表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/17

8話 鑑定の儀

「鑑定の儀というと……」


「冒険者としての適性やスキルを測定する儀式です。よそのギルドでもやっていることですが。ロッカクさんは冒険者になるのは初めてですか?」


「ええ、まあ。前は遠くの街で商人をやっていたもので。宝玉狼が倒せたのは、まあ、たまたまです」


 日本で銀行員をしていた、というのが正確だが、まあ、嘘というほどではない。


 一瞬、アリスさんの眼が鋭く光った気がするが、すぐに彼女は微笑んだ。


「では、まずロッカクさんの鑑定からはじめますね。この水晶に手をかざしてみてくださいな」


 言われるままに、俺は水晶に手をかざした。

 すると水晶が光り輝き、俺の目の前に多くの文字列を浮かび上がらせた。


 どうやら、そこに書かれているのが俺の適性のステータスということらしい。

 現状の能力値を示すというよりは、将来の成長性を示すとのことだった。

 つまり才能ということだ。

 アリスさんが横からそれを覗き込み……苦笑した。


「ええと……物理攻撃がCで……あっ、知力がAですね。ほかは……」


 俺の適性は、軒並みDかEだった。

 アリスさんは言いづらそうにしていたが、俺のステータスはかなり低い部類になるらしい。

 特に魔法は攻撃系も回復系も適性が低く、たとえ習っても、まともに使うことは難しい。

 

「固有スキルは……『食材集め』ですね」


「なんですか、これ?」


「さあ、私も知りませんが……」


 まあ、名前からして戦闘に役立つとは思えない。

 鑑定結果はギルドで管理するらしい。

 アリスさんは書庫から冒険者台帳なるものを取りに行った。


 そのあいだに俺はクレハを振り返り、小声で言った。


「クレハ、鑑定されて女神だとバレない?」


「それは大丈夫だと思います。あの……ロッカクさん、鑑定結果なんて気にしてないでくださいね?」


 どうやら俺の結果が悪かったことを慰めてくれているらしい。

 俺は微笑んだ。


「ありがとう。でも、人選ミスじゃないかな……。どう考えても、俺では魔王を倒せないよ」


「そんなことありません」


 クレハはやけにきっぱりと断言した。いつもは気弱な雰囲気なのに、青い瞳には決然とした色が浮かんでいた。

 クレハが俺に寄せる信頼は、どこからくるのだろう?


「そうは言っても、俺のステータスの低さを見たよね? 女神のクレハがついているとしても、もっと有望な異世界人がいたんじゃないのかな」


「わたしには……ロッカクさんが必要だったんです。それに……場合によっては、魔王は倒せなくてもいいんです」


「え?」


 俺がクレハを見つめると、クレハはなぜか顔を赤くした。

 

「今のは忘れてください……」


 クレハは魔王討伐のために、俺をこの世界に送り込むと言っていた。

 そして、魔王の持つ「天の鍵」を手に入れて、願いを叶えるとも。


 なのに、いまクレハは魔王を倒せなくても良いと言った。

 クレハは何かを隠している。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ