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異世界から来た不良召喚術士  作者: 平位太郎
第5章 闘技場の都市へ!
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第六十六話 どれにしようかな?

 入った先は薄暗い酒場となっている。

 奥の方では簡素な舞台があって、申し訳程度の布切れ(とはいえ、装飾も多くて安っぽさは感じられない)を身につけた女が踊っていた。舞台袖からは弦楽器や打楽器の音色が聞こえ、女の踊りをさらにリズミカルなものとしている。


(うむ。ポールもあるな。なにをどうやってるのか知らんが、ピンク色の照明もあるし。こうでなくちゃ) 


 怪しい雰囲気を満喫しながら歩いていると、店員らしき男が寄ってきた。どうやら店内における案内役らしい。


「いらっしゃいませ。今日は飲んで行かれますか? それとも……」


 下卑た笑みを浮かべる男を一瞥し、弘は同様に下卑た笑みを浮かべた。


「飯と酒も欲しいが、久々に女だな。なあ? 本当にヤっていいんだろ?」 


「は? はあ、春を売るという意味では、その……お金次第ということになりますが?」


 店員が戸惑っている。無理もないだろう。弘は日本の風俗店の感覚で質問をしたのだ。店員にしてみれば、金さえ受け取れば指定の女を抱かせるのは当然なので、改めて『金払って女を抱いていい?』といった質問が来るとは思わなかったのである。 

 その辺は弘もすぐに気がついたので、手を振ってごまかすと店員に顔を寄せた。


「いやあ、こっちの話だ。それで? 美人さん、居るのかい? いくらなんだ?」


「そりゃあもう! 外で聞いたかもですが、色々居ますよ~? 向こうで水晶玉に写し身を出して選んでいただけます」


「そりゃあ便利だ」


 汚いカタログに手描きの似顔絵、もしくは待機室を覗いて選ぶとか、そういった手順を考えていただけに弘は感心した。さっそく案内されるままについて行くと、酒場の隅にこぢんまりとしたカウンターがあり、その脇に扉があった。


「では、こちらを御覧ください」 


 言いつつカウンター上へ台座付きの水晶球を置くので、ソフトボール大のそれをジイッと覗き込むと……本当に女性の立ち姿が映し出される。


(お~、凄ぇ。まさにファンタジーだ。オーバーテクノロジーだ。元の世界にも、こんなのがあれば……) 


 などと感心したが、よくよく考えればノートパソコンで済む話なのだ。


(壁に埋め込み式のディスプレイとかな~……まあ、いいや)


 何となく微妙な気分になったが、今重要なことは買う女を決めること。

 聞けば、水晶球の表面を指でなぞると次の女性が表示されるらしい。まるでスマホである。


「こういう水晶球って、値が張るんじゃないのか?」


「え? ええまあ、それなりに」


「ふうん……」


 企業秘密かどうなのか、案内係が多く語らないので弘は質問を打ち切った。客の立場なのにアレコレ踏み込んでも良いことはないからだ。それに、どうしても仕組みが知りたかったら、ターニャやメルなど知り合いの魔法使いに聞けばいい。


「なあ? 指でなぞって次を……って、ここは何人女が居るんだ?」


「うちはディオスクでも大手ですから。ざっと20人ですね」


 大手でも20人程度……それが多いのかどうか、弘にはよくわからない。


(風俗のチラシだと数人ぐらい? 手のひらで顔隠して載ってるぐらいだったけどな)


 そう考えると多いように思うが、20人くらいなら次々に画面スクロールすればアッと言う間に閲覧できるだろう。

 そうして閲覧していくと、さすがと言うか……確かに美女や美少女ばかりだ。中には熟女が居たりもするが……。


(できりゃあ同い年ぐらいか、ちょっと年上ぐらいかなぁ……おっと、そう言えば……)


 客寄せ口上で、気になることを言っていたのを弘は思い出す。確か……。


「そういや外で『大きな声じゃ言えない』がどうとか言ってたけどよ? この中に居るの?」


「ああ、アレは……マニアな方向けの女の子が居るってことで。いえ、この中には居ないんですけどね? 実はその……」


 案内係が顔を寄せてくる。どうやら小声で話したいらしい。店内はダンサーの踊りに合わせて音楽が流れているので、そうでもしないと内緒話ができないのだ。もっとも、今ここに居る客らは知っている可能性があるから、単に店員による『演出』なのかも知れない。


「亜人……なんですよ。狼獣人とか半馬人とか」


「ほ、ほほう。それはまた……」


 この世界に来てからこっち、亜人と言えばゴブリンやオークを見た程度で、獣人等の亜人は目撃していない。そのうち出てくるだろうなとは思っていたが、よもや売春宿で登場するとは……。


(狼獣人はイイとして、半馬人ってケンタウロスだよな? いったい、どうしろってんだ?)


 元の世界のネット上では、そういう体格的に人間から逸脱するような亜人でも性の対象として見られることがある。その辺の知識に疎い弘は首をかしげたが、ならば……と案内係に聞いてみた。


「その中にエルフって……居るのかな?」 


 エルフと言えば元の世界では、ファンタジー小説やRPGに登場することで知られる亜人である。元ネタを探ると北欧神話に行き着くが、線の細い美男美女揃いというイメージは、イギリスの小説家の作品から来ているらしい。

 他に有名な特徴と言えば、森の妖精という立ち位置からか気位が高く、人間を見下し、大地の妖精と呼ばれるドワーフ族とは仲が悪いこと。


(そういうのがテンプレなんだが、俺の世界じゃあナマで拝むこたぁありえねーからな)


 金を払ってエルフ女を抱けるというなら、是非とも体験してみたい。

 だが……。


「エルフ……ですか?」


「うっ!?」


 突如、案内人の眼光が鋭くなったので弘は呻いた。


「一人だけ居ます。うちのは……お高いですよ? 失礼ですが、ご予算は心配ありませんか?」 


「なんか危ない雰囲気になってきたな? 一応、値段を聞いておこうか?」 


 こういう悪い雰囲気は大好きなので、ノリノリで聞いてみたところ……なんと銀貨15枚であるという。日本円で言うなら約15万円と言ったところだ。


(高ぇ!? マジかよ! ぼってるんじゃないか!?)


 出せない金額ではないが、聞けば小一時間程度の利用時間になるとのこと。

 1時間あたり銀貨15枚。そう思うと、やはりお高く感じてしまう。


(だが、ここで引いたら男として駄目な気がするぜ! そうだ、まずは見てみないことにはな!)


 いくら高値……もとい高嶺の花であっても、自分の好みから外れているのなら用はない。他を探せばいいのだ。


「金なら心配ない。まずは見せて貰おうか?」


 そう言ったところ、案内係は別の水晶球を取り出した。

 そして案内係が幾度か操作した後に、水晶球を差し出すので覗いてみたところ……。


「こいつは……」


 そこに映し出されていた女性は、真っ直ぐな金髪をポニーテール風にまとめ、その耳は笹の葉のように尖っている。まさにエルフだった。

 そして確かに美しい。これなら1時間で銀貨15枚出しても惜しくはない。


「けどよ? 高値の理由はエルフだからなのか?」


「このエルフ女、実はワケありで……まあ、とある氏族で族長の身内だったとか何とか。本当かは知りませんけどね」


 なるほど、普通はそういう身分のエルフが身体をひさぐとかはないだろうから、店員が言うとおりワケありなのだろう。裏社会とかエルフ狩りとか、そういう感じなのかもしれない。

 ネット上のエロ小説でしか見聞きしたことがない展開に……弘は興奮した。


「いいねぇ。じゃあ、このエルフで頼むわ」


「ありがとうございます! ……前金制で銀貨15枚になります」


 正式に金額提示されたので、弘はズボンのポケットに手を突っ込んだ。


(銅貨はともかく、銀貨はアイテム欄に収納してるからなぁ……)


 案内係に見えないことを良いことに堂々とステータス画面を展開し、ポケットの中でアイテム欄から銀貨を取り出す。


「はい。銀貨15枚ね?」


 差し出された案内係の手のひらに硬貨を乗せた。銀貨15枚ともなると、大金に羽が生えて飛んでいくような気分になるが、なぁに浪費を反省するとしても後悔はしない。なぜなら、このあと抱くのはナマエルフの美女なのだ。


「確かに! お客様、お一人ご案内~♪ 1番部屋だよ~♪」


 そう言うとカウンター脇の扉から、中年の……しかし、身なりは割とちゃんとした男が出てきて、弘を案内してくれる。


(大声で1番部屋とか言いやがって。目立ったらどうしてくれるんだよ?)


 いや、ダンス音楽で騒がしいから大丈夫かも……と、舞台前のテーブル群を見てみると、幾人かの男が視線を向けてきていた。やはり聞こえたらしい。


「ちっ」


 軽く舌打ちすると、弘は中から出てきた男に続いて、そそくさと扉の中へ入っていくのだった。


次回以降、数日おきの投稿にさせて頂きます。

最近、弘がゲスい感じで申し訳ないです

なにしろチンピラなものでして

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