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アルケオン 第二章 「感情の色を探して」  作者: れんP


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禁足の影と、慈しみの光

「アルケオン 第二章 感情の色を探して」


彩葉たちの活躍から、十年――。

世界は大きな戦乱もなく、静かな平和を取り戻していた。


日本・大阪府大阪市。

その街に、一人の守護者が存在していた。


イラストから生まれた守護者――ユズ。


絵を描くことを愛する彼女は、

しかしひとつの欠落を抱えていた。


それは――

“色で感情を表現できない”こと。


どれだけ描いても、そこに宿るはずの“想い”が分からない。

色が、ただの色にしか見えないのだ。


そんなある日、ユズは一体の想霊と出会う。


苦しみの上位想霊――

感情体「サファリング」。


感情から生まれる存在である彼女は、

ユズの“欠落”に興味を抱く。


そしてユズもまた、

“感情とは何か”を知るため、彼女と共に歩むことを決める。


タブレット端末を手に、

二人は旅に出る。


喜び、怒り、悲しみ、愛――

さまざまな感情から生まれる“想霊”を探すために。


これは、色を知らない守護者が、

“感情の色”を探し出す物語。


そして――

世界に隠された、新たな異変へと繋がる物語でもあった。

ユズ、サファリング、プライドは——


 


千葉県市川市八幡の街に来ていた。


 


 


駅前は思っていたよりも賑やかで、


 


人々の行き交う音や、店の呼び込みの声が響いている。


 


 


「なんだか、普通の街ですね」


 


 


ユズは少し安心したように呟いた。


 


 


「そうね。でも——」


 


 


プライドは周囲を見回しながら、わずかに眉をひそめる。


 


 


「場所によっては……空気が違うわ」


 


 


サファリングは何も言わず、


 


ただ静かに、ある方向を見つめていた。


 


 


三人はしばらく街を歩く。


 


 


商店街を抜け、


 


住宅街へと入り——


 


 


やがて。


 


 


人の気配が、少しずつ遠のいていった。


 


 


風の音が、やけに大きく聞こえる。


 


 


そして、目の前に現れたのは——


 


 


鬱蒼とした木々に囲まれた、異様な一角だった。


 


 


 


プライドが、露骨に顔をしかめる。


 


 


「ねぇ、ほんとにここ通るの?」


 


 


サファリングは短く答える。


 


 


「ん、通らないと先に進めない。」


 


 


「回り道とか……」


 


 


ユズが不思議そうに辺りを見回す。


 


 


「そんなになんですか?ここはいったい……」


 


 


サファリングは静かに言った。


 


 


「そこは——八幡の藪知らずって言われてる場所……」


 


 


「どんなところなんです?」


 


 


その時——


 


 


どこからともなく、声が響いた。


 


 


「と〜ってもこわ〜いところよ〜」


 


 


 


「ヒィッ!?でたわぁ!?」


 


 


プライドが思い切り飛び上がる。


 


 


その視線の先——


 


 


そこに“いた”。


 


 


黒く、ぼやける存在。


 


 


輪郭は曖昧で、まるで現実からズレているような、


 


 


ゲームのバグのような存在が、そこに立っていた。


 


 


「全く、でたなんてひどいなぁ〜。おばけみたいじゃないか」


 


 


軽い調子でそう言う。


 


 


「おや、しらない子だ」


 


 


その“何か”は、ユズを見て微笑むように揺れた。


 


 


「私は八幡……ここ八幡の藪知らずの守護者だよ」


 


 


「守護者さん……?」


 


 


ユズは驚きながらも、じっと見つめる。


 


 


八幡は、くすりと笑った。


 


 


「でも、君と似たようなものかな」


 


 


サファリングが静かに説明する。


 


 


「八幡の藪知らずの守護者『八幡』は——禁足地シリーズに分類される守護者」


 


 


「特徴は、身体のどこかにしめ縄のようなものが巻き付いてる……」


 


 


ユズは目を凝らす。


 


 


「あ……ほんとだ」


 


 


確かに、ぼやけた体の一部に、


 


しめ縄のようなものが絡みついていた。


 


 


プライドが小声で続ける。


 


 


「そして、怒らせたりすると——神隠しにあわせたり、残酷な方法で殺したりするのよ……」


 


 


「え……」


 


 


ユズの顔が固まる。


 


 


八幡は楽しそうに笑った。


 


 


「そうだね。他の子達のやり方は知らないけど、あっているよ」


 


 


「私は神隠しにあわせるよ。クフフッ」


 


 


その言葉は、冗談のようでいて——


 


どこか本気だった。


 


 


ユズは恐る恐る尋ねる。


 


 


「禁足地シリーズの皆さんは……八幡さんのような人たちなんですか?」


 


 


八幡は首をかしげるように揺れる。


 


 


「うんにゃ、違うよ。それは私だけだね」


 


 


その時——


 


 


背後から、静かな声がした。


 


 


「今日のお客さんですか?」


 


 


空気が、ふっと柔らかくなる。


 


 


八幡が振り返る。


 


 


「おや?慈しみ、来たのかい」


 


 


「慈しみ!?」


 


 


ユズが驚いて振り向くと——


 


 


そこには、一人の穏やかな存在が立っていた。


 


 


柔らかな雰囲気。


 


 


優しく包み込むような気配。


 


 


その存在は、静かに微笑む。


 


 


「うん、そうだよ。はじめまして」


 


 


「私は上位想霊感情体のコンパッション」


 


 


「司るものは——慈しみ」


 


 


「慈愛や慈悲とも言われるよ」


 


 


 


恐怖の地に差し込んだ、


 


 


あまりにも対照的な——


 


 


“優しさ”だった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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