願みたいな名前だ」
と、思い付くまま言葉にしてみる。
駄目だ、大分参ってるらしい、独り言が止まらない。
正直、この環境一週間で限界が来そうだ。
共通項が無い世界で精神的に安定を図るのは実際難しい。
予備知識の有る海外旅行ですらストレスフリーとは言い難いのが人間だ。
それが夢と思いきや違う可能性も高くなって来たと成れば、異邦人どころの話では無い。
良くて鬱、悪ければ狂人だ。
早い段階で味方を作らないと慣れる前に参ってしまう。
どうやらここはラノベのギルドは無いらしい、モンスターを退治して生計を立てる集まりで仲間探しが最善だろう。
それもリサーチが必要だな。
先ず宿で下調べか。
屋台の店主の言葉に従って街中を歩くと宿は簡単に見付かった。
さて、手持ちで足りるかどうか。
予想としては一泊銅貨50枚前後だろう。
違ったなら、屋台が高いかぼったくられたと判断出来る。
まあ、今日の所は調査段階だと諦めるしかない。
大分屋台の店主に失礼な事を考えながら宿に入る。
「すいません、へ「いらっしゃい、食事かい? 泊まりかい?」……泊まりです、空いてますか?」
食い気味と言うか、遮られた。
こう言う人は苦手だ。キャッチボールが出来ないで意図を伝えるのに苦労するからだ。
「一泊いく「一泊銅貨50、素泊まりなら35枚だよ」……そうですか」
思わず目を閉じる。
うん、分かってた分かってた。
「食事付き「あいよ、じゃ銅貨50枚ね」」
うん、宿替えるか…。我慢する必要性を感じないぞ。
いや、これなら情報提供と言うか勝手に話してくれるか。
1日だけだ、我慢しろ俺。
インベントリから銅貨50枚を出して女将さんだかに渡す。
二階の手前の部屋に案内される。
「これが鍵。外出する時はあたしに鍵を預ける事。身体を拭くお湯は言ってくれたら用意する。洗い物は篭に入れてドアの前に置いといてくれたら洗っとくよ」
あんたは喋らないと死ぬ人種か。
呆れと苛立ちを笑顔で隠して頭を下げて部屋に入る。
部屋はシングルで寝る為だけの部屋らしい。
疲れた身体をベッドに投げ出してようやく一息吐いた。
横に成りながら今までノータッチだったステータス画面の確認をする。
設定を開くとメニューがズラリと並ぶ。
表示、MAP、スキル、等々。
上から確認して行くと、他人の頭上に名前とHPが表示出来る様に成った。
これで知人をスルーしてしまう事は回避出来る。
次にMAPだがこれは視界の隅に小さく出す設定にした。
最後にスキルだ。
どうやらレベルが5に上がるとスキルツリーが選べるらしい。
スキルツリーの組み合わせで職業に成るらしい。
例えば剣のツリーと盾のツリー、回復のツリーで聖騎士とか、弓のツリーと隠形のツリー、罠のツリーでスカウトとか。
3つのツリーで構成されるらしい。
ただ、スキルツリーが無くても武器の扱いは習得出来るので、派生職業も存在するらしい。
スキルはMPを消費して何らかの技を発動させる技能みたいな物らしい。
「俺は何だろう、ダガーはリーチ的に不利だし、ステータスは体力と筋力が上がり安いみたいだから戦士系には成るか」
盾を持つか持たないか、ソロかパーティーかで話は変わる。
取り合えず今決まり物でも無いから、棚上げ。
「さて、次は衣類か」と狼の血を浴びた服を脱ぐ事にする。
……この服どう脱いで、着るんだ?
少し悩んで指先の感触でボタンを探って、シャツを脱ぎ去る。
着方はポロシャツ見たいな感じか。
しかし、柄も何も分からないのに手触りはキッチリ植物繊維だ。
麻の目の粗い繊維が分かる。固いが珍しくも感じる。
でも、やっぱり思う。
「でも、ドット絵!!」