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一枚奇譚  作者: 裃 左右
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夏の窓

夏場に窓を開けていると……。何にも起こらない。

 俺の部屋の窓は開いている。

 寝ている間も、起きている間も。

 ―――もちろん、夜も。

 それは夏だけのこと。

 暑さに弱い俺は、窓を開ける。

 いや、閉鎖された空間、淀んだ空気が駄目なのかもしれない。

 それは、単純に、俺の部屋が散らかっているせいかもしれない。

 でも、なんだろうか。

 こうして、夜に一人で過ごしているとき。

 いつものように窓を開けていると、ほら、聞こえてくる。

 電車の音や、鳥の鳴き声、犬の遠吠え。

 でも、それだけじゃない。

 誰かの笑い声。

 狂ったような、笑い声。

 なにがそんなにおもしろいのか。

 誰かの話し声。

 声にならぬ、話し声。

 いったいどこの言葉なのか。

 誰かの泣く声。

 儚く寂し、泣く声。

 どんなに悲しいというのか。

 誰かの叫び声。

 遠く響く、叫び声。

 まったくなにがあったのか。

 聞こえてくる。

 毎日のように、聞こえてくる。

 なにがあるのか。

 なにが起きているのか。

 俺の知らないところで起きている、物語。

 自分は決して、人生の主人公でも、なにかの物語の登場人物でも、ないような。  

 そんな仲間はずれにされてしまった気分と。

 少々、歪んだ世界が見えてくるような気分を味わう。

 俺は窓を開けたまま、眠る。

 その声達を聴きながら。

 たまに窓を叩くような音がするけども。

 俺は気付かない、フリをする。

 それは、夏だけのことだけど。

 ほら、試しに覗いてみるといい。

 ほんのささやかな涼しさと、少しだけ狂った世界へと。

 いつでも、夏の窓は開いている。

自分の知らないところで、すごいことが起きているのかも。ってたまに思う。

そうだといいな、とも思うし、そうだと寂しいな、とも思う。

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