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ウノハナヅキ
春の風景
黄色の絨毯が
風に乗って
さわさわと揺れる
遠くの山並みは
恋を初めてしった少女のように
淡く優しい色に染まっていた
川面には
そんな優しく染まる山並みが
別の世界のように映っている
下流域特有の
穏やかに流れるその川の流れに
柔らかく映る山並みがわずかに揺れ
川面の下の世界と
こちらの世界の境界を
ますます曖昧にしていく
息をのむ鮮やかな色の花々と
心を惹き付けてやまない
柔らかな川面の世界に
目をそらせずにいると
春らしく霞む空のどこかから
あたたかな風が吹いた
春の風に誘われるように
川面に魚が一瞬飛び出し
また
優しい世界へと戻っていった
彼にとってのこちらの世界は
どのように見えていたのか
ただ、彼らにとって
こちらの世界で過ごすことは過酷すぎて
そして、私たちにとってもあちらの世界は
どれだけ優しく見えたとしても
生きていくことは難しい世界なのだろう




