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アルケミア  作者: ふなのり
終わりゆく世界
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1/15

第1話 照らした

---


 朝。

 白石光は目覚ましの音で目を覚ました。


光「……ねむ」


 ぼやけた頭のまま体を起こす。

 特に変わったことはない、いつもの朝だ。


 顔を洗って、適当にパンをかじる。

 時計を見ると、まだ少し時間に余裕があった。

 

光「……ちょっと外出るか」


 気まぐれにそう決めて、家を出た。



---


 外はよく晴れていた。

 通学中の学生たち。

 仕事へ向かう大人たち。

 変わらない街の風景。

 なんとなく歩いているうちに、近くのコンビニに入る。



---


 自動ドアが開く。


「いらっしゃいませー」


 店内はいつも通り。

 商品棚を眺めながら、適当に飲み物を手に取る。


光「……これでいいか」


 レジへ向かう途中、小学生たちの会話が耳に入る。


「今日テストだってー」


「えー、やだー」


 笑い声。


 どうでもいいような、平和なやりとり。



---


 会計を済ませて、外に出る。

 その瞬間


 当たり前だった平和が壊れた。


 


遠くで、サイレンが鳴った。                     最初は気にしなかった。


けれど、音は増えていく。


 一つ、二つ、三つ。


光「……多くないか?」


 赤色灯がいくつも走り抜けていく。救急車。パトカー。明らかに異常な数。



---


 周りの人たちもざわつき始める。立ち止まる人。スマホを向ける人。空気が、少しずつ変わっていく。



---


「逃げて!!」


 突然の叫び声。振り向いた瞬間、人の流れが一気に逆転し。全員が、こちらへ走ってくる。


光「なんだよ……」


 その答えは、すぐに現れた。



---


 建物の影から現れた異形。人の形をしているのに、人ではない。歪んだ体。異様な存在感。


 怪人。



---


光「うそだろ……」


 足が止まる。

 目が合った。  

 次の瞬間、怪人が一気に距離を詰めてくる。


光「っ!」


 逃げる。でも、速い。振り上げられる腕。間に合わない、そう思った瞬間。


 一人の少女が飛び込み光を庇った。


葵「……大丈夫?」


 やわらかい声。目の前に立っていたのは、制服に袖を通しているボブカットの少女だった。肩のあたりで揃えられた髪が、ふわりと揺れる。少しだけ振り返るその表情は、どこか落ち着いていた。


葵「ケガしてない?」


光「え……?」


 状況が追いつかない。少女は軽く息をついて、前を向く。


葵「ここは危ないから逃げて。」


 彼女はまるで日常の延長みたいな軽さでそう言う。そして腕になぞの機械を装着する。


葵「――発動」


光「…発動?」


 光が彼女を包む。ボブの髪がふわりと浮かび上がる。次の瞬間。彼女は姿を変え、距離を詰め、怪人を叩き込む。圧倒的な速度、力。


光「な……」


 光はただ、見ていることしかできない。


葵「はぁぁぁぁ!」


 少女の声に合わせるように腕にはエネルギーが溜まっていく。


 《ブラストインパクト》


 怪人は必殺技を食らい消滅した。しかしあらゆる方向から怪人は現れる。


葵「早く逃げて!」


 彼女の声が呆然としていた光を現実に戻した。光は声に従い逃げ惑った。 

 

 どこに行っても怪人と遭遇する。光は絶望に乗り込まれていた。それでも生きるには逃げるしかない。走る。息が苦しい。足が重い。それでも止まれない。


 角を曲がった瞬間。足元で、何かが光った。


光「……なんだ、これ」


 拾い上げる。小さな装置。何かは分からないが、光はこれを使わないといけない気がしていた。


光「これってさっきの子が使ってた……」

 

 その時目の前で大爆発が起きる。光は狼狽える。爆炎の中から怪人が現れる。


光「やめてくれぇ!」


 なぜか応答もなく、こちらに向かっても来ない。だが目の前にいるのは混乱を起こした張本人。光は恐怖を拭えずにいた。


光「やられる前にやらないと…!」


 光の顔が恐怖に染まる。


光「はぁぁぁぁ…」 

 「あの子は発動って言ってた……なら…!」

 

 光が覚悟を決める。自らの命を守るため。


光「発動!」


 光の体がひかりに包まれる。


 《バランス》


 怪人が突っ込んでくる。反射的に腕を振る。衝撃。怪人が吹っ飛ぶ。


光「は……?」


 光は自分がやったことを理解できていなかった。


怪人「そちらから来るならば容赦はしない。」


 

 低く歪んだ声。次の瞬間、地面を蹴る。


光「っ!」

  

 速い。さっきまでとは明らかに違う速度で距離を詰められる。反射的に腕を上げる。衝撃。吹き飛ばされるのは、光の方だった。


光「ぐっ……!」

 

 地面を転がる。痛い。さっきまで感じなかった衝撃が、今ははっきりと体に伝わる。


怪人「未熟……」


 ゆっくりと近づいてくる。


光「……なんでだよ……」

 

 立ち上がる。さっきは倒せた。なのに、今は通用しない。

  

 分からない。考えてる暇もない。怪人が再び突っ込んでくる。今度は横に避ける。ギリギリでかわす。


光「はぁっ……!」

  

 勢いのまま拳を振る。当たる。だが、弱い。


怪人「遅い」

 

 カウンター。腹に叩き込まれる一撃。


光「がっ……!」

 

 息が詰まる。そのまま後ろに吹き飛ぶ。視界が揺れる。立てない。


光(なんで……なんで俺はこんなに弱いんだ……)


 恐怖が押し寄せる。体が震える。怪人が、止めを刺すために腕を振り上げる。その瞬間。頭の中に、ある光景がよぎる。


「今日テストだってー」

「えー、やだー」

 コンビニの小学生。笑っていた。

 家族である兄、祖母との思い出。


光「……っ」

 歯を食いしばる。

光「……やられるわけには……いかねぇだ ろ……!」

  

 立ち上がる。足は震えている。それでも、前に出る。

 

怪人「……」

 

 光には怪人がひどく疲労し、限界が近いように見えた。そして光かま突っ込む。怪人は拳を前に出し応戦。しかし光がギリギリでスライディングし回避。すれ違いざまに怪人の腹に全力のパンチを食らわせる。


怪人「……っ!?」

 

 初めて、怪人の体勢が崩れる。


光「いける……!」

  

 光はパンチ、蹴り、がむしゃらに叩き込む。動きは荒い。でも、止まらない。


怪人「調子に――」

 反撃。だが、さっきほど当たらない。


光(見える……!)

 

 ほんのわずかだが、戦いに慣れてきた。まるで体が覚えているようだった。


光「……もしかしたら……!」

光「はぁぁぁぁぁ!!」

 

 腕にエネルギーが集まる。

 

《アルケミアブレイク》


 全力で叩き込む。爆発的な衝撃。


怪人「――――ッ!!」

 

 怪人の体が崩れる。光に包まれ、そのまま消滅した。

 

 静寂。


光「……はぁ……はぁ……」

 

 立っているのがやっとだ。手が震えている。


光「……勝った……のか……?」 



 その時少し遠くから光を見つめる青年がいた。


凛「あれは俺が落とした……」

 

 青年は少し考え込み言った。  


凛「もしかすると協力できるかもしれん……泳がせるとするか……」

 

 そういい残し青年は姿を消した。





???「ヴァルゼイン様!」


 暗がりの中、一人の怪人が頭を垂れている。


??ら「この戦いで奴らに甚大な被害を与えました。しかし我ら怪人最強のウォリアーが撃破されました。」 


 わずかな沈黙の後、謎の男が話す。


ヴァルゼイン「ウォリアーを倒しただと?そこまでの実力者が…まぁいい我々の計画は順調に進んでいる。」 

 

 光はまだ裏でうごめいている闇を知る由はなかった。そして光はこれから世界をかけた戦いに巻き込まれることになる。 


光は世界を照らし、希望を灯す者 

 

ーーーーー


世界を崩壊へ導く者



どちらになるかはまだ先の話。



第1話「照らした」完

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