6話 ロッカクとクレハの関係
冒険者としてギルドで登録するには、2万スートの金がかかる。
そうギルドのアリスさんは言った。
スート、というのはこの世界の金の単位らしいが、当然、俺はそんな金を持っていない。
あるのは日本の千円札だけだ。
クレハも首を横に振ったから、無一文らしい。
さて、困った。
いきなり壁にぶつかった。
とはいえ、解決策は無きにしもあらず。
俺はすっと赤い宝石をアリスさんに差し出した。
「これ、買い取ってもらえます?」
「おお! 宝玉狼の石じゃないですか。高く買い取りますよ。あと、狼の死体のほうは?」
「死体?」
「あの狼の肉はいい食材になるんですよ。煮込んで鍋にしたりとか。ご存じないですか?」
「いえ……」
しまった。
そうだったのなら、拾ってくるべきだった。
ともかく、俺は宝石を売払い、ギルドでの冒険者登録料を支払うことができた。
かなりレアなものだったらしく、高く売れたのが幸運だった。
俺が登録の手続をしているあいだに、アリスさんはクレハに興味を持ったのか、色々話しかけていた。
「こんな可愛い子がうちの冒険者になってくれるなんて幸せ!」
「あ、あの……」
クレハはおろおろとしていた。
人見知りなのだろう。
ただセーラー服はこの世界では目立つし、クレハは誰もの目を引く美少女だから、注目を集めても仕方ない気もする。
俺が手続を終えて振り返ると、クレハはアリスさんに抱きしめられ、困ったような顔をしていた。
「ろ、ロッカクさん……」
クレハが心細そうに、上目遣いに俺を見つめる。
俺は笑いながら、アリスさんに声をかけた。
「そろそろ離してあげてください」
「あら、残念」
そう言うと、アリスさんは手を離して、くすっと笑った。
「そういえば、ロッカクさんとクレハちゃん、お二人の関係は?」
俺とクレハは顔を見合わせた。
クレハはじっと青い瞳で俺を見つめる。
そして、クレハが小声で言う。
「えっと……ロッカクさんはわたしの保護者みたいな感じです。故郷の街で。家が近くで……」
「ふうん」
アリスさんが俺をちらりと見る。
怪しまれているのかもしれない。まあ、俺がクレハを誘拐したとか、そういう可能性もたしかにありうる。
実際にはクレハの自由意志でついてきているのだけれど、アリスさんが心配するのも理解できる。
クレハもそれに気づいたのか、言葉を重ねる。
「ロッカクさんは……いい人です。アリスさんが心配するようなことはありません」
「あっ、すみません。疑っているわけじゃないんですけど……クレハちゃんがそう言うなら、きっとだいじょうぶなのでしょうね」
アリスさんは微笑むと、それきりその話題には触れなかった。
代わりに、赤い布を机に敷き、大きな水晶を取り出した。
「それでは冒険者となるための、鑑定の儀をしましょうか」
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