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俺たちは隠れ里に向かって出発した。
隠れ里は超強力なモンスターがウロウロしている巨大な森である為、人間は誰一人として近寄れず、またどの領地にも入っていない状態だという。
この世界のモンスター、それは喋ることも食べることも繁殖することもせずただ人と人が作った物質を破壊し続け、倒されると霧のように消滅する存在。
どういう仕組で出現するのかは不明だという、俺たちが本気で調べればわかるかもしれないが今はそれどころではない。
そういえばこの世界の人間も無から服を来たまま現れるんだったか。
NNN72によって強化されているクレイドル王国の正規軍ですら踏み込めない、強力なモンスターが居る森。
そんなところにどうやって隠れ里を作ったかというと、森の外と隠れ里を繋ぐ地下トンネルを掘って森の中心部まで進み、モンスターが近寄ってこない結界をはって隠れ里を作ったとのこと。
これで隠れ里の周辺一帯は超強力なモンスターがウロウロしている天然の要塞のようになったらしい。
千界から大量の重機を持ち込み、現地民に渡して使い方を教えてトンネルを掘ったとのこと。
隠れ里は森の中にあるにしてはかなり広くそこでは問題なく万単位の人数が暮らせるという。
道中でソフィアに話しかけてみる。
「ソフィアは王様になりたい?」
「ええ、そりゃ、なれるものならば」
「モンスターの王様でもいい?」
「モンスターが人に従うなんて聞いたことがないのですが……」
「忠誠の魔法ってあるじゃん」
「ええ、それは知っています。1対1の勝負でこれをかけられるとその時点で勝敗が決するといわれているアレですよね、でも人同士でもなかなかかからないと聞いてますし、モンスターにかけることに成功したことなんて聞いたこともありません」
そこで俺はその辺に落ちてた木の枝を拾い、力を込めた。
力を込めるといってもただ力を入れるというのではなく精神的な力をそこに集める感じである。
木の枝は変形し、高級感のある錫杖へと変化した。
「モンスターにしか効かない忠誠の魔法をかけられる杖、受け取る?」
「ロイさんは……使わないんですか?」
「俺は王様とかそういうの興味ないんで、それに一度忠誠使ったモンスターはずーっとついてくるし」
「それは……」
ソフィアがじっと錫杖を見ている。
俺は素早くNNN72を捕獲して帰るつもりだったから足場を固めてこなかったがもし長期戦になるならこれから行く森に居るという超強力なモンスター達は是非部下にしたい。
かといってモンスターの王様になったりしたら連れて帰るなり、ここに残しておくなり、何をどうするにしても色々とやることができてしまう。
「要らないなら別にいいけど」
錫杖をしまおうとしたところでソフィアが錫杖を受け取った。
「これを是非私に使わせてください、良かったら詳しい使い方なんかもお願いします」
ソフィアは凄い笑顔で錫杖を受け取った。
そうして進むうちに森に到着した。
遠目にも正規軍が横一列になって森を包囲している。
軍の包囲網は地平線の彼方まで続いている。
完全武装の正規軍である。
遠くからよく見てみる。
司令官っぽい感じの将校はロングスカートの軍服ワンピース、下っ端っぽい下級兵士は動きやすそうな長袖長ズボンにビキニアーマーを着ている。
手のこうに小さい盾、羽のついたヘルメット、武器は槍や弓矢や剣を装備しているものも居る。
城内だと槍を持ってるやつはあんまり居なかったが野外だと結構居るようだ。
「ロイ様、どうしましょう?」
ミスティアが聞いてくる、既に銃を構えている。
ソフィアは錫杖を握りしめている。
「そりゃ勿論、正面突破でしょ」




