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50話

 豪快な音を立ててバイト・アリゲーターの頭が割れる。


 処理しては一掴みの砂利を河に投げ込んでモンスターを集めて処理をする。


 流石に剣やサイズの様に複数のモンスターを同時に倒すのは無理だが、位置取りを間違わなければ一撃必殺は十分に可能だ。


 バイト・アリゲーターを誘き寄せて攻撃範囲に入るまでに2分、立ち位置の調整と攻撃姿勢に30秒、攻撃その物に2秒。


 凡そ3分に1匹のペースを戦闘を繰り返す。


 途中から数を数えるのも面倒に成り、無心で、モンスターに反応して倒す機械に成っていく。


 戦闘BGMが途切れて砂利を河に投げ込んでもバイト・アリゲーターが現れなくなった。


「ん? 狩り尽くしたか?」


 小首を傾げて呟くも特に変化は訪れない。


 インベントリに収まるワニ皮を数えると53枚の皮が入っていた。


 1匹の処理時間を計れないから正確性は無いが、3時間近くは戦い続けたらしい。


 ステータスを確認するとLvが1つ上がっていた。


 ゲーム的には経験値効率の適正域より低いモンスターではLvの上がりが悪い。


 装備の充実させないと各方面でストレスに成るだけだ。


 突然BGMが変わる。


 リポップしたのか、唐突に水面にバイト・アリゲーターが現れた。


「バイト・アリゲーター…だよな? 気のせいか? でかくない?」


 河から頭を出したバイト・アリゲーターは全体が倍は有る様に見える。


 弾かれた様に後ろに飛び退く。


 不味い、ボスモンスターだ。


 攻撃範囲が違う、耐久力も違う、生物的弱点に誤差が出る。


 ボスを相手にしながら他にバイト・アリゲーターが群がってきた。


「確実に死ぬな、どうする? 頭を割るには動きが大き過ぎる」


 ガヂッ!!とかなり派手な音を立ててボスアリゲーターが顎を閉じる。


 威嚇か何か、か。


 頭のサイズは倍位、全長は倍を越えている。


 尻尾が長い、顎がデカい。


 攻撃を躱す時には倍以上動く必要が有る。


 顎は顎で、俺の上半身は収まる位のサイズをしている。


「どうする? どうやる?」


 ハルバードを構えながら考える。


 尻尾を切り落とすか?


 無理だ、振られた尻尾躱してから正確に尻尾を攻撃出来るとは思えない。


 なら、目を狙うか?


 槍で動き回る、攻撃してくるボスの眼球を突くなんて芸当、この視界で出来る訳が無い。


「残るは前肢後肢か……4本全部やってみるか」


 先ずは前肢を噛み付きを躱しながら攻撃してみよう。


 頭の中の記憶のワニの映像を目の前のドット絵のボスアリゲーターに重ねる。


「イメージしろ、記憶を幻視する位強く。皮の質感も、牙の鋭さも。イメージしろ、命懸けの想像力を発揮しろ」

 ガヂッガヂッと繰り返される噛み付き攻撃を躱して間合いに飛び込む。着地の勢いを乗せて、ボスアリゲーターの左前肢の肘部分にハルバードを叩き込む。叩き込んだら一気に後ろに飛び退く。目の前を紙一重でボスアリゲーターの尻尾が通過する。


「食らったら3mは弾き飛ばされるな」

 噛み付かれたら最後、上半身と下半身が裂けるだろう。飛び込んでは撃ち込み、飛び退いては躱す、の繰り返し。6回目か7回目の攻撃で骨を砕いた感触と音がする。暫く離れて様子を見ていると明らかに動きが不自由になっている。次は右前肢だ。ボスアリゲーターの動きを気にしながら右前肢にハルバードを叩き込む。撃ち込んでから後ろに飛び退くと、ボスアリゲーターの尻尾の先端が左の太股を掠める。掠めた太股から全身に向けて激痛が広がる。太股に触れるとズボンは裂け、ぬるぬるした物が指先を濡らす。痛みに耐えながら二、三歩飛び退いてインベントリからポーションを出す。ボスアリゲーターとの距離を計りながら傷口にポーション振り掛ける。直ぐに効果は出て、痛みが消えていく。皮膚を切り裂かれただけで、筋肉までは届いていないのが幸いだった。少し引き攣るが戦闘には支障は無さそうだ。頭の中で自分とボスアリゲーターの位置取りを思い浮かべる。ハルバードを右構えのスタンスで右側に身を置くと、ボスアリゲーターの腹に近過ぎたらしい。尻尾が半回転で到達するのと、更にその半分の径で到達するのでは回避のタイミングが難しい。勝手が変わって手数が倍必要かも知れない。ハルバードを左構えで肩に担ぐ。ボスアリゲーターが尻尾を振るう為に全身で回る。尻尾が通過し、頭が過ぎた瞬間に踏み込んで右前肢の肘に叩き込む。鈍い音はするが、刃が食い込む感触は無い。利き脚を軸足にすると力が上手く乗せられない。少し考えてハルバードの穂先を引いて、地面に乗せる。剣術の脇構えの様に引いた構えを取る。サイズと同じ腰の高さの凪ぎ払いを重たいハルバードやる為に、腰と背中の筋肉の瞬発力を使った攻撃をイメージする。ボスアリゲーターの攻撃を躱し、変化した攻撃のパターンを観察して撃ち込むタイミングを覚える。


「慌てず、確実に、着実に……」

 鋭く息を吐きながら左足を踏み込んで、ハルバードを横凪ぎに振るう。腰を切って、肩を入れる。右腕を引いて、左腕を押し出す。ハルバードの重量と上体の体重に遠心力を加えて叩き付ける。ボスアリゲーターの骨に当りハルバードの勢いが消えたら即座に飛び退く。攻防を繰り返す内に左構えも段々と身に付いていく様だ。利き足じゃないからどうしても右構えよりは威力は劣るが。繰り返しの攻撃でボスアリゲーターの右前肢も遂に動かなくなる。一端離れて呼吸を整えて、右構えの担ぎに構える。噛み付き攻撃の合間に合わせて踏み込む。真上から勢い良く地面に刃が食い込むイメージで穂先を叩き付ける。ボスアリゲーターの頭部の皮が破れ、頭蓋骨が軋む感触が手に伝わる。距離を取って様子を見る。後ろ脚だけで這いずって近寄って来るが、その動きは鈍く力無い。顎に気を付けてハルバードを頭部に落とし続ける。右足で踏み込んで、ハルバードがボスアリゲーターに当たる瞬間に膝を曲げて、身体を真下に引っ張る様にして上体から膝までの体重を乗せて最後の一撃を与える。今までで一番強い手応えとボスアリゲーターの頭蓋が砕けるのが分かる。深く食い込んだハルバードから断末魔の痙攣が伝わってくる。


 ボスアリゲーターが消滅するとシステム音がしてLvが上がった事を知らせる。


 肺に溜まった息を深く吐き出して河川から離れる。


「疲れた……、あれはヤバ過ぎるだろ」


 河川から10m近く離れた林の木に背中を預けて呟く。


 緊張し過ぎた身体から力が抜けて脱力感で地面に座る。


 身体も頭も熱を持った様に鈍く痛む。


 疲労感に溺れそうだ、その位危険な戦闘だった。


 危険と視界のギャップに違う頭痛がしてくる。


 諦め混じりに言葉が零れる。


 「……でも、ドット絵」

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