6話 冒険者ギルド
さほど歩かずに、城壁で囲まれた街にたどり着いた。
街の名はレマットというらしい。
門番の兵士に教えてもらった。
俺はジーパンにTシャツ、クレハはセーラー服という格好だから、この世界では怪しまれるかと思ったが、すんなりと城門を通ることができた。
ただし、クレハの背に生えている白い羽根だけは隠してもらった。
神様だと自分から名乗っているようなものだからだ。
街の大通りを俺たちは歩く。門番に教えてもらったとおり、冒険者ギルドへ行くのだ。
クレハは興味津々といった様子で、街の中を眺めていた。
石畳の上を馬車が通っていく。
「本当にヨーロッパみたいですね」
「見たことがない?」
「神として天上からこの世界を見るときは、いつも遠くから眺めるだけでしたから。ジオラマみたいな感じでしたね」
「なるほど。そういえば、クレハはいつからこの世界の……神様になったの?」
「半年ぐらい前、でしょうか。何のきっかけもなく、急にでした」
「そしたら、日常生活に変化があって大変じゃなかった?」
「日本での話でしたら……あまり影響はありません。わたしがこの世界の神として活動しているのは、夜に眠っているあいだみたいなんです。逆にこの世界で眠りにつくと、日本に戻るんだと思います」
「クレハはまだ日本では生きているんだよね。良かったよ。俺みたいに死んだってわけじゃなくて」
「……ロッカクさんは、生きていたかったですか?」
「それほど日本での生活に未練はないよ」
仕事を辞めて無職になったばかりだったし、これといって将来に希望もなかった。
彼女もいなかったし、両親だってもう数年来会ってない。
親しい友人はいるから、彼らは悲しんでくれているかもしれないが……俺がいなくなって困るということはないだろう。
「少し……安心しました」
クレハは目を伏せていた。
やがて、俺たちは冒険者ギルドの前についた。
レンガ造りの立派な建物だ。
クレハによれば、この世界の冒険者ギルドは、魔王討伐のための組織であり、街の周囲の魔物たちを駆除するための組織でもある。
「いらっしゃいませ!」
扉を開くと、明るい声に出迎えられた。
女性が茶色のカウンターの後ろに立っている。
たぶんギルドの職員なのだろう。
深い赤色の髪を短く切りそろえていて、活発そうな黒色の瞳が俺を見つめている。
たぶん俺と同い年ぐらいで、かなり美人だ。
しかもワンピースの胸元が大胆に開いていて、大きな胸の上半分がほとんど見えている。
スカート丈もかなり短くて、白色の肌がまぶしかった。
「私はアリス。冒険者ギルドのギルドマスターです」
アリスという女性は柔らかく微笑んだ。
……ギルドマスター、ということはギルドのトップだろう。若いのにすごいな。
俺が見とれていると、クレハに袖を引っ張られた。少し頬を膨らませている。
「ロッカクさん……用件は?」
「あ、ああ。そうだった。俺たちは冒険者ギルドに入りたいんですが」
「冒険者登録ですね。承りました。た、だ、し♪」
アリスさんは大げさな仕草で人差し指を立てて、身をかがめた。
その弾みに大きな胸がたぷんと揺れる。
……わざとやっているんだろうか?
「登録には、一人2万スートのお金が必要ですが、よろしいでしょうか?」
俺とクレハは顔を見合わせた。