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異世界から来た不良召喚術士  作者: 平位太郎
第4章 他パーティーにて研修中!
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第五十一話 伝令走る

 戦い終えて、両パーティーは村長宅1階……広間にて合流を果たしていた。

 メルがムーン達に迎えられている一方、弘もジュディス達に囲まれている。

 トイレに出かけた後どうしていたのか?

 2人だけの時に襲われはしなかったのか?

 皆の質問に答えている内、頭内に巣くう小蜘蛛の話となった。


「なんだ、立て籠もり組の方でも見た奴が居るのか。けど俺は口下手だからなぁ。学のあるメルに聞いた方がいいと思うぜ? お~い、メル~? みんなに蜘蛛の話ぃ頼んます~」


 弘が呼びかけると、仲間と談笑中だったメルが頷く。


「うむ。引き受けた。どうせムーン達にも説明しなければいかんしな」


 そこで、せっかくだから場所を変えようということになった。

 村長宅は広いが、どこもかしこも村人達の死体だらけで、落ち着いた話ができそうになかったからだ。

 数分後。

 村長宅向かいの民家に移動した弘達は、一応、家主に呼びかけてから内部へ入って行く。大人数で踏み込んで誰も出てこないあたり、家人は多くの死体の中に居るのだろう。

 村長宅と比べると手狭な家だったが、取りあえず一晩しのげるなら何だっていい。弘達は村長宅から持ち込んだ椅子を寝室に並べ、併せて拝借してきたランプ類で照明を確保した。

 こうして落ち着いて相談できる場所を確保すると、その後は魔法使いメルによる頭内小蜘蛛の推察講座となる。

 ジュディスら『村長宅立て籠もり組』は何度も驚きながら話に聞き入っていた。


「つまり要点をまとめると、こうなる。大量の小蜘蛛が脳に成り代わって村人を支配しており、雷撃魔法のようなダメージにはめっぽう弱く、体外に出たら即座に死ぬということだ。あと、ナクラ達の様子を見るに、人間を襲って仲間を増やすようだな」


「耳や頭の傷から蜘蛛をあふれさせる奴が居たから、何かと思ったが……」


「そういうわけだったのね。あ、駄目。思い出したら気分悪くなってきた……」


 ベッドで隣同士に座るムーンとジュディスが話し合っている。


「ところでよ?」


 メルの話が一段落ついたところで、椅子に逆向きで座っていたラスが挙手した。


「なんで蜘蛛が電撃に弱いってわかったんだ? メルって雷撃魔法は使えたっけ?」 


「それは……」


 名前を出されたメルが、ジュディスの隣で椅子に腰掛ける弘へ視線を向ける。彼の仕草を見て、他のメンバー達も弘を見た。

 

(いや、ムーン達だけじゃなくてジュディスらもかよ? この機会に色々聞く気か? 勘弁してくれねーかな……)


 また召喚武具が注目を集めてしまったことにゲンナリしつつ、弘は乾いた声で笑う。


「はは。い、いやあ……変わった魔法武器を持ってるから……なんて、ははは……」


 無論、そんな中途半端な説明が通じるわけもなく、皆に根掘り葉掘り聞かれて召喚武具のことを説明する羽目になるのだった。  


(こういう時、きっぱり説明拒否できる図太さが欲しいぜ~) 


 おそらく、学生時代なら「知るかよ! なんで説明とかしなきゃいけねーんだ? ああん? めんどくせぇ!」で済ませてただろう。

 これが歳を取るということなのか?

 能力の珍しさについて語り合われる中、弘が「学生時代のノリが懐かしいよな~」などと黄昏れていると、ラスが再度挙手した。


「それはそうとよ? 八本足のヒグマってのはどうなったんだ? ありゃガセネタか?」


 今回の依頼に関わる重大な指摘に、皆が顔を見合わせる。

確かにラスの言うとおり、本来は、その八本足のヒグマを倒すことが受注した依頼なのだ。


「ナクラの話だと、八本足のヒグマと一緒に大きな蜘蛛が何匹もいたってことよねぇ? ヒロシ? どう思う?」


「え? 俺?」


 口から魂吐くように脱力していた弘は、ウルスラに話しかけられて顔を上げた。気がつくと皆が弘を見ている。 


「そういうの考えるって、魔法使いの方がいいんじゃないか? メルとかターニャとか?」


 ゲーム的に考えれば、パーティーの知恵袋役は魔法使いと相場が決まっているのだ。

 だが、ジュディス達は弘の意見が聞きたいと言う。


「だって、ヒロシって普通の冒険者と雰囲気が違うんだも~ん」


「うむ。それは俺も感じるな。違った視点からの意見を聞くのもいいだろう。それに、さっきの戦闘でも活躍したことだし、もっと積極的に発言していいと思うぞ?」


 ジュディスとムーンが、2人で追い込んでくる。

 このように言われた弘であるが、言葉どおりの意味で受け取る気にはなれなかった。 


(こいつら、俺が召喚武具とか珍しい能力持ちだからって、俺を試しにかかってるんじゃないか?)


 確証は持てないが、半分ぐらいは当たってそうな気がする。

 特にジュディスの「雰囲気が~」という言い草が気になった。

 そもそも弘は異世界人であり、日本人なのだ。この世界の人間ではないという事実があるため、彼女の口振りにはドキリとさせられた。


(しかも経歴およろしくない、元暴走族のチンピラだしねぇ。何か勘づかれるところでもあったか?)


 自嘲する弘であったが、ジュディス達の言葉にも一理ある……とも考えている。

 自分の日本人的(元ヤンキーだが)視点が、こっちの世界の人間と比べて『どれほど違った視点』になるのか?

 そう考えると、少しは興味があった。


「そうだなぁ……」


 例によってゲーム知識や、漫画映画などの知識を動員して考察してみる。 

 八本足のヒグマや、ナクラが言っていた大蜘蛛が出現しない理由。


「単に今出てきてないだけで、何処かその辺にいるんじゃないか?」


 この当たり障りのない返答に、皆が肩を落としたが、続く言葉を聞いて一転、興味深げな表情になる。


「それより気になることがあるんだ。ジュディスやムーンは、ナクラが言った大蜘蛛と、村人の頭から出てきた蜘蛛……同じ種類の蜘蛛だと思うか?」


 この問いかけに、ジュディスとムーンが顔を見合わせる。


「言われてみると、どうなんだろうな? ナクラから大蜘蛛の話を聞いていたから、漠然と関連性があるように思ってたが……」


「大きい蜘蛛と小さな蜘蛛、それぞれ別の種類かもしれないってこと?」


 弘は頷きつつ首を傾げた。


「俺はよ、『どう思うか?』を聞かれて考えてるだけだから。色々考えてみたんだ」


 この事件で登場する蜘蛛が大も小も同じ種類で、大蜘蛛が親だった場合。卵の時点で放置するタイプなら、村人に寄生した蜘蛛を殺したことを理由に襲ってくることはないだろう。逆に子育てするタイプなら、子に手出しした自分達を放っておかないかもしれない。


「ふうん。そう考えると、そうかもねぇ。他には? 何か考えたんでしょ?」


 ジュディスにせっつかれて、弘は別考察を述べる。


「そもそもナクラが……と言うより、ナクラの頭に居た蜘蛛が嘘をついたって可能性もあるぜ?」


「と言うと?」


 興味深げに聞いていたメルが反応したので、弘はメルに向き直った。


「初めから大蜘蛛なんてのは居なくて、この辺に居たのは生き物の頭を乗っ取る小蜘蛛だけだ……とかな」


「でもでも、『八本足のヒグマ』の目撃例は、別の村でもあるんですよぉ?」


 そう発言したのはターニャだった。彼女はウルスラに寄り添うように座っていたが、未知の生物について語り合うのを聞いているうちに興味が出てきたらしい。

 八本足のヒグマは他の村でも目撃された。

 それについては事実だろうと、弘は思う。


「ああ。だからさっき言った『実は大蜘蛛は居ない』説と矛盾するみたいだが……実は俺の知ってる映画……じゃなかった。おとぎ話で、小さな虫が大発生して人を襲って……」


 最終的には、ある一人の体内で増殖だか融合するかして1体の巨大なモンスターになる……というものがある。ちなみに弘が見た映画だと、その虫というのはゴキブリだったのだが、そこは敢えて説明しなかった。


「じゃあ、八本足のヒグマってのは、ヒグマの体内で蜘蛛が増えてできたモンスターだと? まさか……」


 サイードが「信じられん」といった顔で言うが、弘は肩をすくめてみせる。


「いや、俺は思うところを聞かれて……こう言っちゃ何だがテキトーに喋ってるだけだから。どこに本当があるかは責任持てないぜ? で、俺の妄想話は置いておくとして……ジュディスとムーン達に聞きたいことがあるんだけど」


「あたし達に聞きたいこと?」


「なんだ?」


 勝手に入った民家の寝室。そこで車座になってる面々を見回しつつ、弘は言った。 


「俺達、これからどーすんだ?」


 よくわからない蜘蛛にはめられて、村人が全滅するような大規模戦闘をやらかしたのである。

 ここから先の立ち回り方によっては、村一つ殲滅した凶悪犯罪者となってしまうのではないか?

 このことについて弘が指摘すると、他の冒険者達は動揺しつつ相談し始めた。


(犯罪者って言うか、お尋ね者になるって感じかなぁ。……暴走族時代は、ケーサツの世話になっても武勇伝みたく思ってたけどなぁ……)


 事実、喧嘩で現行犯逮捕されたことがあって、警察署で説教されている時の弘は鼻高々な気分だった。

 社会に出ると、そういう経歴が……顔の傷もだが……ことごとく足を引っ張ってくれたので、皆が慌てる気分が多少ながら理解できる。

 そして、両パーティのメンバーが真剣な表情で協議した結果、次の方針が決まった。

 まず、この村で待機。朝になったら、一番足の速い偵察士のノーマがクロニウスへ向かい、冒険者ギルドに通報。ギルド上層部の指示を仰ぐのだ。


「ありがちなパターンとしては、領兵と一緒にギルドの幹部が来て、俺達は事情聴取を受けるって感じかな?」


 ムーンが渋そうな顔をして言う。

 何か嫌なことでもあるのか聞いてみたところ、「俺達が悪いわけでもない事件のことで長々拘束されるんだぞ? 嫌に決まってるじゃないか」とのこと。

 確かに嫌だなぁと納得した弘は、ふと思い当たって挙手した。


「クロニウスまで戻るんだったらさ? 俺……それと、もう1人ぐらいなら、割と早く着けると思うぜ?」


 言うまでもなく、弘があてにしたのは召喚物品『ママチャリ』である。

 夜の山道を走るのは危ないが、麓まではおおむね下り道だし、下りきってしまえば後は平坦地ばかりだ。

 偵察士のノーマの足が速いとは言え、さすがに自転車移動には敵わないだろう。


(そう思うんだがなぁ。でも、なにしろファンタジー世界だからな~。実は偵察士の方が速かったりしてな)


 とはいえ弘自身、レベルアップにより飛躍的に身体能力が向上している。後ろに1人乗せた状態でも、結構イイ感じの早さでクロニウスに到着できる……はずだ。


(……う~ん。なんか自信がなくなってきたな)


 弘の発言を受け、ムーンはジュディスと相談していたが、やがて「ノーマよりも早く移動できる根拠は何だ?」と聞いてきた。

 当然の疑問だと判断した弘は、皆を外へ連れ出すとママチャリを召喚する。


「え~と、ママチャリ……出ろ」


 音もなく出現したママチャリを前に、ジュディスとターニャが声をあげた。


「うわ。なにこれ? 乗り物?」


「椅子が1つだけですけど、後ろの台にも1人座れそうですぅ」


「うむ。実に興味深い。そもそもヒロシの能力自体が興味深いのだが……」


 メルが進み出てママチャリを眺め回し、次いで弘を見る。


「ヒロシ? これはいったい、どういう物なのかね?」


 聞かれた弘は、椅子……サドルにまたがって座り、ペダルを漕いで進む乗り物だと説明した。

 ラスなどは「結局は人力かよ? そんな鉄の塊動かすぐらいなら、走った方が早くね?」等と疑わしそうな顔をしていた。しかし、下り坂では楽だし、平坦地でもある程度の勢いがつけば楽だと説明したところ、どうやら納得したようである。

 そして、一連のママチャリ……自転車に関する話を聞いて目を輝かせたのがウルスラだった。


「凄いわ! それをドンドン召喚すれば売って大儲けできるじゃない! ヒロシ~? ちょっと相談が~……」


 さすがは商いの神の信徒、思考が商益優先である。

 だが……。


「夢見てるところ悪いんだが。召喚した自転車は、俺から1m……そういやこっちの距離の単位ってなんだっけ?……ああ、つまり1歩か2歩離れたら消えちゃうんだ」 


 この説明でウルスラは引き下がったが、微かな舌打ちの音を弘は聞き逃さなかった。


「よ、要するに俺が乗ってペダルを漕ぎ、荷台に1人座れば……クロニウスまで2人、素早く移動できるってことだ」


 そう言って弘が説明を締めくくると、ムーンとジュディスの判断で弘がクロニウスに向かうこととなった。そして、せっかく荷台にも1人座れるのだから、誰が同行するのか? という話になったが……。


「じゃあ、あたしが行くって事で♪」


 嬉しそうにジュディスが申告してくる。

 最初、男性陣の誰かが……と話し合われたが、鎧等の装備を外すわけにもいかないので、身軽な女性の方が良いだろうということになり、単独での戦闘力が一番高いジュディスが同行することになった。

 ちなみにノーマが共に徒歩出発する案も出たが、「その自転車ってのが、それなりに早いのなら辞退させて貰うわ」とのこと。


「偵察士って言っても、元は盗賊上がりだし……多少足が速いだけじゃあねぇ……」


 そう言ってノーマは肩をすくめる。

 自転車と徒歩移動で速度に差が出るし、かと言って自転車側で徒歩のノーマにあわせるのでは本末転倒だ。また、速度差により距離が離れたとき、1人で行動するノーマがモンスターに襲われる可能性があった。

 そういった事情により、2人でクロニウスに向かうこととなった弘とジュディスは、皆に見送られながらレクト村を出発したのである。






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