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異世界から来た不良召喚術士  作者: 平位太郎
第4章 他パーティーにて研修中!
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第四十一話 ムーンパーティー

 出発初日。

 傾きかけたの陽の下、弘達は街道を東へ進んでいる。

 実績的にはムーンパーティーの方が上のようで、ジュディスのパーティーは前を歩いていた。


「俺らが前を歩いてるのは理由があるのか?」


「あたし達がモンスターに襲われたとしたら、後続のムーン達は状況を見て加勢できるでしょ? それに、後方から襲撃を受けても、ムーン達は割と熟練者だから対応できるでしょうしね」


 声を潜めて聞く弘に、ジュディスも同じく小声で教えてくれる。


「なるほどな。人数だけじゃなくて、腕前も上ってことか」


「そうなんだけど……ムーンのパーティー、噂で聞いてたのとは編成が少し違ってるわね」


 どういう事か聞くと、ジュディスが聞いていたムーンパーティーの編成よりも、戦士が1人、偵察士が1人増えていると言う。


「偵察士ってなんだ?」


「元盗賊ギルド構成員の盗賊技能者ってことよ。隠密偵察が得意だったり、尾行任務ができたり、罠を発見したり解除したり。昔は、登録職業名も盗賊で申請してたみたいなんだけど、さすがに聞こえが悪いので偵察士ってことにしたわけ」


 今では、ギルドで盗賊技能の訓練所を設けていたりするし、そこで勤める教官は元盗賊経験者が多いと言う。


「本家本元の盗賊ギルドからはイイ顔されていないみたいだけど、登録名を偵察士にすれば、盗賊でも堂々と冒険者依頼に参加できるから黙認状態みたい」


 ジュディスの説明を聞きながら、盗賊技能者が居るのなら安心感が増すな……と弘は思っていた。今回の依頼はモンスター討伐なので、矢面に立つという意味では偵察士の出番は少ないかもしれない。しかし、モンスターの行方を追ったり、罠を仕掛けたりといった活躍が期待できるだろう。


(なんて考えちゃったりしてな。いやあ、ゲーム知識も役に立つもんだ)


 そうしてクロニウスを出てから街道東進が続いていたが、夕方頃になって、街道際の空き地でキャンプを張ることとなった。

 空き地と言っても草むらがほぼ無い場所という意味であって、元の世界で言う『住宅造成地』などのように整地された場所ではない。ただ、その場所は以前にキャンプ地として使用されたことがあるのか、大きめの石などは片付けられていた。


「こういう場所って、街道には結構あるのよね~。キャンプしやすくて大助かり♪」


 ウルスラが機嫌良さそうに荷物を下ろしている。

 ちなみにキャンプを張ると言っても、テント泊をするのではなく、各自がマントや毛布などの寝具類にくるまって眠るのだ。

 もちろん、1人ないし2人ほどで見張りをし、交代で眠ることとなる。

 その後、目につく若木等を撤去した弘達は合同で食事の用意をした。そして、一つのナベで作ったシチュー……のようなごった煮を食べた後で、改めて自己紹介をしている。

 ジュディスのパーティーについては、先に酒場でした自己紹介とほぼ同じ内容なので割愛するが、弘に関しては自身を『召還戦士』ではなく『戦士』と名乗っていた。

 職業名登録はほぼ無制限だが、長い名称を設定する者が居るので、省略して名乗ることが許可されている。この慣習を利用したのだ。

 ちなみに、この手はジュディスから直前に教わったのだが、弘にしてみれば「だったら最初に教えてくれよなぁ。ギルドの受付女も気がきかねーし!」とか「知ってたらジュディス達に召還戦士とか名乗らなくて良かったんじゃねーか」となるわけで、少々気分を害している。


「ジュディスパーティーの名は聞いてるぜ。クロニウス中心で動いてる女性パーティーだ。あのリーダー、ジュディスって娘がすんげぇ強いんだと」


 ムーン側の若い戦士が、隣に座った僧侶に話しかけているのが聞こえた。それを横目で見たムーンが自分達の自己紹介を始める。

 ムーンは35歳の男性戦士で、顎と口まわりに髭を生やしたラウンド髭という髭形が印象的だ。彼は、かなり大きな剣を背負っている。

 弘のバスタードソードよりも刃渡りがあり、刃幅も大きい。ムーンはガッシリした体格で、それなりに重そうな板金鎧を着ている。この鎧装備で身軽に動けるとしたら、あの大剣を片手で振ることも可能だろう。


(ブロードソード……いやグレートソードって奴かな?)


 どちらかと言えば刃渡りの長さが目立つので、後者の部類のようだ。

 これを振り回し、圧倒的な破壊力で相手を切り倒す戦い方をするのだろうと、弘は推測している。


(ま、見たまんまだけどな)


「そんなわけで、こっちでリーダーをやってるムーンだ。先行した奴らを叱り飛ばしてやらないといけないから、明日は強行軍になる。みんな、仲良くやって急いで行こうじゃないか」


 話しぶりからすると結構なベテランらしい。あのジュディスが、初対面であるにもかかわらず丁寧な態度で接していることから、冒険者うちでは名の知られた存在なのだろう。

 言動の節々で見受けられる、他パーティーの抜け駆けに対する焦りが気になるものの、この男は頼りになる……と弘は感じていた。

 ムーンの次は、若い戦士に話しかけられていた魔法使いだった。

 名はメルと言い、金髪を短く刈り込んでいるが、その額は広い。学者のような気むずかしい雰囲気を醸し出しているものの、ジュディスに何か質問されたときは、普通に受け答えをしていた。


(歳は50前後ってところか? ムーン側の最年長だな)


 リーダーであるムーンから『先生』と呼ばれていることから、パーティー内でも尊敬されているのだろう。


「メルだ。パーティーの連中からは『先生』などと呼ばれているが。好きなように呼んでくれていい。役割分の仕事はするつもりで居るから、専門分野では任せてほしい」


 先程は学者と表現したが、こうして口ぶりを聞いていると博士か、教授といったイメージになる。

 続いて自己紹介をしたのは、褐色肌で鼻下に髭を蓄えた中年男性。なお、弘による初見印象は「アラブ系の人?」である。

 ムーンパーティーでは最も大柄で、それに見合った腕力を有していそうだ。


「サイードだ。南にある砂漠の国で僧侶をやってる。この辺じゃあ知られていない宗教だが……ま、それはいい。悩み事があったら相談に乗るから、気楽に話しかけてくれ♪」


 僧侶にしては軽い物言いだが、それを言い出すとジュディスパーティーにも利益優先の僧侶が居るので、敢えて突っこまない方がいいだろう。


「ラスだ。戦士をやってる。歳は色男盛りの25歳♪ ムーン達にはクロニウスで声をかけられたんだ。戦闘もアッチの方もビンビンにできるから、頼ってくれていいぜ?」


 先程のサイードは軽い感じだったが、こっちは軽薄というイメージが強い。

 無精髭を生やした金髪の男で、ムーンよりは軽装甲な板金鎧を着込んでいる。武器は片手長剣で、円形盾を脇に置いていた。この円形盾はカレンが持っていたモノよりも大型で、直径は100センチほどありそうだ。

 だが、何よりも気になるのは、ジュディスパーティー側の女性陣に対して自己紹介中にもちょっかいを出す点である。


「なあ~、お嬢さん達? この仕事が済んだら俺と……大人の付き合いってやつ、してみない? むふふふ」


 対するジュディス達は、一様に嫌そうな顔をしていた。


(それなりに整った顔立ちなのに、チャラ男ぶりで損してるよな……)


 女性陣が無視を決め込んでいるようなので、弘も敢えて口出しはしない。

 遊びを求めている女性相手ならともかく、ジュディス達のような、身持ちの堅そうな女性には逆効果なのだろう。

 最後に自己紹介をしたのは、偵察士と思われる女性であった。


「ノーマよ。ムーン達にはクロニウスで雇われたの。よろしく……」


 黒のショートカットで、キリッとした表情が印象的な長身女性である。

 黒い衣服の上に革の胸当てを装着しており、その胸当て自体も、つや消し処理をした黒で染め上げている。 武器は腰の後で真横に差した短剣のようだが……。

 ちなみに、どの程度長身かと言うと、身長180センチの弘と同じくらいだ。モデル体型とも言える。

 言葉少ない紹介であったが、口調から察するに無口な性格なのかもしれない。 

 その後は暫く歓談したが、ラスがジュディス達に散々アタックした結果、閉口したジュディス達が弘の周囲に密集するように座る……という一幕もあった。

 そして話も尽きると見張り2名を残し、就寝することとなる。




「おい、先生? 交代だぜ? 起きてくれよ」


 少し離れたところで声がする。

 背負い袋から取り出したマントにくるまっていた弘は、薄目を開けた。

 たき火の向こう……ムーン側の寝位置でラスが立っており、メルを起こしているのが見える。

 ふと気がつくと、すぐ近くにジュディスが居た。


「交代か?」


「ええ。あたしよりも、あちらさんの声で目が覚めちゃったみたいね」


 苦笑しつつジュディスは座り込み、自らのマントで身をくるんだ。

 冒険者はよくマントを着用するが、風雨避けのみならず、野宿の際には寝具にもなる優れものなのである。


「ヒロシもマントを着けて歩けばいいのに」


「お国柄って言うのか、どうもマント着用で行動するのが性に合わなくてな」

 しかし考えてみれば、時代劇にも道中合羽を着た人物が登場する。


(あれだ。スゲェ長い爪楊枝をくわえた奴……)


 それを考えれば、日本人がマント着用で行動したとしても、何ら恥じ入ることはないのかもしれない。

 ジュディスに対し「試しに朝になったら着けてみる」と言い、弘は火の番を兼ねた見張りについた。

 たき火の向こうではメルが座っていて、夜空の星を見上げながら物思いにふけっている。あれでは見張りの役に立たないんじゃないか? と思う弘であるが、ああいう時折物思いにふける姿というのは、ゲームや漫画で見かける魔法使いに多いものだと納得もしていた。 

 メルとは特に会話をせず静かなものだったが、暫くした頃に、ラスがこっそりジュディス達に近づこうとして、気づいたムーンに叱り飛ばされている。


(……あのチャラ男、油断ならねーなぁ)


 自分はジュディス達の保護者や彼氏でもないが、パーティーメンバーの……それも女性の身の危険に関することなので、一応の注意はするべきだ。

 そう心に決めると、弘は割り増しでラスの寝姿に気を配りながら、朝まで見張りを続けたのである。


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