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0番線・華絵


今日でわたしたちは最後。

もう会うことはない。


結婚してたった3年だけどいろんなことがあった。


わたしたちが住んでいた宇治のホームで別れるはずだった。

けれど付き合っていたときからもう10年も一緒にいたからか綺麗に別れられず、わたしも京都方面の電車に乗っている。


わたしは7歳のときに事故で両親を亡くしたから、両親より一緒に居る時間が長い。


そんな彼は優しい人だった。

前に付き合っていた人がワガママだったからか ちょうどいい具合の無口さで、言葉を交わさなくても居心地の良さが好きだった。


でも居心地がいいのがずっと続くのは何か違った。

何も波がない毎日。

感情が表れることがなくて もっと怒ったり笑ったり泣いたりしたかった。


それはヒロくんも同じだったみたいで、その話をしたら ヒロくんも同じことを言いたかったって言ってた。


どうしようかって話し合ってずるずる半年が過ぎて 夏も終わってしまうから そろそろ別れようかと先週の水曜日に話したのだった。


いざ今日になると、いつもと同じ朝を迎えてしまって時間は怖いなって思ったの。


宇治のホーム、色褪せたベンチでたくさん話した。悲しいとか思わなかった。いつもよりお互い笑っていた。


電車が来て、ヒロくんが乗って発車ベルが鳴る。

わたしも連れていってって思ってしまって 気付いたら手を伸ばしてた。

彼は優しいから手を引っ張ってくれた。最後まで優しい。


電車には旅行をしているのか大きな荷物を抱えた赤いワンピースの女の子がこっちを見ながらわたしたちのことを知っているみたいな寂しい顔をしていた。


京都駅に着く。

ヒロくんは着いたホームから一番遠い0番線から関西空港行きの電車に乗る。そこから先は彼にしかわからない。

あと少しだなんて嫌だ嫌だ。

わたしもついていきたいよ。


手をぎゅっと握る。

彼の手は少し震えている。

泣きそう。でも最後は笑おうって約束したもんね。


0番線に着く。

電車が来るアナウンス。

思わず、ヒロくん って 言ってしまう。

ヒロくんは深呼吸をして掌を開く。

繋いだ手が離れる。

ドラマのようにスローモーションで時間が流れる。

それじゃ、 と彼はわたしに背を向け右手を小さく挙げて電車に乗った。


乗ってからは一瞬だった。

彼は気持ちを隠すためか 車両の見えないくらい奥のほうに行ってしまった。


電車が行ってしまって、気付いたら次の電車が来ていた。




左手を見ると 指輪をまだはめていた。

わたしは出町柳の鴨川デルタに行き、深呼吸をして指輪を流した。


指輪は勢いよく 鴨川を流れていった。

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