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コラボ系勇者

「納得できないッ!」


 涼子が紹介してくれた酒屋で働くこととなった俺は、マイニューギアとしてリヤカー付きの自転車を貸与してもらうこととなった。


 その自転車に乗って、ガーコガーコと(から)コギをして雄叫びを上げているのは、ここを紹介してくれた涼子だ。


「そんなことを言っても、お前らが決めたことじゃん」


「そーだけど! そーだけど、そうじゃないんだよ、おじさんっ!」


 納得できなと言うのは、先日、3人でダンジョンに潜った時に見つけたダンジョンコアについてだ。


 一つ目のダンジョンコアは悠が取得したので、2つ目は朱音か涼子のどちらかになるのは道理だ。


 だから、2人にはじゃんけんをしてもらった上で、ダンジョンコアに触れるのを決めてもらい、結果として朱音がその役を担うことになった。


 元から運動センスの良い朱音がダンジョンコアに触れてレベルアップしたことで、その動きはさらに良くなった。


 それは学内でも話題になるほどだったようで、それを見た涼子が取り残された焦りというか、羨ましさが先行してこのようなことになっている。


「学校で、ダンジョン攻略組の冒険者はウチらだけだったんだよ? それなのに、悠や朱音の動き良くなったのがダンジョンのおかげだって分かったら、みんながこぞって攻略しようとか言い出してさー!」


 ダンジョンで映える写真を撮りたいだけだったはずなのに、いつの間にか俺の知らないところでキラキラスリースターズはダンジョン攻略パーティーになっていたようだ。


 ガチの攻略組に怒られるぞ。


「いやーだー! 私だけ置いてけぼりいやーだー!」


「そうはいっても、ダンジョンコアがある裏ダンジョンの入り口の見つけ方がまだ分かっていないし、おおっぴらに動くと、俺たちのうま味がなくなるぞ?」


 「それもヤダー!」と、まるで子供を通り越してベイビー並みの思考になってしまった涼子。


 俺だって何とかしれやりたい気持ちは十二分にある。


 だって、その気持ちは痛いほど理解できるし、ほかっておいたら何をしでかすか分からない危うさ(ベイビー)もあるし、それに良いバイト先も紹介してくれたし。


「あっ、ならさっ、ダンジョンに連れてってあげるから、探しておいてよ」


「人を探知犬代わりに使うんじゃないよ」


「んぎー!」


 悔しさが爆発し、自転車を漕ぐ足がさらに回転数を増す。


 始めて見た時の、あの大人しそうな姿はどこへやら。


 ガーコガーコと加速を続け、体力が尽きたのかそれとも良い考えが浮かんだのか、涼子は額に薄っすらと汗を滲ませながらこちらを見た。


「おじさん、魔法使いだよね?」


「ままままま、魔法使いちゃうわ」


 失敬な。


 まだ30歳前だし、異世界(アルセイバル)であんなことや、こんなことあったし!


「えっ? 前に見せてくれたやつ、やっぱり手品だったの!?」


「あぁ、そっちか」


 なんて失礼な娘だろうか、と思ったけど、俺の思い違いだったらしい。


 「他にどういう意味があるのか?」と聞きたそうな顔で俺を見るが、女の子がそういうことに興味をもつんじゃないよ。


「おじさんのチャンネルって、全く人気ないじゃん」


「人の言葉は凶器になるってことを、高校生になったら学ぼうな」


 俺のチャンネルが人気ないってのは本当だけどさ、言っていいことと悪いことってあるじゃん?


 これは言ったら俺が憤死するやつね。


 ちなみに、チャンネル登録数は炎上したことで一時期は100まで行ったけど、それからちょっとの間、投稿を停止し、そして投稿を再開しても無難な物を上げていたからか、あれよあれよという間に20くらいになってしまった。


 スライムを素手で倒す方法が、なんで炎上するのか分かんねぇよ……。


 あんなの、ザコ過ぎて怪我する方が難しいじゃん。


「だからさ、私とコラボ動画作ろうよ」


「コラボかぁ~……」


「嫌なの?」


「嫌っていうかさ。ほら、キラキラスリースターズの別垢って呼ばれると困るし……」


 登録者数が少なくても、俺が頑張って育てたアカウントだ。


 ここでキラキラスリースターズの裏垢だとか、キラスタの作業用動画だとかになりそうで俺は怖い。


 だってそれだけ勢いがあるパーティーだから!


「それはさすがにないでしょ。第一、おじさんがメインなんだし、私はサブに回るし」


「まっ、まぁ、それならいいかな……」


 動画の作り方を学び始めたばかりの俺にだって、このコラボが美味いことが分かる。


 しかし、それと同時に食われそうな感じがして怖いんだ。


 ……いや、待てよ。


 食われる以上に、食ってしまえばいいのでは……?


「そうか。徹底的に利用すればいいのか」


「ちょっとちょっと。めちゃくちゃ怖い言葉が聞こえたんだけど!?」


 おっと、考えが口に出てしまったようだ。


「なに、心配するな。ちょっと、涼子に負担をかけるだけだ」


「多少の労働は仕方がないと思うけど、動画に必要なこと以上はやんないよ?」


 俺の笑顔に、「何を企んでいる?」と言いたげな表情で、涼子は少しずつあとずさりしていく。


「涼子って、弓道部なんだよね?」


「そうだけど、最近はサボり気味なんだよねー」


 「ダンジョンが楽しくてさ~」とサボっている奴特有の言い訳を口にする涼子。


 分からんでもない。


 ダンジョンは、撤退戦以外なら結構楽しいしね。


「エルフって、弓が得意じゃん?」


「エルフってアニメとかのアレ?」


「そうそう。そんな感じ」


 エルフと一口に言っても、住んでいる地域だけが違っていたり、見た目から違うハイエルフとダークエルフといったエルフが居るけど、ここではそれは言わない。


「涼子もエルフ並みに弓が扱えたら楽しいと思えない?」


「えっ? そんなことができるの!?」


 最初、涼子を見た時はオドオド系の小動物みたいな感じだったけど、最近のイメージから、涼子は慣れた相手にはぐいぐいくるタイプだと分かっている。


しかも、結構なものぐさ。


そして、美味い話に食いついてきた。


「お前も、エルフにならないか?」


「なる」


 即答だった。

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