#1、序章
西暦2030年、一発の核ミサイルを皮切りに世界各地で大規模な世界大戦が開戦してしまった。その標的は民間人にも構わず向けられ世界中に核ミサイルが飛び交った。追い込まれていき絶望に付したとある国が殺人ウイルスを搭載した『殺人蚊』を放ってしまう。『殺人蚊』は瞬く間に世界中で増殖し猛威を奮っていった。そして世界の人口の7割がその犠牲となった。。
一方その頃
《天界 ギリシア支部兼司令本部》
『た、大変です!!ヘーラー様っ!』
男性と思える姿をしているがその頭部は人の姿とは違う何か。その者が小走りに階段を駆け上がる。
天界に数多く建つ宮殿。その中で一際際立つ黄金宮の扉が開く。扉の先には白い霧がたちこもっていて中の様子は良く見えない。視覚では認識出来ないその空間には小さな湖、その湖畔には1本のりんごの木。その木の近くで空間がゆらめく。すると透き通るような眼差しを扉へ向ける金色の目だけが浮かび上がったのだ。
『アヌビス?何事じゃ?慌ただしい、、』
『ヘーラー様!一大事です!下界の民達の戦争に使われた殺人蚊によって一気に死亡者が膨れ上がってしまい、、天界及び魔界での魂の許容限度数を突破してしまいました、、』
『!?、何じゃと、、』
『そして、、魔界に送り付けられた亡者たちが溢れかえり、救済処置に見せかけていた蜘蛛の糸を軽々と登り切り地獄門を脱出してしまった者が、、』
『ななななな、、、何じゃとおおおおお!?!!』
『ろ、6名程、、、』
ピキッ、、ピキピキピキ、、パリーーーン!!
立ち込めていた白い霧に一気にヒビが走り空間がかち割れた。りんごの木の傍らに美しい女性像の姿が現れた。金色の目、金色の髪、透き通る白い肌、足元まで広がる白い衣をまとった紛うことなき女神の中の女王ヘーラー神がそこにいた。一瞬だけ見開いたその金色の目は落ち着きを取り戻し優しくも鋭く見つめる。
『状況はわかったわ。アヌビス!其方は早急に下界へと降り、脱出者捜索の指揮をとりなさい!発見次第抹殺、その魂を捕縛せよ!』
『は!』
黄金宮に駆けつけたのは同じ天界ギリシャ支部のアヌビスであった。人の姿では無いその頭部は被り物のようで、口元は人のそれだった。ヘーラーの伝達を受け微塵の躊躇も見せずアヌビスは扉を抜けていった。
ヘーラーは右手を静かに胸元まであげた。すると手の中に薄い水色のハンドベルが現れた。
「チリーン」
心地よくも高い音がホール内に響くように静かに反響していた。ヘーラーのいるその湖畔は宮殿の中、ここはホールなのである。反響音が消えるよりも早く扉から優しげな光が飛び込んだ。
『ヘーラー様、お呼びでしょうか?』
光が女性像に顕現する。美しい姿のヘーラーとは少し異なり、快活そうで美人よりも可愛いが当てはまりそうだ。エメラルドのような目、金色の髪、纏う衣は虹色に染められている。
『イーリス、天界全支部へ通達です!』
先程のアヌビスからの報告内容を伝えつつ
『緊急事態宣言及び全支部代表を務める私の権限にて天界及び魔界に収容済みの魂の4割と収容手続きにて列を成してる全魂を下界へ一斉緊急転移します!』
『!!?!』
『いくらヘーラー様とは言えその魂の数の一斉転移は危険では、、』
『問題ありません。過去に1度隕石を地上に落として以来、私の力は貯め続けてるだけになってますから』
なぜか自慢気に答える。
『そ、それに3割まで減少してしまった今の民達では魂の受入先となる出生予定が到底足りません、、』
『それも問題ありません。緊急処置としてまずは通常通り人類の出生予定の者の元へ、残りは下界の人類外の生物、植物も当然含めます。全生物の出生予定の卵や発芽予定の種に転移させます!』
遮るようにイーリスが言葉を被せる。
『し、しかし、、ヘーラー様!人類の魂を人類外へ転移させてしまうと魔獣や魔物化してしまい人類の生存数を更に追い込み人類滅亡へ加速させてしまう気が、、、』
『それについてもちゃんと考えておる。我々神は人類の信仰心のエネルギーを受け、その総量に比例し新たな神を産む。故に人類の繁栄は神々の繁栄に欠かせぬ。目下、一番の危険材料は魔界からの脱出した者たちが下界に及ぼす災い、これが一番予測出来ず絶対に抑えねばなりません。魔界の飽和した魂をいち早く正常化させるのが最優先事項です!』
『、、、』
困惑しているイーリスに畳み掛ける。
『魂の一斉緊急転移に並行し下界に散らばる神器宝具の封印解放及び聖地の庇護システム最大出力にて人類の人口の減少を食い止めます。』
『!?!!』
さらにヘーラーは続ける。
『今は説明している時間が惜しい。ここからは命令です。天界全支部@everyoneにて伝達を急ぎなさい!これより私は魂の転移作業に入ります。以後の計画及び今後の対応については緊急支部長会議を早急に開きそこで皆と協議し決める事とする』
『、、かしこまりした。それではヘーラー様、お目覚めをお待ちしております!』
イーリスは両手を胸の前で合わせ目を閉じる。彼女は女神女王ヘーラーに仕える第一の家臣で主な役割は天界内への一斉伝達、天界と下界との通信伝達、女王の護衛及び身の回りの世話役である。
イーリスの身体全体が光り輝き黄金宮からそっと消えた。間髪入れずにヘーラーが両手を広げた。身体全体が強い光に代わりホール内を一気に光で満たした。
『一斉転移!!』『神器宝具解放!』『聖地フルブースト!!』
この日、多くの者たちの運命の歯車が大きく動き出した。




