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10話

 酒場を出た俺は宿に戻った。


 後は寝て起きて、夢オチするだけだ。


 本当に夢オチ出来るか、大分怪しく成って来たが。


 考えて答えが出るとは思えないが、止める事も出来ない。


 女将さんに一声懸けて部屋に入るとベッドに横に成る。


 部屋の明かりは蝋燭だけで、今は灯してないから真っ暗だ。


 腰から2本のダガーを外して枕の下に挟む。


 これは俺の想像だが、多分この時代もしくは文明では当たり前だろう。


 目を閉じてゆっくりと体の力を抜く。


 しかし、不思議な気分だ。


 日本には帰りたい。


 だが、帰りたい理由が親兄弟が居る。


 友人が居る、仕事が有る、位で焦る程の熱量には成っていない。


 もしかしたら恋人と別れて無ければまた違っていたかも知れないが。


 逆にこの環境から早く抜け出したい、そんな角度で考えてる。


 少なくともここに居場所を作りたいとは思えない。


 兎に角、一眠りして全てはそれからだ。


 ゆっくり、ゆっくり何も考えない間を取りながら、俺は睡魔に身を委ねた。


 夢なら醒めてくれ、と祈る事無く。



 目を醒ますと真っ白なシーツが目に映る。


 夢オチれた!と慌てて体を起こすとそこは宿の部屋だった。


 1つ溜め息を吐いて考えてみる。


 可能性は幾らでも有る。


 夢オチを今回出来なかった可能性。


 何か条件が有る可能性。


 ログアウト出来ないゲームの可能性。


 本当に異世界。


 最後に長い長い夢の可能性。


 往生際が悪いが、全てが知覚出来る訳では無いのだから仕方がない。


 ただ、毎晩夢オチを期待して起きるのは精神的にキツいから、夢オチの可能性は度外視しなければ成らない。


「冷静に、冷静に、最悪を常に想定して……」


 あるゆる行動や結果が想定内なら、多少結果が悪くても人間は耐えられる物だ。


 胃が痛い、心臓がバクバクいっている。


 悩むな、今は空元気でも開き直った振りでも耐えるしかない、と自分に言い聞かせる。


 取り合えず今は稼いで食い扶持と宿代を確保するしかない。



 宿を出ると真っ先に狩りに向かう。


 確か、林の先の草原にヘビーカウが生息してるらしい。


 牛相手にダガーとははなはだ心許ないが、装備の更新の為にも稼ぐ必要が有る。


 小一時間歩いて草原に出た。


 見渡す限りの草原には点々と何か生き物が見える。


 多分、ヘビーカウだろう。


 近付いて見ると牛はデカかった。


 2mは有る巨体には角も有り、なかなか鋭く尖っている。


 動きは比較的遅いらしく、狼よりは危険度は低そうだが、あの巨体と角は簡単に体に穴が空きそうだ。


 慎重に近付いてダガーを構える。

 アクティブモンスターらしく、間合いに入ると途端に蹄で地面を引っ掻きだす。

 全長2m、幅も角を含めたら1m以上は有る。

 つまり、交わすなら1.5mは避けないと引っ掛かるか風穴が空く。

 初手はモンスターに譲り、パターンを見極める必要が有る。

 攻撃力が低いのとリーチの不利、弱点を突き続け無いと勝てやしない。

 ヘビーカウが突進を開始した。

 速さは確かに無いが、凄い迫力だ。

 軽トラックを正面から見ている位に怖い。

 慌てて横に飛び退いて、二度三度と交わして行く。

 正直、ギリギリで交わすのはかなり怖い物が有る。

 ジワジワと汗が背中を濡らして行く。

 飛び退いて交わしてから、ヘビーカウの首筋を斬り付ける。

 確証は無いが、モンスターの急所を攻撃すると何らかの弱体化が起こる気がする。

 蜂の時も羽根を斬り付けるとスピードが落ちた様に、あらゆるモンスターに何らかの特殊効果が発生する可能性が有る。

 首筋を切り裂いて出血をさせるとHPが突進中でも減って行く様に見える。

 もしかしたら頸動脈を切断するとクリティカルに成るのでは無いだろうか?

 この手の動物系は首筋と心臓のピンポイントだろう。

 ダガーでは刃が届かないので、首筋頸動脈一択だが。

 突進を交わしては斬り付けを繰り返すが、やはり薄く浅くしか斬れないで居る。

 どうするか悩みギリギリで交わして、

 ダンッと音がする位強く頸動脈ピンポイントでダガーを突き立てる。

 ダガーは鍔まで埋まり、手を離す。

 このまま少しすれば出血で倒れるだろう。

 本当はダガーを抜いて出血を促したいが、ヘビーカウは強く暴れて抜くに抜けない。

 それから数分でヘビーカウは大地に倒れた。


 ジャラッと音を立てて地面に貨幣とアイテムが転がる。


 何と言うか昨日今日で一番「命を奪った」感覚を覚えた。


 モンスターだとしても罪深い、そう感じてしまうのは日本人だからだろうか?


 やはり肉を切り裂く感触はまだ慣れない。


 まあ、見た目が見た目だから、俺の本音。


「でも、ドット絵!!」

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