24/33
クレッシェンド・堺アタル
この学校に赴任してブラスバンド部の顧問になって半年が経つ。
この半年はオーケストラのメロディのように忙しかった。
仕事ではまだ新任ということもありかなりハードでそれだけで手いっぱいなのに、生徒の面倒を見るのも大変だった。
生徒には言わなかったが夏に8年付き合った彼女と入籍した。
彼女は働いていたビレッジバンガードを僕の勤務先と合わせてくれたので仕事終わりに高円寺のビレバンに迎えに行くのが日課になっていた。
いつも15時には授業が終わるので20時退社となるともう生徒はいないはずだった。
普段は手を繋がないけれど風が冷たくなってきたのでそっと彼女の左手を握ってぶらぶらさせながらパル商店街を歩いた。
ふと目につくものがあった。
ブラスバンド部長の子だった。
部長は僕の顔と手を交互に見ていた。ハッとした表情だった。
普段はおどける部長も女の子だった。目に涙を浮かばせて世界の山ちゃんの脇を駆け抜けていった。
隣にいる彼女はねむたーいと言って気付いてないようだった。
心臓がバクバクした。
明日の部活がこわい。
頭の中ではバッハの曲が流れていた。




