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アルケオン 第二章 「感情の色を探して」  作者: れんP


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20/60

夜に交わる声と、遠き来訪者

「アルケオン 第二章 感情の色を探して」


彩葉たちの活躍から、十年――。

世界は大きな戦乱もなく、静かな平和を取り戻していた。


日本・大阪府大阪市。

その街に、一人の守護者が存在していた。


イラストから生まれた守護者――ユズ。


絵を描くことを愛する彼女は、

しかしひとつの欠落を抱えていた。


それは――

“色で感情を表現できない”こと。


どれだけ描いても、そこに宿るはずの“想い”が分からない。

色が、ただの色にしか見えないのだ。


そんなある日、ユズは一体の想霊と出会う。


苦しみの上位想霊――

感情体「サファリング」。


感情から生まれる存在である彼女は、

ユズの“欠落”に興味を抱く。


そしてユズもまた、

“感情とは何か”を知るため、彼女と共に歩むことを決める。


タブレット端末を手に、

二人は旅に出る。


喜び、怒り、悲しみ、愛――

さまざまな感情から生まれる“想霊”を探すために。


これは、色を知らない守護者が、

“感情の色”を探し出す物語。


そして――

世界に隠された、新たな異変へと繋がる物語でもあった。

神奈川県の夜。


 


街はすっかり暗くなり、ネオンと街灯が道を照らしていた。


 


ユズとサファリングは、人の行き交う通りから少し離れ、静かな場所へと足を運んでいた。


 


 


ユズは、きょろきょろと辺りを見回す。


 


 


「夜になりましたね……」


 


 


「ん、そろそろ行こう」


 


 


「はい!」


 


 


二人は歩き出す。


 


 


横浜の海沿い。


 


静かな公園。


 


人気の少ない路地裏。


 


 


様々な場所を巡る中で、ユズは“気配”というものを少しずつ感じ取れるようになっていた。


 


 


「あ……なんか、空気が違う気がします……」


 


 


「ん、近いね……」


 


 


サファリングがそう言った、その時。


 


 


「あれ〜?ユズにサファリングじゃない」


 


 


聞き覚えのある声。


 


 


振り向くと——


 


 


「プライドさん!」


 


 


そこには、楽しそうに微笑むプライドの姿があった。


 


 


「プライド、久しぶり」


 


 


「えぇ、久しぶり!」


 


 


軽やかなやり取り。


 


だが——


 


 


ユズの視線は、その隣にいる“存在”に釘付けになった。


 


 


灰色のドレス。


 


腰に巻かれた黒いリボン。


 


 


そして——


 


 


瞳に、バッテン。


 


 


小さな幼女。


 


 


「……」


 


 


何も言わず、ただそこにいる。


 


 


「その隣の子は……」


 


 


ユズの問いに、サファリングが静かに答える。


 


 


「フィアー……」


 


 


「え!?この子が……」


 


 


プライドがくすりと笑う。


 


 


「えぇ、さっきそこで会ったの」


 


 


フィアーは、何も反応を示さない。


 


 


だが——


 


 


確かに“そこにいる”。


 


 


ユズは、少し戸惑いながらも口を開いた。


 


 


「え、えっと……て、テレパシーってどうやるんですか!?」


 


 


「ん、届けたいって思いを込めて念じればいい……その時、送りたい人を思い浮かべて」


 


 


「は、はい!……」


 


 


ユズは目を閉じる。


 


 


(こ、こんばんは〜……)


 


 


 


——その瞬間。


 


 


(こんばんは……ユズ)


 


 


頭の中に、静かな声が響いた。


 


 


「……!」


 


 


サファリングが小さくうなずく。


 


 


(そう、上出来)


 


 


プライドも楽しげに。


 


 


(初めてなのにいい感じじゃないの)


 


 


フィアーの声は、どこか遠くて、静かだった。


 


 


(守護する者と話すのは、久しぶりです……)


 


 


(そうなの?)


 


 


(えぇ……あの大戦以来です……あの時は共に戦争に出ていた守護者さん達とお話しました)


 


 


ユズは驚く。


 


 


(想霊も戦争に出たの?)


 


 


(えぇ)


 


 


サファリングが補足する。


 


 


(ん、感情体は言ってしまえば国に置かれている身……拒否権はあるけど、出ないといけないから……)


 


 


(そうね)


 


 


プライドも同意する。


 


 


(……二人も出たんですか?)


 


 


(うん)


 


 


(えぇ)


 


 


サファリングは、淡々と続けた。


 


 


(それに……断る理由がない)


 


 


(どうしてです?)


 


 


プライドが、少し楽しそうに答える。


 


 


(戦争は、色々な感情が流れるからよ)


 


 


(ん、そう……想霊は感情を食べるから、絶好の機会……)


 


 


(そうね……あの時は今までで一番、感情を食べれたわ)


 


 


(えぇ)


 


 


ユズは言葉を失う。


 


 


(……)


 


 


サファリングは続ける。


 


 


(その戦争のおかげか、強くなった想霊がたくさん出た……その中でも8体と上位想霊感情体はすごい活躍をして、すごく強くなった)


 


 


(その、感情体って……)


 


 


サファリングは一つ一つ、静かに告げる。


 


 


(……恐怖フィアー……自負プライド……怒り(アンガー)……悲しみ(サッドネス)……優越感スペリオリティ……殺意マーダラス……勇気カレッジ……そして私、苦しみ(サファリング)……)


 


 


(そうなんですね……)


 


 


しばしの沈黙。


 


 


夜の風が、静かに吹く。


 


 


その時——


 


 


(……ユズ)


 


 


フィアーが、再び語りかける。


 


 


(あなたは……怖いですか?)


 


 


(え……?)


 


 


(この世界も……私も……)


 


 


ユズは少しだけ考える。


 


 


だが——


 


 


(……少しだけ、怖いです)


 


 


正直な答えだった。


 


 


(でも……知りたいです)


 


 


フィアーは、わずかに間を置いた。


 


 


(……そうですか……)


 


 


その声は、どこか柔らかかった。


 


 


(では……少しだけ……見せてあげます……)


 


 


空気が、変わる。


 


 


夜の静けさが、わずかに重くなる。


 


 


 


——そして。


 


 


視点は変わる。


 


 


どこかの山中。


 


 


雪のように白い毛に覆われた存在が、ゆっくりと周囲を見渡す。


 


 


「ココガニホンカ……ゴートマンヨ」


 


 


低く、重い声。


 


 


その隣には、角を持つ異形の存在。


 


 


「あぁ、そうだイエティ……」


 


 


夜の闇の中。


 


 


異形の者たちが——


 


 


静かに、日本へと足を踏み入れていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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