腐敗渦巻く魔術学園の薔薇、ローズ
ローズを仲間にするために魔術学園の前に立つ。
魔術学園の校舎は、学校なのに城壁で囲まれている。ゴーレムが石像のふりをして警備を固めている。
「まるでハリーポッター! 違うのはダンブルドアやマクゴナガル先生が居ないこと!」
感動のあまり、学校の様子をしげしげと眺める。
設定上、学園は外界と閉ざされている。勉学に専念するためだ。
だから塀は結界が張り巡らされ、無断では蟻一匹入るも、出ることもできない。
ファンタジーな学校そのままだ。
しかし最大の違いがある。ナイトメア・オブ・ブラッドシリーズだからこその味がある。
この学校は屑しか居ない。生徒も先生もろくでなしだ。
設定資料集では、学園は長年の閉鎖的な環境のせいで腐敗しているとのこと。設定担当者は精神的に疲れていたんだろうなと、読んでから思った。
この学校の卒業生は国家魔術師となる。国家魔術師は国が誇る役職で、政治的な地位もある。ある意味、政治学校みたいなところだ。
卒業したら漏れなく政治家に成れます。人気が出るのも当然だ。
結果、国中の名門魔術家の子供がこの学校に通う。先生も一流の国家魔術師だ。
しかし実態は、裏口入学などの不正やいじめが横行する最低学校だ。
先生全員が親から大金を得ている。その代わり子供たちの成績はA判定だ。授業に出なくても問題ない。三年寝太郎でも、三年寝れば国家魔術師、政治家に成れる。また校則にも縛られない。煙草や酒を飲んで笑っている。先生と一緒に笑っている。不純異性交遊も何のその。無断外出などトイレに行くようなものだ。
その分、親から金の出ていない子供には厳しく接する。どれくらい厳しいかというと、虐められていても無視するくらい厳しい。
また生徒たちと一緒に虐めるほどスパルタだ。
そんな先生に教わる生徒たちはすべてが親のすねを味わっている。また親の七光りを存分に浴びている。
生徒は暗黙のカースト制度で暮らしている。
親が偉いほど偉くなる。親が金を持っていれば持っているほど金持ちになる。
しかし、例外はある。
実力で入学した子供は毛虫のように嫌われる。
文字も読めない猿が人間を恐れるのと同じ。
そしてローズは人間なのだ。
「おまけにローズの親は金を払っていない」
ある意味、当然の話だ。何故ならローズの父、レザーは国家魔術師の取りまとめとなる国家魔術師代表、上司から賄賂を貰うわけにはいかない。
だが心では面白くないと思っている。上司が高圧的で怒鳴り散らすような男なら、なおさら、という訳だ。
結果、ローズはクソ教師たちからも虐めを受けている。
「ローズ。まさに薔薇だな」
ローズは肥溜めに落ちてしまった薔薇だ。本来はこんなところに居ていい女の子ではない。
ナイトメア・オブ・ブラッド30のシナリオで、いじめっ子からローズを助けるとは、肥溜めから薔薇を掬うのと同じだ。シナリオが進むにつれて女の子らしさを取り戻し、やがて美しい花を咲かせる。
「カズヨシの野郎!」
それをあのクソプレイヤーは台無しにした!
絶対に殺してやる! 爆弾を食わせて木端微塵にしてやる!
汚物は消毒だ!
「どうしました? とても怖い顔です」
チュリップの優しい微笑みで我に返る。
「ついつい、思い出し怒りをしちまった」
これ以上、考えるのは止めよう。俺はローズを仲間にしに来ただけだ。
学校を爆破するためでも、生徒や教師を皆殺しにするためでも無い。
やりたいけど今はそんな場合ではない。
「ありがとう」
荒んだ心を宥めてくれたことに礼を言う。
カズヨシのせいもあってか、頭に血が上りやすくなっているようだ。
「こちらこそ」
チュリップは綺麗に会釈してくれた。
「ところで、そろそろ腕を離してくれないか?」
右腕に絡まるチュリップに笑いかける。
「どうしてですか?」
チュリップはキョトンとした顔をする。
「右腕がおっぱいに挟まっている」
「揉んでみます?」
「周りがこれを見たらどう思うかって話だ!」
「私は気にしません」
「君ってそんなキャラだっけ?」
俺の記憶のチュリップと違う! こっちのほうが良いけど今はダメ!
俺の体はザーク! これでエロはできないの! やりたくないの!
「ザーク様! いらしたのですか!」
色々混乱していると、門が一人でに開き、続いて中年男性が現れる。校長だ。
「呼んでくださればすぐに門を開けたのに」
校長は卑屈に媚びながら手を揉む。火起こしか? 火傷するぞ。
「少し、話があってな」
「そうでしたか! どうぞこちらへ! すぐにお茶をお出しします!」
ニコニコと嫌らしい笑みを浮かべる。何を期待しているのか。
「まぁ、話が早くて助かる」
ゲームだと魔術学園に入るには入学する必要がある。金を払うか、実力で入学するかはプレイヤー次第だが、とにかくイベントを進めないと入れない。
それをスキップできたのだから喜ぼう。RTAプレイヤー的に。
「ところで、お隣の女が今度のパーティーの主役ですか」
学園の中を眺めながら歩いていると、校長が耳元で囁く。息が耳にかかって気持ち悪い。
「どんなパーティーだったか?」
臭い息を遠ざけたいので適当に返す。
「あなた様が月に一回開催するパーティーですよ! 次こそ私を招待してくださると仰ったでは無いですか!」
息が荒くなると豚のようだ。
「誕生会だったか?」
「……ふふ、惚けないでください」
校長が耳元で囁く。
「あなた様が国中から攫った生娘たちの踊り食いです」
「ああ! 忘れたかったが思い出したぞ!」
人間は怒りでも笑えるようだ。
ザークはこの学園とも深いつながりがある。吐き気のするつながりが!
ザークは贋金や強力な魔道具の密造もやっている。麻薬の生成もやっている。
この学園の知識や設備が活かされている!
「校長! 俺は決してお前を忘れない! 必ずな!」
「ありがとうございます!」
お礼を言われるとは思わなかった! 気に入った!
殺すのは最初にしてやる!




