↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一人暮らしにつきものの憑き物  作者: ぴよ
第五部 秋の風と憑き物

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
80/80

豊穣の秋 それぞれの収穫

「あれがグランプリなのはさぁ?わかるけどぉ?確かに可愛かったけどぉ!」


「すみません。プロのお二人に手を貸していただいたのに、わたしたちが不甲斐ないばかりに……」


「あんたまだ言ってんの~?いいじゃないよ〜、なんたってこっちはダブル受賞なんだし。それと水上ちゃんは今回のMVPだから」


「わははー、審査員特別賞と三位入賞!四人で頑張ったからね!」


ただいま四人は、コンテストの打ち上げ真っ最中。

本番終了後、着替えを終えた佐伯と水上はすぐに観客席の課長と主任に合流した。そのままコンテストの審査結果発表と授賞式も終え、いったん水上の部屋へ戻って荷物を置き、近所の居酒屋へ腰を落ち着けて乾杯も済ませたのが少し前。今は何度目かのおかわりを頼んだところである。


「いやだって思うじゃないっすか!保育園児が大集合して、仮装は家族の手作りで、最終組のステージでお遊戯して、極めつけに商店会スタンプラリーでもらったお菓子のお礼の歌を大合唱って……あんな可愛いのどうやっても勝てないじゃん!」


「確かにねぇ、しかも審査員は基本商店会のお歴々なわけだし?でも、あんただって可愛い可愛いってキャーキャー言ってたじゃないよ~」


「うん、あれは本当に可愛かった。投票制だったらわたしも入れてた」

「そうですね。わたしも多分投票してました」


今回のコンテストには全部で十二組がエントリーしていたが、その中でグランプリに輝いたのは地元保育園から参加した園児たち。二位に入賞したのは町内着付け教室の雪女チーム。ちなみに佐伯お気に入りの正統派ドラキュラ伯爵はリアルさが受けて最怖賞であった。


「実際のところ、あの雪女の着物に次いで入賞ってことは、ハロウィン仮装としては一位みたいなもんよね~。そのうえ演出と演技で審査員特別賞ってことは、もう実質グランプリよ~」

「確かにあのステージは最高だったっす。佐伯っちは転ぶし、二人とも勝手にセリフなしにするしで台本まるっと無視だったけど。でも今思うとコンセプト的にも衣装の見せ方にしても……あれがベスト」


「あんた、感極まって泣いてたもんね~。ちゃんと魔女になった!猫にもなってくれた!ってさ~」

「そういう課長だって涙ぐんでたじゃん!こそこそハンカチで拭いてたの知ってっから!」


本番後、台本通りにできなかったことを少なからず申し訳なく思っていた佐伯と水上。だが、実際に合流した際に課長と主任が口にしたのは

『よくやった!』

『すげーっす!最高っす!』

という絶賛の言葉であった。


「確かに佐伯ちゃんが一人で出てきたときは焦ったけどね~。でもそこからの即興のおかげで『現代に生きるモンスター』っていうコンセプトもよりはっきりしたし、主任が狙った、あえてのジャンル違いから見える同一性も際立ったし」

「何より、ガッチガチで転んだ佐伯っちを助けに早苗っちが登場して、ちゃんと歩かせて魔女にする流れはマジで感動もんだった」


「ありがとうございます。でもわたし、あそこで出られたのは黒猫先生の衣装のおかげもあった気がします。わたしの生徒を助けなきゃって」

「早苗ちゃん本当に格好良かったもん!わたしも、魔女のマントをみんなに見せたくって頑張れたところある!ありがとうございました!」


「それにしても、チーム名がレッツウォーキングって、お笑い芸人なの?ぷっ」

「あれ台本のタイトルっしょ?なんで?」


「いや、チーム名がいるとか知らなくて、聞かれたときに思わず……」

「まさか本名にも出来ず、とっさに……」


ジョッキやグラスを片手にお互いを称え、感謝を述べ合い、それ以外にも話題はつきない四人。

衣装や今日のステージについての話はもちろんのこと、昼休みに課長が現れ、さらに主任を連れてきてからの準備の期間など、ここ数日のすべてがもう懐かしいような気さえする。


「そうだ、わたしたち、課長と主任には何かお礼しなきゃって思ってたんだけど、二人は何がいい?」

「ええ、ぜひ何かお礼をさせてください」


「もうね~、こんな楽しい思いをして、その上そんなうれしいこと言ってくれたらそれだけで十分よ~」

「あたしも同感。あっ!でも、ここの支払い、酒の量に関わらず割り勘にしてくれたらうれしい!」

「ちょっと、あんたたまにはいいこと思いつくじゃないよ〜。よし、お礼はそれでお願いね」


謙虚なんだかちゃっかりなんだかわからない課長と主任に、また全員で大笑い。

その後も、大きなイベントを終えた達成感と満足感を共有しながら、四人の打ち上げは続いていった。


――


「はぁ、ハロウィン終わっちゃったねぇ」

「あんなに大変だったのに、なんだかあっという間だった気もしますね」


居酒屋での打ち上げで数時間を過ごして解散したあと、佐伯と水上はまた一緒に佐伯の部屋へ帰ってきた。玄関で靴を脱ぎ、手を洗ってからリビングで一休み。


「あれ?そういえば早苗ちゃん、今日はお泊まりでいいの?」

「えっ?あ、そうでした。つい帰ってきちゃったけど、お世話になってもいいですか?」


「もちろんだよ!わたしも話し足りなかったし!」

「じゃあ二次会ですね!それならもう一度コンビニに行きますか?お酒とおつまみと、あとスイーツも欲しいですね」


二人が再び家を出たあと、部屋はにわかに騒がしくなる。


(結局どうなったの?どうなのよ?早く話しなさいよ!)


(優勝?)

(殿堂入り?)

(まさか……惨敗?)


(気になるよ?どうなったの?)


(今日はお二人にとって大事な本番でしたので、わたくしたち同行は遠慮いたしましたが……)


問い詰められているのは、最近苦労の絶えない白沢であった。


家鳴も座敷童子も本来は家に憑くもの。すねこすりや目目連がこの部屋にいるのも、もとは白沢の指示によるものであった。

だが今では、彼らはこの部屋だけでなく、佐伯と水上の二人を見守る憑き物である。コンテストの結果を気にするのは当然のことだ。


目目連の言うとおり、今回は本気の勝負に出る二人の邪魔をしてはならぬと、当日の見守りは比較的人に紛れやすい白沢に託し、みんな本当に涙をのんで同行を諦めたのだ。


(あぁ、皆さん落ち着いて。まず、お二人は大変名誉な評価を得られました。三位入賞、そして審査員特別賞です)


(まぁ!すごいじゃない!それで今日は一日どんな様子だったの?詳しく知りたいのよ?)

(わたくし、一位と二位の方々はどんな衣装だったのかも気になります)


(審査員特別賞って)

(なんかすごそうだけど)

(何が特別だったの?)


(みんな、ゆっくり聞こう?これから白沢様が教えてくれるよ。ね、白沢様)


矢継ぎ早に飛びかう質問を、すねこすりがいったん抑えて白沢を見やる。


(あぁ、それなんですが……私もドラキュラ伯爵として出場したもので、女性陣とは控え室が別でして……)


(はぁ?まぁでもそれは仕方ないのよ。でもステージは見たんでしょ?どうだったのよ?)


(それが、ドラキュラ伯爵のまま観客席に出ると、子供たちが怯えて泣き出してしまいまして……)


(え?それじゃあ、ずっと控え室にいたの?)


(それって……)

(結局……)

(何も見てこなかったってこと?)


(あんた!今日は一体何をしに行ったのよ!)


(いや、しかし、私も最怖賞をいただきましたし……)


(本物の怪異が人間に怖がられて喜んでんじゃないのよ!この役立たず!ヤギ!)


(いやしかし、ドラキュラで出場しろと言ったのは座敷童子、あなたではないですか……いえ、面目次第もございません)


――


神獣白沢も、慣れない見守り役では形なしであった。仕方がないので、憑き物たちは二人が帰ってきてからのおしゃべりに耳を澄ませる。


「商店会のハロウィン、初めての開催にしては結構盛り上がったよね!」

「えぇ、参加者も集まりましたし、来年以降も継続する方向で検討するらしいですよ」


「それにしても、着付け教室の雪女は綺麗だったよね!見惚れちゃった!」

「わたしの心はあれでポッキリ折れましたけどね。ステージに出られたのは本当に先輩と衣装のおかげでした」


「実は、わたしが立てたのは着付け教室のあの人のおかげなの。浴衣のときといい今回といい、お世話になりっぱなしだなぁ」


「夏の終わりの花火大会のときですね。懐かしいです」

「あれから、どんとこい秋計画を立てて、ずいぶん色々やったね」


夏の終わりか秋の始まりか。いつだったかこの部屋で立てた秋の計画。

ルーズリーフに書き出しただけの、スポーツもグルメも芸術も盛り込んだ計画は、なんだかんだで二人をここまで連れて来てくれた。


「どんとこいって言って始めたけど、本当に盛りだくさんだったねぇ」

「はい、楽しかったです」


気がつけばその秋ももう終わる。言われてみればと、憑き物たちも大変だったり騒がしかったりした秋を振り返る。


(かまど神に会いに、またあのカフェに行きたいわ)

(えぇ、わたくしもぜひまたお話を伺いたいと思っておりました)

と、座敷童子と目目連。


(僕は鈍臭タヌキがどうしてるか気になるな)

(そうですね。木霊たちは相変わらずでしょうけどね)

すねこすりと白沢はハイキングを思い出しているようだ。


(もう一度!)

(ゲームの日!)

(今度こそ完全クリア耐久!)

家鳴たちはやはりゲームが楽しかったらしい。


ほかにもパーティーや美術館と、この秋は思い出がたくさんである。


しかし、常に前を向くのがこの部屋の主人。


「そしたら次は冬、年末、お正月だ!あと春!きっと夏もすぐ来ちゃうね!」

「先輩は本当にいつでも先輩ですねぇ」


次の季節も、その後も、彼女にとってはすべてが楽しみであるらしい。

苦笑いの憑き物たち。慣れた様子の水上。

これからも、彼女たちのお話は続くようだ。

皆さま、いつも拙作をお読みいただき、誠にありがとうございます。


佐伯と水上、そして憑き物たちの過ごす秋の様子をお伝えしてきた第五部でしたが、いかがでしたでしょうか。

思いのほか長くなってしまいましたが、お楽しみいただけていたら幸いです。


第六部も続けて投稿の予定です。

引き続きお付き合いいただけましたら幸いです。よろしくお願いいたします。


気に入っていただけましたら、ぜひブックマーク、評価などお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。