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プロローグ 転生、そして魔人の真祖へ

 人はロマンを忘れたら終わりだ。

「生きているだけでいい」とか、「頑張っていればいい」とか、そうした言葉を正当化するようになったら、もう終いなのだと思う。


 小さい頃は、いつでも夢を見ていた。

 四畳半の部屋がプラネタリウムになり、家にいるだけでも夢の中にいるようだった。

 なんでも楽しいことを見つけていた。


 いつからだろう——

 こんなふうに、終わったような人生を送るようになったのは。


 高校受験のときは、本当によく勉強した。

 そして、自分なりに満足のいく結果を出せた。


 良い成績を取れば、周りは期待する。

 その期待を裏切れば、もう二度と信頼は戻らない気がして、無難な選択をするようになる。


 本当は選択肢を広げるために、良い成績を取り、良い高校、良い大学を目指したはずなのに、気づけば選択肢はどんどん絞られていった。


 社会に出てからは、ただ同じ毎日を繰り返している。


 人はロマンを持たなければ、生きてはいけないというのに。

 ロマンのない人間は、水を失った魚のように、前へ進む力を持たない。

 自分を削りながら、ただ生きながらえていくだけだ。


 25歳。サラリーマン。大手金融機関勤務。

 傍から見れば、安定した「良い人生」なのだろう。

 周りは少しずつ結婚し始めている。彼女を作って、結婚して、家庭を築く。それが一般的な幸せのかたちだ。


 もちろん、いずれは家庭を持ちたいと思っている。

 だが、今の自分が求めているのはロマンスじゃない。ロマンだ。


 特別で、壮大で、誰も自分を知らない場所。

 そんな場所を求めながら、今日も眠りにつく。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 気がつくと、辺り一面――真っ白な世界にいた。どこまでも変わらずに続く白、それがこの空間のすべてだった。


「ご機嫌よう。」

 唐突に、すごく綺麗な女性が目の前に現れた。

「……どうも。」

 挨拶する間もなく、彼女はあっさりと言った。

「めんどくさいので、かいつまんで話しますわ。いいですね?」

「え、あ……はい。」

 なんだこの人。適当すぎないか。

「ああ、そう言えば。私は女神です。」

 ――って、女神かい!

 これが女神で大丈夫なのか。


「あなたは死にました。これから剣と魔法の世界に転生します。転生といっても、ほとんど転移みたいなものです。 あなたの身体は、そのままでは耐えられそうにないので、造り替えます。 見た目は……まあ、適当に変えておきます。 精神はそのままなので安心してください」


 適当に変えておく、ってなんだよ。それはそれで気になるだろ。……てか、俺、死んだのか?

 まあいい。剣と魔法の世界で来世を過ごせるなら、死んだ理由なんてどうでもいい。


「なんで俺は転生するんでしょうか?」

「あなたは、そういう星のもとに生まれてきたからです。あとは、好きに生きていただいて構いません。」


 不安はある。だが、ここで深く考えたところでどうにもならない。

 それなら、要望だけはきっちり伝えておこう。

「仲間が欲しい。気の合う連中と、楽しく悠々自適に暮らしたい。……それと、見た目は任せます。綺麗で、美的感覚の優れている女神様に」

 女神は、わずかに頷いた。


 次の人生では、社会に縛られず、自分のために生きたい。


「それでは、異世界に飛ばします。 “ステータスオープン”と唱えれば、自身の情報が確認できます。 それと、起きたら北へ進みなさい。それでは、よい異世界ライフを」


 世界が崩れるように、視界がぐにゃりと歪み、足元が消えた。

 ――落ちていく。

  まるで、遊園地のアトラクションでも体験したことのないような落下感。

  強いて言うなら 夢の中で落ちる、あの嫌な感覚に近かった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 目を覚ますと、そこは緑あふれる草原だった。

 頬を撫でる風はやわらかく、草の匂いが鼻をくすぐる。

 空はどこまでも高く、現実離れした青さをしていた。

 ――夢、か?

 そう思った瞬間、ポン、と軽い音がして、目の前に半透明の画面が浮かび上がる。

 ステータス画面だった。




 ▼ ステータス


【名前】:―――

【年齢】:18

【種族】:魔人

【称号】:魔人の真祖

【レベル】:1


 ▼ ユニークスキル

 ・魔人錬成(サタン・サーヴァント)


 ▼ スキル

(未習得)


 ▼ SPスキルポイント:500


 ▼ 装備

 ・魔掌の双套(ましょうのそうとう)


 魔人……!?

 いや、作り変えすぎだろ。もはや人間ですらない。


 《魔人》

 魔と聖、相反する二つの特性を併せ持つ存在。


 説明、少なすぎるだろ。

 まあいい。いずれ調べていけば分かるか。

 それに――魔と聖、か。

 響きはいいし、どう考えても強そうだ。とりあえずは当たりだ。


 そして、もう一つ。称号《魔人の真祖》。


 《魔人の真祖》

 この世界で初めて“魔人”となった者に与えられる称号。

 ……初めて、だと?


 称号効果:

 ・レベルアップ時の恩恵が【極大】に上昇

 ・取得経験値量が大幅に増加

 ・レベルアップ時のステータス上昇量が増加

 ・スキルポイントの獲得量が増加


 ……盛りすぎだろ。

 調べるも何も――俺が一人目の魔人ってことか。


 そして、さらに目に入ったのは――


 ユニークスキル魔人錬成(サタン・サーヴァント)

 効果:生物を強制的に“魔人”へと変化させ、自らの支配下に置く。残り8体。


 魔人錬成(サタン・サーヴァント)か。やばそうだが、使ってみればわかるか。


 スキルはまだ未習得。

 どうやら、スキルポイントを消費して習得する仕組みらしい。焦る必要はない。

 遠くに見える街に着いたら、じっくり選ぶとしよう。

 どんなスキルがあるのか、非常に楽しみだ。


 ――と、そこでふと気づく。

 そういえば、服も着ていた。


 白を基調とした、和装を思わせる軽装。

 上衣はゆったりとした白い衣で、襟はやや高めに立ち上がり、胸元はすっきりと閉じられている。肩や袖まわりには適度なゆとりがあり、動きやすさを重視した作りに見える。袖は広がりすぎず、実戦向きに簡素化された印象だ。


 その内側からは黒い長袖のインナーがのぞいており、特に前腕には包帯のように幾重にも巻かれた黒布がきっちりと巻きつけられている。手首から肘にかけて密に巻かれているため、防具兼サポーターの役割も果たしていそうだ。


 腰には幅広の黒帯を締め、全体のシルエットを引き締めている。帯は装飾を排した無骨なデザインで、武人らしい実用性が際立つ。下衣も白で統一され、上衣と自然に繋がる流れるようなラインを描いている。


 色味は白と黒のモノトーンでまとめられ、装飾は極力排されている。華美さよりも機能性を重視した、静かな強さを感じさせる装束である。



 そして、黒色の手袋。

 名を魔掌の双套(ましょうのそうとう)

 ・消失(ロスト)

 ・再現(リバイバル)

 二つのスキルがあるそうだ。今後、すぐに試す機会があるだろう。



 重要なことを忘れていた。

 近くの水たまりを覗き込むと、そこに映っていたのは――

 スッと通った鼻筋。


 そして、なにより目を引いたのは、澄み切った空を閉じ込めたようなーーいや、空よりもなお深い”瑠璃色の瞳”だった。 その青はただ美しいだけでなく、覗き込めば引き摺り込まれそうなほど澄み、同時に、刃のような鋭さも宿している。太陽の光を受けて静かに煌めくたび、その瞳はまるで世界の全てを見透かしているような錯覚すら抱かせた。


 小さく整った顔立ちに、光を浴びてほんのり青く透ける黒髪。

 身長は180センチくらいあり、体格もがっしりと筋肉がついていて、すらっと美しい体だった。

 ……以前とは完全に別人だった。


 前世の俺とはかけ離れた、美形の顔立ち。

 あの頃はモテなくて、それなりに苦労もしたけど……今世は、その点は心配いらなそうだ。女神様には本当に、感謝感激雨あられである。やはり、美人は美的感覚に優れているようだ。


 魔人といっても、見た目は人間とほとんど変わらない。

 これなら、人里にも普通に溶け込めそうだ。


 女神様いわく、「北へ進め」とのことだったので、とりあえず北を目指すことにした。


 ……とはいえ、北には何があるのかは教えてもらっていない。

 まあ、行けばわかるか。


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