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「では」
ソフィアが何かを唱えている。
1000匹のスライム達が1匹のスライムの元に集まっていく、そして1匹のスライムになった。
外見は変化していない。
相変わらず緑色で半円の半固形のネバネバした存在で、地面をズルズルと進んでいる。
ナメクジのような進み方だというのに結構早い。
「……」
スライムは何も喋らない。
じっと見ているとちょっとかわいいような気がしてきた。
「何か変わったの?」
「ええっと、色々変わりました……全体的にパワーアップした感じでしょうか」
ただでさえ最強のモンスターであるスライムが更にパワーアップしたというのか、全く強そうに見えないがそこまでみんなが言うからには強いんだろう。
そのまま進んでいると巨大な穴を見かけた。
「あれ? 確かこの穴は」
「この穴から出てきたんですよね」
その穴は千界から来て最初に出てきた穴だ、というかこんなところにあったのか。
ここは誰も立ち入れない危険な森だというのにレティカという人はなんであんなところに居たのだろうか。
そんなことを思っていたら穴から、なんか久しぶりに見るような気がするロックゴーレムが続々出てきた。
なんか超いっぱい出てきた。
ソフィアが錫杖を掲げるとロックゴーレム達が続々とソフィアの部下になっていく、ある程度増えると身体を自分たちで解体して繋ぎ合わせて強固な個体になっていく。
サイズは変わらないが不必要な部分を捨てて、強い部分をより強くして、不必要な部分は不必要な部分で一纏めにして新しいロックゴーレムを作って、という形でどんどん強くなっていってる。
凄いのはこれがほんの一瞬、瞬きするような時間で行われていることだろうか。
戦闘中でもできそうだ。
不必要な部分を捨てて、ゴミになったロックゴーレムがゴミ同士で再編成と強化を繰り返して強力なロックゴーレムとして機能しているのも凄い。
仲間になったロックゴーレムは一瞬で、その数を1000匹を越すまでになった。
スライムみたいに1匹に纏まるんじゃなくて最低限の質を保ったまま数を増やしていくようだ。
1000匹を超えた辺りで増えなくなった。
ソフィアに聞いてみると増えないけど減らなくてなおかつ個体の質も向上し続けられる丁度いい数だということ、チラホラ金ピカの上位個体も確認できる。
底上げ的にパワーアップを繰り返していくのでそのうち一番弱いのでも金ピカになるという。
ただし、一番強いのでも金ピカ状態だという。
全く喋らないし表情も無いので何を考えているのかわからない、ひょっとしたら何も考えていないのかもしれないが。
とりあえずそのまま進む。
スライムの縄張りからはだいぶ離れたがまだまだ到着しないらしい。
しばらく進んでいると集落らしきところにたどり着いた。
「ここかな?」
「いいえ、違います。こんな村ありましたかね」
ミスティアが村の中を進む、人気はない。
ミスティアは片手に大振りのナイフを持っている。
銃声が響いた。
ミスティアの銃ではない。
そして狙われたのはミスティアだった。
ミスティアは飛んできた弾丸を大振りのナイフで叩き落とした。
「そこ!」
ナイフを持ったまま片手で銃を構えてミスティアが撃った。
銃声の後、何か金属音のようなものがした。
「マッテクレ! イキナリ、撃ッタノハ、謝ル!」
片手に壊れた銃の残骸らしくものを持った人間、勿論この世界だから女性体なのだが……下半身がヘビっぽい感じになっている。
「ナンテコッタ、銃ガ効カナイ、人間ガ存在スルナンテ、ドウヤッテ、叩キ落トシタ?」
「この目は少し先の未来は見えるのですよ、いわゆる予知避け、予知受けです。ここに銃弾が飛んでくるとわかっていたからそこに大振りのナイフを置いて弾を逸しただけです。傍目には超反射神経で銃弾を叩き落としたように見えちゃうんですよ」
ミスティアは自慢げに言った。
というか、その目につけてるのってそんな効果があったんだ。
メイド服にも何か意味があったりするんだろうか。
そしてミスティアが銃を構えたまま近寄っていって何かを話だした。
「ロイ様、レティカさんが居るみたいですよ。彼女はここの長で正体は人間そっくりに化けられる下半身がヘビのラーミアというモンスターだったそうです」




