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一枚奇譚  作者: 裃 左右


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5/15

望戻

結局、何もしてないのと変わらない。する前に戻ってる。

 目の前にいるのは人間ではない。

 亡霊だ。

 生き生きと……楽しそうに話す、死人。

 そいつは、ずっと繰り返し同じことを、そう、笑顔で話し続ける。

 本来ならば既に死んでいて、ここにはいないはずなのに。

 まったくもって、本人は気付かないまま、俺に話しかけてきている。

 どう返せばいいものか。

 なにを話せばいいものか。

 俺には返せる言葉は見つからず、ただ黙って聞いているのが精一杯だ。

 しかし、こうも思う。

 俺が思うに……いや、もしかしたら、だ。

 別に確信があるわけではない。

 そう、もしかしたら。

 こいつは本当は気付いているのかもしれない。

 自分が死んでいることを。

 ただ自分からは言わないだけで。

 俺がそれを指摘するのを待っている。

 そして、次の瞬間にでも。

「お前は死んでいるんだよ」 

 そう言われるのを待っている。

 だが、俺は決してそのことを言ったりはしない。

 おそらく、それを指摘した時こそ、取り返しがつかないことになる。

 ……そう思ってしまったからだ。

 指摘したことで彼は確信を得るだろう。

 にやり、と笑ってこう言うに違いない。

「ああ、お前が知っていたのか」

 その時、なにが起きるか、俺には想像のつかないことだ。

 そして、恐らくは想像しても無駄なことだろう。

 少なくとも、俺は殺される。

 間違いなく無事ではすまない。

 なぜなら……。

 ああ、なぜなら。

 ……そう、なぜなら俺がこいつを殺したんだから。

 やっぱり、いや、きっとこいつは気付いていないのだ。

 背後から、バットでその頭を、後頭部をかち割ってやったことなど。

 それをしたのがいったい誰なのかなど。そう知るわけもない。

 ……後ろなど、背中に目でもついてもない限り、見えはしないのだから。

 それでも俺は、なにも話すことが出来ず。

 結局、こいつが生きていた頃と同じように。

 その話を聞いてやるのだった。

いいじゃん、仲良さげで。って話?

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