26話
昨日は更新が出来ませんでした。
大変申し訳なく。
現実逃避って言葉がある。
目の前の環境が現実に見えない人間はどうしたら良いのだろう?
視覚以外の感覚は働くのに、グイグイと色香で迫って来る二人の女が居るのにどこまでも冷めた自分が居る。
考えてみたらドット絵にしか見えない女にモテても自分には酔えない。
ややこしさに溜め息しか出ない。
暗ければドット絵を意識せずに居られるが、明るいとどうにも、な。
肩を狭めて二人に苦言を言う。
「両側から押されると潰れるから」
そう言うとアンもエミリーも密着度を緩めるが、少しするとまたグイグイ来る。
張り合われると俺が困るんだが。
押しくらまんじゅうは柔らかくない、圧力だ。
「夕飯には早いが、これじゃくつろげないんだがな?」
もう、見なくても分かる。
アンとエミリーは目が合う度に俺に密着する。
人を挟んでギスギスするのは止めて欲しい。
「湯の用意頼めるか?緊張で体が強張ったままだ」
アンとエミリー、二人とも立たせて追いやる。
溜め息を吐いてソファーに深く座る。
姦しいのも疲れるが、ギスギスされるのも疲れる。
二人とも買ったのはやはり早計だったな、と後悔する。
今更追い返せないし、チェンジとか流石に言えない。
諦めて煩くしたら叱るしかない。
「うん、俺はハーレム維持は無理だ」
安心した様な、悔しい様な難しい苦笑を浮かべる。
「しかし、リアリティの無い環境を現実として向き合うって、難しいな……」
どこかで緊張感を保ててないから怪我をする。
原因は視覚情報なんだが、死に戻りが有るか無いか分からないなら、生き抜いて戻るしか無い。
「脅威は脅威として認識しないとな……」
二人が居ない間に今日の反省を行う。
ワインをちびちびと呑みながら30分位すると店員何人かで湯瓶が運び込まれる。
往復回数が多い気がする。
いや、確実に多い。
バスタブが大きいからかな?
今日は日本式にタップリの湯に浸かりたい。
「あ、すまないが服の洗濯は頼めたりするのかな?」
誰ともなく要望を言ってみる。
「可能ですが、明日までに乾くか分かりませんが」
初めて聞く声だ、少し若い気もする。
下働きの娘か?
「構わない、どうせ毎日来るから、じゃ頼めるかな?」
インベントリから今日までの服と銀貨1枚を取り出す。
下働きの娘はそれを空の瓶に入れて退室する。
多分エミリーとアンだけが残り声を掛けられる。
「リュート様、湯浴びの用意が出来ました」
促されてソファーを立つと隣室に移動する。
風呂場に行くと驚いた。
広い、バスタブが3、4人入れる位広い。
これなら思い切り手足を伸ばせる。
これは嬉しい誤算だった。
シャツとズボンと下着を脱いで、手桶でお湯を被る。
後ろでは二人が慌てた声をあげる。
「リュート様、お湯は私達がお掛けしますから」
「リュート様は湯浴びが本当にお好きですね」
うん、呆れられた。
いや、慣れないんだよ、風呂の世話を全部されるの。
違和感を我慢してるだけだよ?
鼻の下伸ばしてないぞ?だってドット絵だし。
誰に言い訳してるんだ、俺。
「湯浴びは癒しだ。温泉が有れば良いのに……」
「オンセンとはなんでしょうか?」
アンが問い掛けてくる。
温泉は無いか、言葉として無いのか判断つかない。
「大地から湧く湯の事だ、湧水のお湯版だな」
「聞いた事ありません、申し訳ございません」
エミリーは記憶を辿っていたのか、間を置いて謝罪する。
「いや、問題ない、元々湧く場所が限られた代物だからな」
「どの様な所に湧く物なのでしょうか?」
エミリーは妙に食いついて来る。
「基本的には火山の近くが多い。ただ、大地の亀裂が深ければ大抵の場所から湧くはずだが」
「リュート様、オンセンがお好きですか?」
「そうだな、大好きだな、また入りたいと思うが難しそうだ」
「大好きって、そんなに特別な湯なのですか?」
不思議そうな声でアンが問い掛けてくる。
「そうだな、特別と言えば特別かな? 肩凝りが治ったり、筋肉痛も治る湯も有る。内臓の調子を調えて
くれたり、お肌に良くて美人の湯って女性人気が高い物もある」
「「リュート様、本当にお好きなんですね」」
あ、呆れられた。
日々闇鍋とモンスター相手の戦闘で疲れてるんだから。
癒しくらい欲しい。
そんな話をしているとエミリーとアンの服の色が肌色に替わる。
二人のヌード。
うん、嬉しくない。
だって、だってな?
でも、ドット絵!!
主人公はやはり日本人でした(笑)