番外編:マリアの実験日記 2
水葵月 藜日
ああ、どうすればいいのか。あの子が死んでしまう。あの子が死んでしまう。ちゃんと見ていたのに、少しの隙を突かれてNo.56にあの子の腕を食い千切られた。水槽の中に浮かぶ食い千切られて腕がないあの子を見た時の俺の気持ちを誰が分かるのか。No.56の部屋は悪いが鍵を三つつけさせてもらった。前々から反抗的だと思っていたが今回のような仕返しをするとは予想外だった。誇り高いフェニックスだからだろうか。俺に閉じ込められていることが不服だったのもあるのだろう。だが、力を使えないように風切羽を切ったから最近はおとなしくなっていたはずなのに。あの子は治療の御蔭でさっきまでの死にそうな顔がましになっているが、いつ死ぬか分からない。可愛い俺の友達。同胞。どうかどうか
水葵月 桐日
あの子が死んだ。たくさんの涙を流して死んでいった。水槽の中にいたあの子の亡骸を用意していたガラスの棺の中にいれて、あの子を拾った場所に沈めてきた。ガラスの棺に入れているがいずれは誰かに食べられるのだろうな。人魚は人間どもが言う魚と同レベルでしか見られていないのだから。
俺は不味いらしいから、その心配はないけど。
そこまで書いてから、最後の自虐の部分だけ黒く塗りつぶす。
こんなことを書いても記録にはならない。
最近のノートを見ていて気がついたが、何も有益な情報が書かれていない。
これでは、ただの日記帳になりはててしまう。
これでは駄目だ。
これでは駄目なのだ。
どうして、あの子をガラスの棺に入れてしまったのか。
どうして、元の場所に戻しに行ったのか。
いつもなら解剖するはずだ。
いつもなら利用して使うはずだ。
いつもならいつもなら。
ガリガリと塗りつぶし続けていると後ろのページまでペンの先が届いてしまった。
手に黒色がべったりとついていることに気づいて、動かしていた手をとめる。
久しぶりに生物らしい感情を抱いたものだ。
椅子の背に体を預けて上を見ながら、少しだけ泣いた。
twitterで書いたものに文をつけたしたもの。




