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アルケオン 第二章 「感情の色を探して」  作者: れんP


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絡みつく視線、その正体

「アルケオン 第二章 感情の色を探して」


彩葉たちの活躍から、十年――。

世界は大きな戦乱もなく、静かな平和を取り戻していた。


日本・大阪府大阪市。

その街に、一人の守護者が存在していた。


イラストから生まれた守護者――ユズ。


絵を描くことを愛する彼女は、

しかしひとつの欠落を抱えていた。


それは――

“色で感情を表現できない”こと。


どれだけ描いても、そこに宿るはずの“想い”が分からない。

色が、ただの色にしか見えないのだ。


そんなある日、ユズは一体の想霊と出会う。


苦しみの上位想霊――

感情体「サファリング」。


感情から生まれる存在である彼女は、

ユズの“欠落”に興味を抱く。


そしてユズもまた、

“感情とは何か”を知るため、彼女と共に歩むことを決める。


タブレット端末を手に、

二人は旅に出る。


喜び、怒り、悲しみ、愛――

さまざまな感情から生まれる“想霊”を探すために。


これは、色を知らない守護者が、

“感情の色”を探し出す物語。


そして――

世界に隠された、新たな異変へと繋がる物語でもあった。

富士山のふもと。


 


澄んだ空気と、静かな自然の音が広がる場所。


 


 


ユズとサファリングは、ゆっくりと山道を歩いていた。


 


 


「……空気、冷たいですね」


 


 


ユズは軽く息を吐く。


 


白くなるそれが、ここが街とは違う場所だと教えてくれる。


 


 


「……この辺りのはず」


 


 


サファリングが周囲を見渡す。


 


 


足元には、ところどころに落ちているゴミ。


 


 


自然の中に、不自然なもの。


 


 


そのとき――


 


 


「はぁ……なんでこんなところに捨てるのよ」


 


 


小さく、ため息混じりの声。


 


 


「ほんっと信じらんない……ちゃんと持ち帰りなさいよね」


 


 


ユズとサファリングは同時にそちらを見る。


 


 


そこにいたのは――


 


 


一人の少女。


 


 


おしゃれな服装。


 


 


整えられた髪。


 


 


どこにでもいそうな、普通の女の子。


 


 


 


けれど――


 


 


手にはゴミ袋。


 


 


そして、慣れた手つきでゴミを拾っている。


 


 


 


「……あ」


 


 


ユズが小さく声を漏らす。


 


 


 


少女はこちらに気づく。


 


 


じっと、見てくる。


 


 


その視線は――


 


 


やけに強い。


 


 


 


「……なに?」


 


 


少しだけ、棘のある声。


 


 


 


ユズは一瞬戸惑うが、すぐに言葉を紡ぐ。


 


 


「あの……あなたが、“オブセッション”さん……ですか?」


 


 


 


沈黙。


 


 


 


少女は、ゆっくりと首を傾げた。


 


 


 


「……へぇ」


 


 


 


その口元に、わずかな笑みが浮かぶ。


 


 


 


「知ってるんだ、私のこと」


 


 


 


一歩、近づいてくる。


 


 


 


「誰に聞いたの?」


 


 


 


ユズは少しだけ緊張しながらも答える。


 


 


「エキサイトメントさんに……」


 


 


 


「あぁ、あのうるさいの」


 


 


 


即答だった。


 


 


 


「まぁいいけど。あの子、すぐいろんなこと喋るし」


 


 


 


オブセッションは、興味を持ったようにユズを見つめる。


 


 


 


じーっと。


 


 


 


まるで、観察するように。


 


 


 


「……ふーん」


 


 


 


「あなた、なんか面白そうね」


 


 


 


 


ユズは少しだけ後ずさる。


 


 


 


(視線が……重い……)


 


 


 


ただ見られているだけなのに、


 


 


離れられないような感覚。


 


 


 


サファリングが一歩前に出る。


 


 


 


「……オブセッション」


 


 


 


「……なに、サファリング」


 


 


 


少しだけ不機嫌そうに目を細める。


 


 


 


「……この子、感情の色、探してる」


 


 


 


「へぇ?」


 


 


 


興味が、さらに強まる。


 


 


 


「つまり……私の“執着”も見たいってこと?」


 


 


 


ユズは、しっかりと頷いた。


 


 


 


「はい……知りたいです」


 


 


 


 


オブセッションはしばらく無言で見つめる。


 


 


 


その時間が、やけに長く感じる。


 


 


 


やがて――


 


 


 


「……いいわよ」


 


 


 


あっさりと答えた。


 


 


 


「でもさ」


 


 


 


少しだけ笑う。


 


 


 


 


「ちゃんと“最後まで”見れる?」


 


 


 


 


その言い方は、どこか意味深で。


 


 


 


試すような響きがあった。


 


 


 


ユズは一瞬だけ迷う。


 


 


 


けれど――


 


 


 


「……はい」


 


 


 


しっかりと答える。


 


 


 


 


オブセッションは、くすっと笑った。


 


 


 


「いいじゃん。そういうの、嫌いじゃない」


 


 


 


 


手に持っていたゴミ袋を軽く持ち上げる。


 


 


 


「ちょっと待って。これ片付けるから」


 


 


 


「え、あ……はい」


 


 


 


ユズは思わず返事をする。


 


 


 


オブセッションは、手際よく周囲のゴミを拾っていく。


 


 


 


その動きは無駄がなく、異様なほど丁寧だった。


 


 


 


ひとつも見逃さない。


 


 


 


ひとつも許さない。


 


 


 


 


(これが……“綺麗にすること”への執着……)


 


 


 


やがて、すべて拾い終える。


 


 


 


「よし、完璧」


 


 


 


満足そうに頷く。


 


 


 


そして――


 


 


 


「じゃあ、やろっか」


 


 


 


ゆっくりと、手を差し出した。


 


 


 


その手は綺麗で、整っていて。


 


 


 


――なのに。


 


 


 


どこか、逃げられないような気配をまとっていた。


 


 


 


 


「……」


 


 


 


ユズは、その手を見つめる。


 


 


 


高揚とは違う。


 


 


 


軽さはない。


 


 


 


 


重い。


 


 


 


深い。


 


 


 


絡みつくような感覚。


 


 


 


 


それでも――


 


 


 


「……お願いします」


 


 


 


ユズは、その手を取った。


 


 


 


 


次の瞬間。


 


 


 


世界が、ゆっくりと閉じていく。


 


 


 


逃げ場のない“想い”の中へと――。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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