番外編:ヘルフリートの髪 ※イラスト有り
※この話は本編とは違う時間軸です。
最初はよく目に入るな、と思いながら見ていた。
目の前をうろうろと浮いているからだと思っていたが、そもそも髪の量も多いし髪が長いしで邪魔くさそうだ。
セオドアもそうだったが、どうしてこうも髪が長いのか不思議でしかたがない。
「どうかしましたか?」
俺がじろじろと見ているのに気が付いたのかヘルフリートは首を傾げながら此方を見た。
さっきまで俺が頼んでいた資料整理をしていたのに、すぐに此方の視線に気が付いて此方に近づいて来る。
「お前、髪の毛、邪魔じゃないの?」
ちょうどいいや、と思いながら十夜はヘルフリートの毛先を触りながら聞いた。
急に髪を触られたからか、一瞬、びくっと体を震わせてからヘルフリートは笑う。
「いえ、私たちの髪は命の源と同じようなものですから。魔力や知識など、足りない分はここで補っているのですよ。一つ、一つにセオドア様に貰ったものが入っているのです」
俺の指からするり、と髪を取って、少し自慢げにヘルフリートは言う。
手に触れた髪の硬さに納得した。
まるで細い鉱石のようなものを触っているのかと思った。
魔力や知識が入っているのならそれを守るためにも、こんな風に硬くなったのだろうか。
普通の髪と同じようにふわふわと動くのを見ていると、誰もこんなに硬いとは想像できないだろうな、と十夜はくすくすと笑った。
「セオドア様はまるで泉のような方です。私たちはそれを分け与えてもらっているのですが、セオドア様の知識にも魔力にもまだまだ足りません。セオドア様はとても素晴らしい方です」
十夜が笑っているとヘルフリートは十夜の目の前で髪を見せつけるようにくるくると回りながら、そう言った。
「髪から爪の先まで、私はあの人の愛でできているらしいのです」
その言葉にそれを教えたセオドアを殴りたくなった。
何を教えているんだ、あいつは。
確かに、セオドアの言う通り愛でできているのだろうけど、それを本人に言わせるのはどうかと思いながら、十夜はヘルフリートを見る。
まあ、嬉しそうだからいいか、と息を吐いた。
「おいで、髪をくくってあげる」
笑顔でくるくると回っているヘルフリートを手招く。
ずっと触ってみたかったのだ、ヘルフリートの髪を。
こんなに暇な時間も珍しいし、とヘルフリートを見た。
ヘルフリートは少し驚いたように動きを止めて、じっと十夜を見る。
「ほら、おいで」
「いえ、でも」
戸惑った様に目をさまよわせながら十夜の言うことに忠実に此方に来るヘルフリートに笑みをこぼした。
さて、三つ編みにでもしてやるか、と子どものような笑みを浮かべながら十夜はヘルフリートの髪を持ち上げた。
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(絵:友だち)




