第四章 【092】
【092】
――五時間前 セントリア王国 「セントラル・パレス」
「わたくしも、ハヤトとシーナと一緒に組合実習、行きたかったぁぁぁーーーー!!!」
たあ、たあ、たあ、たぁ…………セントラル・パレスに、リサ・クイーン・セントリア女王陛下の悲痛な叫びが木霊する。
「何をおっしゃっているのですか、リサ様。女王陛下が、そんな簡単にセントラル・パレスを空けてはなりません」
ロマネ・フランジュは、ため息まじりにリサにツッコム。
「わ、わかってるわよ。ちょ、ちょっと言って、みただけ…………です」
リサロマネの突っ込みを素直に受け入れた。
リサは、官僚たちから上がってくる書類の山を駆逐しながら、ロマネのツッコミを素直に受け入れた。
「でも……やっぱり……行きたかった、な……」
作業をしながら、リサはボソッと呟く。
「…………ふぅ、わかりました。では、この今ある書類を片付けたら組合実習に少し顔を出しても良いですよ」
「!? ロ、ロマネ! 本当?!」
リサが、目を輝かせてロマネに再確認する。
「はい。ここ2~3日、リサ様もご公務で多忙でしたからね……今回は特別です」
「わー、ありがとう、ロマネ!」
そう言うと、リサはロマネの胸に飛び込んだ。
「リ、リサ様っ……?! はしたないっ!」
「しょうがないでしょー、うれしかったんだから……。ありがとう、ロマネ」
ロマネは、飛び込んで普通に甘えるリサに、目元を緩め笑みを浮かべながら、
「……まだまだですね、リサ様は」
「へへへ……」
微笑を浮かべ、言葉を交わすその二人は、傍から見ると、甘えんぼの孫娘と、孫想いのやさしいおじいちゃんのソレだった。
「ようし、頑張るぞ! ロマネ、絶対だよ?!」
「もちろんです。ただし、公務はキチンと完了させて下さいね?」
「もっちろん! おらおらおらおらおらおらーーーーーー!!!!!」
リサは満面の笑顔で答えると、『通常の三倍のスピード』で処理していった。
「……リサ様、最近、お言葉が酷すぎです」
『赤い彗星』のごときスピードで作業を高速処理していく横で、ロマネがため息交じりで残念そうに呟いた。
――その時。
バンッ!!!!!!!
「!? 何じゃ、貴様? 姫様の御前じゃぞ! 乱暴に扉を開けるとは何事じゃ!」
乱暴に扉を開けたのは、セントラル・パレス内、一階の門番である側近魔法士だった。
「が……ご……ごが……ロ……ロマ……ぬえ……さ……ま……」
一階門番の側近魔法士は、半目・虚ろな状態で、身体を小刻みに震わせながら言葉にならない言葉を返す。
まるで、マトモではなかった。
「ロ、ロマネ……?!」
リサは、その門番の男を見て、不安げな声でロマネの名を呼ぶ。
「……リサ様、わたくしの後ろへ」
ロマネは、リサが自分の背後に来たことを確認すると、目の前の門番に意識を集中させた。
「ふ……ふふ……ふ……久しいのぅ………………ロマネ・フランジュよ?」
門番の男は、先ほどのような半目から白目に変わると、突然、小刻みに震えていた身体がピタリと止み、マトモな言葉をしゃべりはじめた。
「!?……そ、その声は、ガーギル・アーチボルト! な、なぜ、その男からお前の声が……?」
ロマネは、その男の声に聞き覚えがあった。
ガーギル・アーチボルト――かつて、側近魔法士室長になりそこねた男。
「本当は……本来ならば…………立ち位置は逆……わたしが……リサ様の横だった……お前に……室長のイスを……奪われなければな!」
そのガーギル・アーチボルトの声を発する門番の男は、ロマネにそう呟くと、魔法力を高め始めた。
――な、なんじゃ、この魔法は……? ガーギル・アーチボルト、本来は『地属性』の魔法士。こんな、人形のように人を操る魔法は見たことがない。それどころか、そもそも、『人を操る魔法』なんて聞いたことがないぞ?!
ロマネは、その門番の男に合わせて自身も魔法力を高め、戦闘態勢を構築していく。
「今、このセントラル・パレスで何が起こっておる……?!」
「更新あとがき」
おはようございます。
何だか最近、冷えますね、
mitsuzoです。
更新しました~。
12月ですね。
残り一ヶ月――。第一部完結に向けてラストスパートを切ります!
というわけで、本日も読んでいただき、ありがとうございました。
<(_ _)>( ̄∇ ̄)




