十九話 闇を司る者達⑤
セツナ視点です。
あのミノタウロスとの戦いが終わり、ゆっくりと洞窟を歩いて行く。
俺は、ミノタウロスを倒した後に出てきたエースの事を考えていた。
風牙で攻撃した時、あいつの動きを見た。
無駄なく最低限の動きで避けすぐに射程外に移動した。
正直、あれだけの強い敵が魔王に属していると考えると気が滅入る。
「零、俺はあいつを倒せるだろうか?今のままでは、相手にならない気がしてならない。」
『そうだな、今のお主では無理かもしれん、この旅でもっと強くなる必要があるのやもしれぬな。』
「だが、ここで魔王をこの世界に呼ぶための兵器を開発していると聞いた以上ゆっくりとしていられないな。」
『そうだな・・・。』
少し歩いたら人の気配がした。
「あ、お兄ちゃん!」
「セツナ!」
「よかった、無事だったか!」
「・・・どうも」
「3人とも無事だったみたいだな?えっと、君は?」
「・・・私はセルフィー・ヴィンセント。あなたを探していました。」
「俺を?」
「・・・はい。実は・・・。」
セルフィーが何か話そうとしたその時、セツナは武器を構えた。
「ちょっと!お兄ちゃん!?」
「話は後だ」
突如、黒い靄が出てきた。
「この感じ・・・エースか?」
「エース?誰だそれは?」
ルートが俺に聞くが、返事を返している暇はない。
やつは強い、気を逸らせば殺される可能性だってある。
そして、3人の人間?が現れた。
「ほぅ・・・。これはこれは。」
「いかんの?貴様らでは我らには勝てんのに、そんな構えても仕方のないことよの」
「私達は、魔王様にお仕えする四闇です。そして、私はクイーン・・・。」
「私はキングだ。」
「ワシはジャック・・・。」
「最後の1人がエースか?」
「ふむ・・・どうやら、居なくなっておったと思ったら、ここに居たのか。やれやれじゃわ」
俺は仲間を見る。
ユウナもカレンも相手の威圧に呑まれてるな・・・。
ルートは少し厳しそうだが、セルフィーは全く問題無さそうだ。
今まともに戦えるとしたら、セルフィーくらいか・・・?
だが、セルフィー実力が分からない以上1対3は覚悟しておくべきだろうか。
「今日はご挨拶です。聖騎士・・・あなたが、殿下の邪魔をするのなら全力で潰しますという宣言をしに来ました。」
「俺は魔王を倒す邪魔をするんなら、俺はお前達を倒す。」
「威勢がいいのぉ?最近の若い者は・・・。くあああああ!」
ジャックがセツナを襲いにかかる。
セツナはすぐに迎撃に入る、だが、それよりも先に短剣を武装したセルフィーが既に動いていた。
「・・・遅い、です!」
―――――――体術・武雷
雷を纏わした短剣が、ジャックに襲い掛かる。
しかし、ジャックはそれを回避する。
「まだだ!」
―――――――抜刀・風牙
「まだまだ、甘いのぉ。」
「何!?避けられた!?」
セルフィーは武雷を使い、さらにジャックを追い詰めるが
「そんなものかの?」
武雷を受け止め、そのまま俺に向かってセルフィーを投げ飛ばす。
「っく!」
「・・・!セツナ様!」
俺はセルフィーを受け止め、そのまま壁に激突する。
「はぁ・・・はぁ・・・大丈夫か?」
「私は大丈夫です。・・・それよりも、セツナ様は?」
「大丈夫だ。まだまだいけるさ。」
再び戦闘態勢を取った俺達だったが、クイーンがジャックに声を掛ける。
「そこまでです。ジャック。」
「良かろう、実力は分かった。もはや戦う理由が無いわい。」
「さっきも言ったように、今日はご挨拶です。聖騎士・・・。では、ご機嫌よう。」
再び黒い靄が四闇の3人も包み、そして、消えた。
「退いたか・・・。」
「・・・そのようです。気配がありません。」
ユウナとカレンはその場に座り込み、ルートは立っているのもやっとといった状態だ。
「3人とも、少し休んだらフィルンに戻る。いいね?」
・・・四闇か、あいつらとまともに戦うためにも、やはりもっと強い力が必要だ。
そして、あいつらに会う度に彼らがこの状態だと、ユウナとカレンは当然、ルートも町に戻った方がいいな。
下手に連れて行っても、戦えないのなら、意味はない。
冷たい言い方かもしれないが、俺が全力で戦うためには3人は邪魔になる。
「・・・セツナ様、町に戻ったらお話ししたいことがあります。」
「分かった。」
引越しだったため、更新等遅れております。
また、読んでいただきありがとうございます。