望戻
結局、何もしてないのと変わらない。する前に戻ってる。
目の前にいるのは人間ではない。
亡霊だ。
生き生きと……楽しそうに話す、死人。
そいつは、ずっと繰り返し同じことを、そう、笑顔で話し続ける。
本来ならば既に死んでいて、ここにはいないはずなのに。
まったくもって、本人は気付かないまま、俺に話しかけてきている。
どう返せばいいものか。
なにを話せばいいものか。
俺には返せる言葉は見つからず、ただ黙って聞いているのが精一杯だ。
しかし、こうも思う。
俺が思うに……いや、もしかしたら、だ。
別に確信があるわけではない。
そう、もしかしたら。
こいつは本当は気付いているのかもしれない。
自分が死んでいることを。
ただ自分からは言わないだけで。
俺がそれを指摘するのを待っている。
そして、次の瞬間にでも。
「お前は死んでいるんだよ」
そう言われるのを待っている。
だが、俺は決してそのことを言ったりはしない。
おそらく、それを指摘した時こそ、取り返しがつかないことになる。
……そう思ってしまったからだ。
指摘したことで彼は確信を得るだろう。
にやり、と笑ってこう言うに違いない。
「ああ、お前が知っていたのか」
その時、なにが起きるか、俺には想像のつかないことだ。
そして、恐らくは想像しても無駄なことだろう。
少なくとも、俺は殺される。
間違いなく無事ではすまない。
なぜなら……。
ああ、なぜなら。
……そう、なぜなら俺がこいつを殺したんだから。
やっぱり、いや、きっとこいつは気付いていないのだ。
背後から、バットでその頭を、後頭部をかち割ってやったことなど。
それをしたのがいったい誰なのかなど。そう知るわけもない。
……後ろなど、背中に目でもついてもない限り、見えはしないのだから。
それでも俺は、なにも話すことが出来ず。
結局、こいつが生きていた頃と同じように。
その話を聞いてやるのだった。
いいじゃん、仲良さげで。って話?




