ローズを仲間に! ……あれ?
プレイヤーだけじゃなくNPCも屑じゃないか!
「それで、お話とは?」
校長室にたどり着くと、お茶とともに校長は笑う。
「町に強力な殺人鬼が現れた。国軍でも手を焼くくらいの強さだ」
「……はぁ」
何も興味がありませんという顔だ。ガッカリしているのが見え見え。
退屈にさせて悪いが、金の話はザークと一緒に地獄で存分にしてくれ。
「そこでローズという女子生徒を呼んで欲しい」
「ローズ?」
そんな生徒知りませんって顔だ。お願いだからこれ以上俺を怒らせないでくれ。
これでもお前の顔面を砕かないよう、拳を握りしめて耐えているんだから。
「しかし、国軍でも手を焼くとなると、とてつもない賞金がかかっているのでしょうねぇ」
嫌らしくほくそ笑む。
「分かりました! 学園総出でお手伝いしましょう!」
「何!」
話が変な方向になってきた! 魔術学園の生徒や職員はプレイヤーがお尋ね者になっても外へ出ないはず。
「ザークがここに来たことによる新イベントか」
欲深なクソどもに要らない知恵を授けてしまったらしい。
「そんなことしなくていい。ローズを連れてこい」
面倒なイベントをクリアしている暇はない。ましてや新イベント! どうなるか分からない!
「そんなよく分からない馬の骨よりも、ずっと役に立つ者をご紹介します!」
校長は小声で囁く。
「その代わり、私たちの評価をぜひ国王へお伝えください。賞金はお渡しします」
何を伝えればいい? クソはクソでした? 嗅げば分かるから顔を近づけるな。
「早速連れてまいります。ザーク様が気にいる子ですよ」
下の方でもって顔だな。舐めてんのか? 俺はお前にしゃぶられたくねえ! てめえみてえなクソに一物を突っ込んで誰が楽しいんだ!
「ローズを連れてこい! 同じことを言わせるな!」
思わずテーブルを蹴り上げる! テーブルが真っ二つに割れた。
「ざ、ザーク様! 失礼しました!」
校長は真っ青な顔で笑う。
「ローズという女子生徒がお気に入りなのですね! すぐ連れてまいります!」
怒りで何も言えないで居ると、校長は汗ダラダラのニコニコ顔で部屋を出て行った。
「あの人、私のことを忘れていたようですね。覚えてもらいたいと思いませんが、相変わらず、気持ち悪いこと」
チュリップが鼻で笑うと眩暈がする。
そんな設定は知らなかった。知りたく無かった。
「全員皆殺しにして、さっさとローズを仲間にするか?」
しかし、そういう訳にも行かない。
ローズはとても怖がりだ。
ここを血の海にすると、逃げてしまう可能性がある。そうなるとどこに行くのか予想できない。
「どうしてこうなった?」
胃に穴が開きそうだ。誰か頭痛薬と精神安定剤を持ってきてくれ。
ワンピースでも良いぞ。アラバスタ編まで頼む。
「テーブル片づけますね」
チュリップは何事も無かったかのようにぶっ壊れたテーブルを隅へ退ける。
ありがたい。怒りで気づけなかったが、この光景を見たらローズが委縮してしまうだろう。
「ありがとう」
「どういたしまして」
チュリップは涼やかな笑顔で片づける。
しゃがむとお尻や胸が強調される。
とても柔らかそうだ。男たちが狂うのも分かる。
全員殺すけど。
「俺がプレイヤーだったら良かったのに……」
ザークの姿じゃ無ければ押し倒していたのに!
涙で血が出そう!
まさにナイトメア・オブ・ブラッドだ!
「連れてまいりました」
校長がドアを開けると、続いてローズが俯きながら入る。
「ほら、挨拶しなさい」
校長が舌打ちしてローズの足を蹴飛ばす。どうして君は何度も命が要りませんと言うんだ? 分かってるから黙ってろ!
「あの、こんにちは」
ローズはぼそぼそと言う。蚊の鳴くような声だ。
「よく来てくれた」
怒りは喉の奥に押し込む。ローズを怖がらせたくない。
ローズの前にしゃがみ込み、できる限り優しい目で見つめる。
「俺と一緒に来てくれ。お前が必要だ」
「いやです」
即答? 断られた? そんな馬鹿な! ローズは仲間にするのがとても簡単なキャラのはず!
「私は弱いです。だから、他の人にしたほうが良いです」
衝撃で固まっていると、ローズはそそくさと立ち去った。
「あの子は劣等生でしてね」
校長が突然、残念そうな顔で始める。
「顔が可愛いのは認めます。しかし、あの子よりも可愛い子は沢山居ます。実力も上です」
なるほど、てめえがローズに何か吹き込んだのか!
命知らずの校長はニッコリと笑顔になる。
「どうでしょう! 他の生徒を見てみませんか! 必ず気に居る子が居ます!」
何て自信満々で誇らしげな顔だ! 右手でドンと胸を叩く仕草など、心臓を捧げているかのようだ! 嫌でも奪い取るから捧げなくていい!
「お前、ローズに何か吹き込んだか?」
校長を睨む。眼圧で目が飛び出しそうだ。
「な、何もしていません! 本当です!」
校長は首が折れるかと思うほどガクガクと首を振る。そのままへし折れればいいのに。
校長の言葉は置いておくとして、他に何かあるかと考える。答えはすぐに出た。
「……やっぱりザークじゃ無理か!」
俺はザークだ! プレイヤーキャラじゃない!
それに仲間となるイベントはカズヨシがクリアしてしまった。
そう考えると、答えは出る。
「俺とローズは赤の他人だ。あいつからすれば、何言ってんだろって感じだろう」
ローズの答えはある意味当然だったということか。
しかしこのままで終わる訳にはいかない。
「好感度稼ぎをするか」
ナイトメア・オブ・ブラッドシリーズは好感度がある。好感度を上げると仲間にできるキャラも沢山いる。
だから好感度を上げてみよう! そうすれば仲間になるかもしれない!
「新イベントだが、俺なら大丈夫! 俺はローズの好きな物、嫌いな物すべてが分かっている! 何故なら俺はレイ! 最強にして最速のRTAプレイヤーだ!」
グッと拳を握りしめて、何言ってんだこいつ? みたいな顔をしている校長を睨む。
「お前が紹介する生徒は優秀か?」
「優秀です!」
校長はキリッとした顔で言う。ムカつく顔だ。
「全生徒優秀か?」
「優秀です!」
ローズは劣等生って言ったのに、何を言っているんだか。
「実力テストをさせてもらう」
「テスト? どんな?」
「俺と模擬戦を行う。全校生徒が対象だ!」
プッと校長が笑う。
「ザーク様と模擬戦ですか?」
馬鹿にしているな。最も、ザークの実力を考えると当然だろう。
こいつらは屑だが、ザークよりも強い。
設定資料集では、ザークのレベルは20、こいつらは40前後だ。相手にならない。
こいつらがザークを恐れる理由は権力と金であって、腕っぷしではない。
「命令だ。全校生徒を訓練場に集めろ」
それでも頑なに命じる。
「分かりました。ザーク様のご命令なら」
校長は慇懃無礼に頭を下げて部屋を出た。
「どうして模擬戦を? あれだけ大口を叩くのですから、全員捨て駒にすれば良いかと?」
チュリップは恐ろしい事を言いながら可愛らしく首を傾げる。
「あんな屑ども捨て駒どころか弾除けにもならねえ」
オンラインゲームの基本だが、マナーの悪い仲間はそれだけでチームを殺す。
まして奴らは生粋の悪人だ。
捨て駒にするために生かすくらいなら始末したほうが良い。
「ローズの好感度を上げるためだ」
ローズは褒められたことが無いため、褒められると喜ぶ。
ただし可愛いとかではダメだ。
魔術的なことじゃないと喜ばない。
「模擬戦なら、あいつを褒める機会を作れる」
ローズはレベルが低いため、魔術がほとんど使えない。あの子のコンプレックスの一つだ。許せないが、それも理由で虐められている。
だがあの子はレベルが低くても輝ける。魔術が使えなくても咲きほこれる。レベル1でも褒められる!
俺ならできる! 何故なら俺はレイ! 世界最強のRTAプレイヤーだから!
「俺は誰よりも強い。それを認めた上で戦い、褒められれば、自信もつく」
ローズの境遇に、悲しみがこみ上げる。
設定資料集を読んだ時も憤慨したが、実際に体験して見ると、ローズに出会ってみると、心が締め付けられる。
やっぱり模擬戦ついでに50人ほど殺すか? しかしローズが怖がるかもと思うとやりずらい。あいつらの汚い死体を喜ぶとは思えないし。
ゴキブリは殺すと汚い汁を出すが、屑も同じだ。死んだときくらい周りの目を汚さずに死んで欲しい。
「私の好感度は上げなくて良いのですか?」
ああだこうだと考えていると、チュリップが後ろから抱き着く。
「私の好感度の上げ方は簡単ですよ?」
そして背中から手を前へ回す。
手はゆっくりと上から下へ、胸から腹へ滑り落ちる。
「ちょっと待て! それ以上は不味い!」
ズボンのベルトにかかった指を止める!
「美味しいと思いますよ?」
「味の事じゃない! それにこんな汚い物を口に入れちゃダメ! ペッペよペッペ!」
チュリップの指を掴んで引きはがそうとするが、力が強い!
「止めてくれ! 何が悲しくて他人の! ザークの一物なんぞ見るんだ!」
ナイトメアはゲームだけで勘弁だ!




