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12/25 本文改変

 手を目の近くまで上げ、その手のひらをじっと見つめてから手を下ろして彼女を見る。


本当に気のせいではなかったんだ。


赤目現象のような錯覚だと期待していたのに。


ぐっと手を握ってから力を抜く。


そう変に目を意識していたからか、いつの間にか顔を半分くらい隠している彼女の顔や動作より目を盗み見るようにじっと見ていた。


今まで目の色を気にしていなかったから、その目が綺麗な緑色だったことに今気が付いた。


自分の黒い瞳とは違うな、と考えながら彼女の目を見る。


エメラルドグリーンのような綺麗な緑のようにも見えたし、深緑のような色にも見えた。


外国人にあまり会う機会がないからか、その瞳の色が珍しく思えた。


まあ、今も俺の黒い瞳の色が本当に赤くなっているのかと彼女を見ながら考えたが、その考えは何だか自分の体のことなのに自分のことではないようで不思議な気持ちになった。


「魔力があるってだけとかじゃあ、周りは納得しないと思うけど」


もしも本当に俺の目が赤くなっていれば王様が黙っていないだろうと思って呟いた俺の独り言を彼女は律儀に拾い、困ったように「そうでしょうね」と頷いた。


俺の言葉を聞いてあまり慌てていないことを不思議に思いながら問いかけ続ける。


「そもそも赤目になるのは魔力があるって理由だけなの? それとも他の理由もあるのか? 魔力があるってことは魔法を使えるって考えてもいいの?」


聞きたいことを言い終わってから息を吐く。


一気に言葉を吐いたのは久しぶりのような、そうでもないような。


人と話すことがこんなに疲れることだと久しぶりに実感した気がする。


普段、ほとんど話さずに聞くことのほうが多いから自分から話すのは少し困る。


そんな俺の様子に気づき彼女は微笑ましいという様に笑ってから、問いかけに彼女は落ち着いた様子で答え始めた。


何だか、馬鹿にされたようで少し顔を顰める。


「赤目になるのは魔力の有無であることで間違いありません。他の理由は、聞いたことがありません。しかし、人ではない種族は赤目になることが少ないとは聞いたことがあります。それと、魔力を持っているから魔法を使えるという問いかけには答えることができません。私が知っている赤目の人はセオドア様だけですから」


彼女の返答を覚えながら他の質問を捜す。


聞きたいことは沢山あるが、彼女が俺の知りたいこと全部に答えられるわけではないのだし。


てか、またセオドアか。


あいつは何なんだ、この国の重要人物なのか。


「セオドアってこの国のなんなの? それとも君が特別、セオドアと仲がいいの? それに因香も普通の人ってわけじゃないよね」


 セオドアと知り合いだから、という言葉は飲み込む。


前々から誰かに聞きたかったことを聞いて質問を終わることにする。


他の知りたいことは機会がある時にでも聞こう。


因香はぐっと姿勢を正してから俺の質問に答えた。


「この国でのセオドア様は賢者と呼ばれることが多いです。知識を貰うために王がセオドア様を国に呼ぶことが多いからでしょう。他の国では何と呼ばれているのか分かりません」


一度、セオドアのことを話してから彼女は言葉を区切り、話し出す。


俺はそれを黙ったまま見ていた。


「……私は、巫女です。未来を見ることができる、巫女です」


彼女の言葉を理解しようとして失敗する。


彼女は今何と言ったのだろうか。


魔力があるということ以外にも、この世界には自分の理解を超えるものがあるのだと実感する。


いや、日本だって元々は卑弥呼とかいたし、この世界でもそういうのがいてもいいのか。


未来が見えるなどと言う人がいれば馬鹿にするだけで信じないが、どうしてか彼女の言葉を馬鹿にすることは出来なかった。


本当のことだとは思えなかったけど、一応、そういう飾りはあるものだし。


そういうものだと思っているのに気が付いているのか、いないのか彼女は何か言いたそうに俺を見ていた。


だけど、言い出すことはしない。


お互いが黙り込み、二度目の静寂が訪れる。


今度はどちらも口を開こうとしない。


どうすべきかな、と彼女から目線をそらして考え込んでいたが、その静寂は突然の来訪者のせいでと言うべきかおかげでと言うべきか打ち破られた。


「因香様、王様がお呼びです」


扉を叩く音と義務的な声。


その声を聞いた因香が悲しそうに笑ったのが何故か、その時の俺は考えることもしなかった。


というか、興味もなかったから考える気すらもなかった。


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